2018年 4月1日

  昨年10月、上演中の事故で大怪我を負った猿之助さんが、ワンピースの舞台に帰って来た。
 セリの内部装置に、衣裳の裾を持っていかれて、巻き込まれ、一部開放骨折を含む左腕全9か所の骨折。
 歌舞伎役者がそれも、踊りの名手が、大事な腕を負傷した。

 まだ完治じゃないと言うけどね。
 猿之助ルフィが帰って来たよ。
 
 そこそこ長く生きて来て、演劇生活もずいぶんになって、個人的にいろんな記念日がすでにあるんだけど、
 生涯忘れられない日になった。

  ここに至るまで、打ち合わせでも稽古でも、ご本人はずっと陽気にしてて、ピリピリしたところは見せなかった。
 半袖Tシャツで稽古して、まだ残るたくさんの傷跡を隠そうともせず。
 実はまだリハビリも続いているそうなたんだけど。
 エイプリルフールだから、囲み取材に無事だった右手を吊って登場して、ついにこっちもやっちゃいましたとか言おうか、なんてゲラゲラ笑ってて。
 
 そんな感じだったもんだから、何だか普通の再演のような雰囲気で最後の舞台稽古まで終えてしまったけど、いよいよ初日という時に、全員集合した時に、
 突然、そうなんだ、今日は特別な日なんだと、突然スイッチが入った気がした。

 猿之助さんは、それでも平然としてたけどな。
 僕のことで話題になるのは仕方ないけど、舞台の力でお客を呼ぼうよ、と言ってね。

 それでもその時、たぶん劇場の外に集まってくれてた、待ちきれないお客さんたちの気が、中にまで入って来たんだろう。
 みんなみんな、この日を待っていたんだ。
 心の底から。
 もちろん、我々一座の者たちも。
 ただ、それを無事に迎えるために、過度な思い入れや、感情を殺してここまできた。

 その封印が開幕と共に、一気に噴き出したな。

 客席も舞台上も。
 猿之助さんは、どんなに熱い拍手を浴びても、あくまでも長い公演のうちの一回、という姿勢や雰囲気をなかなか崩さなかったけど。

 稽古中は「お陰で、ほぼ治った!」とか「まだ一部、ひっついてません!」とか笑えない冗談で叫んでいた、二幕ニューカマーランドでの、ルフィ復活のシーンで、ついについに
 「お陰で治った!」と叫んでくれて。
 それを迎える、百鬼夜行のこしらえの、とうてい真面目にやってるようには見えないメイクのニューカマーたちが、溢れ出す涙でグジャグシャの顔になりつつオカマ声の歓声で応えた時。

 舞台も客席も感情が崩壊し、芝居が一瞬止まり、さすがのクール猿之助の顔も白塗りの下で紅潮したように見えたのは、俺だけではないと思う。

 今回改めて稽古して気付いたが、
 #ワンピース歌舞伎 は手の物語である。
 手が伸びる海賊の話で、手が伸びるダンスはあるし、
 ゆずの歌う主題歌のタイトルは 手と手=『TETOTE』だし。

 その芝居で、
 尾田栄一郎先生もパンフレットにそういうことを書いておられるけど、虚構と現実が混然とし、不思議な運命みたいなものを感じずにはいられないのである。
 なんでよりによって、手の大怪我なんだ。
 芝居の間中、ずっと我々は 手のことを思わぬわけにはいかないんだ。
 そして、その手がひとつなぎにつながれて、TETOTE の祭りになる。
 ひとつに合わされて祈りになる。

 そしてもうひとつ、#ワンピース歌舞伎 は傷ついた超人が、自力ではかなわぬ時に、助けてくれる支えてくれる他者=仲間たちの存在の大きさを噛みしめる物語である。
 ルフィもエースも白髭のオヤジも、他人の力を宛にしないスバ抜けた、常ならぬ人だけど、この物語では仲間たちに深く深く感謝する人たちとなる。

 これは猿之助さんがパンフレットに書いていて、
 終幕近くの、ジンベエ親分に、ないものはないんだから、あるものを思い出せ!と言われて絞り出されるルフィのセリフ
 「仲間がいるよ~」
 を今回は心から叫びたいと言う、まさにそのシーンで、
 2018年、4月1日 たぶん午後8時35分ごろだな。
 その言葉が松竹座に響いた時、

 その瞬間は、永遠になった、という気がした。
 本当は、伝説になった、とも言いたいけど。それは後の世の人たちが決めることだろうから、ここでは個人的な思いに止めとく。

 それは尾田先生がマンガの中で書かれた言葉である。或いは舞台作品という虚構の中のセリフである。
 しかし、この時、たった一言のこの言葉は、我々の心と肉体に染み入り、現実の人生に深く深く刻みこまれて、二度と消えることのない真実になった。

 大げさではなく、本当にそんな気がしたんだ、この時に。

 奇跡なんて単語でくくるのは申し訳ないほど、まずはご本人が大きな痛みに耐えて、歯を食いしばってリハビリに努めたはずだ。そしてこの事故に対する責任という意味で、私を含めて多くの人が、重い反省と後悔を噛みしめることになった。
 もしかしたら、こんな時は二度と来なくて。
 ただただ悲しみの出来事としてのみ、人々に記憶される可能性だってあったんだ。

 でもそれを、こんな喜びに変えてくれた、猿之助さん。そしてそれを支えてくれた多くの人たちに、どれほど感謝してもし足りない。
 エンポリオ・イワンコフ様は、奇跡は諦めない奴の下にしか起こらない、と仰せだが、

 大きな努力と、多くの人の祈りの上に、たぶんほんの少しの幸運が重なったのだろうな。
 その幸運を奇跡というなら、この奇跡に出会えた者として、
 それらの感謝の思いを、今、私たちがやっていることにしっかりと込めて、仕事をしてゆこうと思う。

 諸君、この世界では、いろんなことが起こるものだよ。
 そして悲しみと喜びは、本当に表裏一体だ。まるで演劇のようにね。

 そして、そのどちらもが、私たちに人生の意味を教えてくれる。

 辛くなったら、私は2018年4月1日を思い出すことにする。

                         大阪にて
 
 
 

 

 
 
 

 
 

 

 
 
 

 

 

 

 
 

 
 
 
 









ルフィ 復活へ #ワンピース歌舞伎 そして二つのランド!

 3月19日『声だけ天使』の全10話配信が終わり。(熱いご声援をありがとうこざいました。でもまだ1話から、AbemaTV で無料で視聴可能です。)

 その前の3月10日 サンリオ・ピューロランド内のメルヘンシアターの新作『KAWAII KABUKI』がロングランをスタートさせ、

 今は、4月大阪松竹座、5月名古屋御園座での スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の為の稽古の日々。

 去年の10月、あの辛い事故があった『ワンピース』。そのワンピースの舞台に、猿之助さんが帰って来る。しかも、単なる復活公演にせず、またまた、アッと驚く新演出投入がある。
 ニューカマーランドに、別バージョン、イワンコフが降臨する。ここまでの稽古は、ほぼその新バージョン、クリエイトの日々だった。でもそろそろ、一味も再結集して通し稽古を始めるところである。

 どんな時も留まることしない猿之助さん。嬉々として新演出に取り組む姿は極めて頼もしい。でもね、
 あの大怪我から、間もなくルフィとして戻って来てくれる。
 その姿が見られる喜びが、すでに稽古場に溢れている。
 今度こそ、ずっと皆が笑顔でいられる公演にしたい。

 さて、笑顔と言えばピューロランドである。
 『みんなを笑顔に!』がキティちゃんのスローガンで、今回作った40分ほどの舞台でも、それがメインメッセージなんだけど。
 
 残念ながら笑顔は、笑顔だけで作れるものじゃないよね。
 その陰や、裏側には、汗や涙もたくさんあるものだ。
 新作は、存外うまく仕上がって、(スタッフが素晴らしいの。メインスタッフは皆さん一流で、劇場の裏方さんたちの意識と意欲もとても高い。何しろ、歌舞伎の技術を習い覚えるとこから始めて、リアルに習得しましたからね)すでに連日数回上演されて。いろんな感想がネットにもあがってて、それが結構、好評みたい。※今、半分ニューカマーの住人なので言葉使いが少し変ね。

 でもまあ、当然ながら、ここに至るには、困難も多々あったわけ。
 ヴァターシとしても投げ出したくなりそうな時も、ありました。普段の演劇現場とは、文化やしきたりもアレコレ違うし。

 しかし、それを思いとどまり、狭量な己を恥じて、いやいや、何とかしてコレを創り上げよう、やらねばならぬ、と頑張り続けることが出来たのは……
 ココちょっとデリケートな部分なんだけど。
 
 出演者諸君が見せてくれた圧倒的努力の姿勢であった。

 ピューロのダンサーたちは素晴らしいと、ラッキイ池田さんからすでに聞いていたけど、噂に違わぬレベルであり、その上に、実に真摯に仕事に向かうプロたちであった。テーマパークダンサーという人たちと初めて仕事したけれど、みんながそこに誇りを持っているのもステキだったな。自分たちの仕事を愛してるって、尊いことだ。

 それを愛すると言うことで、更に私が胸打たれ、ああ、もうこの人たちの為に俺は全力を使い果たさなきゃ舞台人として失格だ、と思わせてくれたのは、キティさんやバツ丸さん、ダニエルさん、プリンさん、シナモンさんたちの、仕事ぶりである。
 この固有名詞、ナンノコッチャと分からぬ人たちもいるであろうな。半年前の私もそうだったよ。

 でも今は、みんなを愛している。

 多くの人たちを笑顔にし、幸せにするために、表舞台からは見えないところで、キティさんたちがどれほど努力を重ね、汗を流し、研鑽を積んでいるか、数か月間近で見てしまったからね。
 人を笑顔にするのは、大変なんだよ、ホントに。たった40分だけど、一回終わると確実に痩せてるからな。

 そして彼らは実に高度な表現力、演技力を持っている。
 ダンスはするし、殺陣もこなすし、今回は歌舞伎の所作もすべて覚えたんだから。ポテンシャルがハンパないんだ。
 のみならず、皆、芝居に心を籠めている。
 ここ、とても大事ね。
 あんな顔して、表面的なカタチだけじゃないんだよ、キティさんたちが追求してる境地は。世阿弥のように、この分野での演技の奥義を掴もうと真剣に取り組んで、試行錯誤を繰り返してな。
 稽古場でも、リアルに涙を流して、演じている。
 
 いい役者たちだよ、と演出家として断言しときます。

 疑う人は騙されたと思ってその舞台を見てみてくれ。良い芝居してるから。

 とはいえ、これほどの名演技を毎日してても、劇評ひとつ出るわけでもないし、彼らの技や演技を、しかるべき目利きが褒めることなんてこともないわけだ。彼らを愛することはあってもね。その努力までは見ちゃくれないし、評価もしない。
 しかし彼らはそんなことに目もくれず、ただただ、彼らの劇場に座るお客さんたちを笑顔にさせようと汗だくになるだけ。
 でも、そこに、大きな喜びと誇りを見出している、一流のエンターテナーたち。

 彼らと出会い、仕事をさせて貰って、大袈裟ではなく、私は芝居とは何だろうと、もう一度考え直しましたよ。
 ちょうど最近
 「グレイテスト ショーマン」て映画を観て、それが見世物小屋で成り上がった男のストーリーで。
 いろんなところが重なりまくっててね。
 思うことアレコレだった。
 
 映画の最後に 「真の芸術とは……」という言葉が出て来て。
 これから見る人たちの為に、敢えて続きは記さないけど。
 私が尊敬してやまないアーティストである、キティ一座の皆さんに、その言葉を捧げたいなと思いました。

 そしてそのピューロランドの精神は
 ニューカマーランドにも通じてゆくのであります。

 
 
 

 





 
 
 

 

 
 

 
 
 
 

 
 











AbemaTV  #声だけ天使 のプロデューサー藤田晋社長のこと 

 サイバーエージェント、藤田晋社長と対談というか、ふたりで取材を受けた。
 目下、配信中の連続ドラマ #声だけ天使 について。

 そもそもこの脚本を書くきっかけは、藤田さんが我々が大変お世話になっている幻冬舎・見城徹社長と親友ともいえるご関係で、扉座の幻冬舎プレゼンツ公演を見て頂いたことにある。

 藤田さんには、いつか連ドラをやりたいという思いがずっとあって、そのタイミングを探っていたが、その過程で、良さげな原作は、マンガも小説も、ほぼテレビ局が握っているという事実を知り、呆然となさったのだそうだ。

 ネットTV という新参チームが既成のテレビ局と勝負するには、発想を変えて別の手を使うしかない。
 つまり原作モノに頼らない、オリジナル作品への挑戦。
 で、『つか版・忠臣蔵』『郵便屋さんちょっと』を見て下さっていた藤田さんは、この舞台ぐらい登場人物たちが個性的で、しっかり絡まり合うドラマなら、面白くなるのではないか、と思ったと仰っていた。
 それでご指名頂いたという、光栄な話です。

 でもここまでは、私も直に聞いて知っていた話。

 今回、もう一つ裏側の打ち明け話を初めて聞いて、この希代の起業家の凄さをしみじみ噛みしめた。

 横内さんに頼んだ一つの理由には、見城さんに紹介して貰ったとことも大きいと。
 「このルートで頼んだ仕事なら、絶対に手が抜けないだろう」
 尾形監督も同じです。
 「尾形監督も見城さんの伝手で、かの周防正行監督から、素晴らしい新鋭がいるからと、紹介を受けたのたが、見城~周防ルート、で紹介されて来た人なら、裏切れないと思い、死に物狂いでやるに決まってるじゃありませんか」

 どんな仕事も、手を抜くつもりなんか、私はないけどね。
 
 かなりの覚悟を決めて臨んだことは確かである。ここで見城さんの顔を潰すわけにはいかない、と辛い時は何度も思って、踏ん張った。
 秋元康さんから依頼された、仕事の時もそうだった。
 思えば見城さん周りの方たちから、いろんなお仕事を頂いてきたが、常にガチで、生きるか死ぬかみたいな真剣勝負になってしまう。
 藤田さんも秋元さんも、ただの資本家じゃないからな。この人たち自身が、いつもとんでもないものをクリエイトし続けておられる。
 その人たちから依頼されるのだから、おのずと勝負は厳しくなる。

 とはいえ、正直、最初の頃、いやこの対談でじっくりと伺うまでは、藤田晋という人は、私にとって捕えどころのない人だった。
 誠意と情熱は、感じていた。
 何しろ、これだけ忙しい人が、立ち上げの頃の会議の全部、ご出席されている。かなりしょうもない雑談しか生まれなかった時も、ニコニコして参加しておられた。

 しかし言ってる事は、このドラマに三億用意している、放送回数、尺も特に決めていない。それは中身に応じて合わせる。監督も、主演も決めていない、とにかく良い企画、脚本を作って、そこからスタートする。

 今考えても、スゴイことだけど。
 それだけ言うと、細々とした縛りは一切なし。
 主役を、まごころだけが取り柄のブサイクな専門学校生 にしたいと言って、ああそれでいいですと、即答頂き、実際そういうドラマが今、配信されているのだけど。
 しかも、その俳優を、結果、まったく無名の新人をオーディションで選ぶことになるんだけど。
 それでいきましょう、と。
 有り得ないだろ、フツー。
 テレビ局なら、絶対どこかでストップがかかった話である。

 ブサイクとか、セリフでは言われるけど、どう見てもイケメンだろうという若手が、変なメガネかけてやることになったりな。
 今回の亀田君は、本当にもう、昔の六角精児みたいな雰囲気の新鋭だ。
 昔の俺に似ていると、六角本人が言うのだから間違いない! 

 三億出しながら、イチイチ指図してこないで、何でもかんでもハイどうぞ!とスルーで認めて、この人、本当にこれでいいんだろうか、やっぱりコレ、大金持ちの道楽なのでは?
 とこの頃は、私は半分疑っていた。
 今更ながら、不明を恥じる。
 
 この対談で藤田さんが仰った。
 
 監督とプロデューサーのリクエストも、ほぼ、無条件で受け入れたんです。
 全員、脚本のイメージに則してオーディションで選ぶなんて、面白いし、とても尖ってるじゃないですか。

 でも、そのリスクは小さくないでしょう?普通の感覚ならば、保険として、顔の売れてる人とか、入れ込みたくなるでしょう。

 そのリスクを半端に怖がり企画を歪めるより、潔くすべてを受け入れて、監督たちが言い訳のできない環境にする方が、ずっと得だと思ったのです。
 すべての力を尽くして、全力で取り掛かりたくなるでしょう、その方が。
 結果、良い作品が私の手に入るはずです。

 この言葉聞いて、私は、久しぶりにしびれましたね。

 事実、私も言い訳の出来ない所まで追い込まれた。
 何しろ自分で出した企画が、ハイ良いですねと通され、それがどんどん実現化してゆき、無理だろうなと思うような設定なども、ブレずにそれでやって下さいと背中を押され、

 気が付けば、大きな責任とやりがい、この二つを背負って、邁進するしかなくなっていたもんな。
 
 そういう意味で、何にも言わずにニコニコしていた藤田さんにまんまと追い詰められて、実力以上に頑張ったことは紛れもない事実だと思う。

 ジワジワ話題にはなっているけど、まだまだ当たったとは言えない状況らしい。
 でも、私は仕上がりに満足しています。
 アベマテレビの本気の姿勢をきちんと発信出来てることが嬉しいです。
 今後、このハードルを越えて創り続けるのは、大変だけど。それが出来たら、必ず勝てる日が来ますからね。

 そういって下さったのが嬉しかった。

 「実際、すごく面白いし、これから先、視聴者がどう受け止めてくれるかとても楽しみなんですよ」

 私の能力に期待し、全幅信頼を寄せて。こんな大仕事を任せて下さった、私より一回りも若いこの社長に、深く感謝しつつ、
 思わず言ってしまった。

 あのニコニコの裏で、そんなに深く計算して考えてらしてたんですね。
 実はずっと得体の知れない人だと、思っていたんです、
 まんまと、社長の術中にハメられて、我々、全力疾走させられていましたね。

 諸君ね。
 私がこの日、こう告げた後、藤田さんがポツリと漏らされたお言葉が更に、しびれるよ。
 皆、メモれ。

 「私、人を使うのが上手いので」

 

 俺も人を使うことが多い人間である。
 上手くなりてえな!


 

   

  

  
 
 
 
 
 

  




 

   


 









ナル友への伝言

 大事な話なので、聞いて欲しい。

 一昨日、手術をしたのだよ。

 それは ぢ。

 仕事をお休みしたのは、一日だけ。でも歴とした手術。お医者さんにも確かめた、コレ、手術ですか?と。
 はい、そうです。とお医者様はおっしゃった。
 
 初出血から十年以上が経つ。実はひっそりと、いぼ痔 と共生して来た。
 数年前、とりあえず病院で診察は受けていて、ときどき薬貰ったりはしてんだけど。

 二年ほど前から、大事な時にも、アナルから突然、イボが出張って来るようになって、ヤバいなあと思い続けて来た。
 これがとっても痛いのだ。
 その辛さ、アナルの友、ナル友なら、分かるはず。

 我が人生、ほぼ座して来たからね。
 書くのも、演出も椅子の上……
 尻に過度の負担をかけ続けている。尻にスマン人生だ。
 
 毎年の人間ドックで相談すると、それはもう切った方が良いですね、放置して治ることはありませんから、と言われてたし。
 とはいえ、となれば手術だろうから、それなりに時間確保が必要で、そうこうするうちに、どんどん予定が埋まってゆくし……

 結果、だましだまし、伸ばし伸ばしにしてきたのだった。

 ところが去年、私の住処の極めて近くに新しい診察所が出来て、そこに肛門科と書いてあって。これはもう運命だから、2018年のどこかで手術に踏み切ろうと決意を固め、診察を受けた。

 すると、すぐに処置しましょう!と軽やかに言われた。
 いやいや、私、その時間が取れなくて…… 
 1日で終わりますよ。

 は?

 以前は、入院しての手術しかありませんでしたが、今は、別の方法があって、切らずに治す処置法があるのです。横内さんの場合、それでイケます。きっと喜んでいただけると確信します。

 なかなか、明快にして、爽やかな先生が近所に越して来たのである。

 それは簡単に言えば、肛門を拡張をし、内視鏡的なやつを入れ、患部に直で注射し、特効薬を注入し、揉み込んで腫れを一気に消すと言う、方法らしい。

 麻酔しますし、処置自体は20分ほどで終わります。
 ただし、横内さんの場合、12時方向がターゲットとなり、そこに前立腺があるために、揉み込む処置が、そこを強く刺激することとなり、それに伴い激しい尿意を催すような不快感が生じると思います。
 苦しいと言えば、そこでしょうか……
 
 丁寧すぎると言っても過言ではない説明に、若干、心折られそうになりつつも、もはや運命と悟って、お任せします、とお願いし、処置して頂いたのだった。

 局部麻酔だから、普通に会話しつつ、アナルから処置して頂く。
 前立腺なんとかって、性的な刺激ポイントがあったはずだよねえ、
 ある意味、ハードゲイの世界だよねぇ、とか。
 事前には、いらんエロ妄想とかも膨らましていたのだが。
 実際に、そこをグリグリやられたら、そんな余裕はとてもなく、激しく襲う尿意と闘うので精いっぱいだった。

 ううっ、漏れそうなんですけど……
 
 はい、でも出ませんから。もう少し、我慢しましょう!

 激しい闘いではあったが、ホントに始まれば15分ほどのことであった。
 で、麻酔が切れるまでは、待機と言われて1時間ほど。
 それで、チェックを受けて、帰って構わない、と。
 全行程で2時間ほどで済んでしまった。

 その後、下腹部に残る、おかしな感覚はしばし残ったものの。

 夜更けからはほぼ平常の感覚に戻った。
 そして、
 
 諸君、我がアナルは、その1日にして劇的に蘇った。
 穴が、奥に引っ込んだ感覚がありませんか?
 と、お医者様のおっしゃるとおり。

 軽やかに、穏やかに、かつてそうだった静かなアナルに還った。

 こんなことなら、もっと早くにやっていれば良かった。
 経過観察を受けに行って、お医者様と握手しましたよ。

 でも、そんな方法があるなんて、この先生にお会いするまで全く知らなかったからね。当然、何日か入院を必要とする手術が必要なんだと思い込んでいたからね。
 
 私の近くにいる、密かなるナル友の皆さんに、声を大にして言いたい。
 迷うことなく、この処置に向かって、踏み切り給え。
 いろんな薬も試したけど、そんなに効くものはなかったよ。

 ほんとに、恥ずかしいのも、痛いのも、ずーっと続く苦しみに比したら、一瞬のようなものだから。

 以上、体験者は語る、でした。
 このレポートが同じような悩みを抱えた方の、少しでもお役に立てば幸いです。
 ちなみに
 ジオン注 投与 という処置です。
 
 

    
 

 
  
 

    










仕事始め

 あけましておめでとうございます。

 今日から、仕事始めです。
 まずは扉座稽古場へ。21回目のラブ×3 の稽古に。去年、江戸のマハラジャ にも出演した若者たちで。長期間一緒に過ごしたので、いつもより馴染みが早いと言うか。それぞれの個性が立っています。

 そして、今はまだ発表できない仕事の打ち合わせなどを挟んで、週明けから秋田・角館に。
 こちらは、わらび座の ジパング青春記 仙台引っ越し公演(1月20日~2月9日電力ホール)のための稽古です。
 3週間ぐらいやる大規模公演で、いよいよ政宗様の御膝元でやるのかと思うと、身が引き締まります。加えて新情報としては、仙台公演には、一部キャスト入れ替えで、扉座の岩本達郎が客演します。久々のわらび座登場。

 政宗の時代の話だけど、震災と復興、というものが、そのままテーマになっている舞台が、この場所でどのように受け止められるのか、不安と期待が半ばしつつも、4月からの公演で多くの観客の皆様が寄せて下さった声援の言葉を自信に変えて臨みます。

 その後、1月12日、13日と、岡山シンフォニーホールで、ワークショップ。
 昨年と同じく、禁酒会館の向かいの立派なホールです。
 禁酒会館 という歴史建造物があるのです。扉座の人々に見せてあげたい。大正時代に真剣に禁酒を奨めて建てられてのだとか。
 この場所で、泥酔して乱痴気騒ぎを繰り広げる愚か者の物語を、ちょっと夢想してしまいます。もちろん扉座の総出演で。

 さてさて、で。迎える15日。我らの時代では成人式だった日にちでありますが。
 私がシナリオを書いて、岡森、中原、北村、他扉座が出演する、 #声だけ天使 全10話が始まります。
 AbemaTV というネットTV です。モバイルやスマホなどで無料で!簡単に!観られるので、どうぞ宜しく。
 今まで我が国のネット配信のドラマは、製作費も低価で一段低くみられる傾向にあったようですが、時代の寵児・サイバーエージェント社長・藤田晋氏は、テレビを超えるクオリティをと宣言し、地上波通常の連ドラ製作費以上の予算を掛けて、
 しかも脚本づくりを先行させて、全キャストを脚本のイメージで、オーデションした上に決めるという、今までのテレビドラマの定石を覆すチャレンジをしています。
 なので有名な俳優タレントの出演が異様に少ない、異色のドラマです。
 でも、その挑戦が、業界でも密かに話題になり始めているようです。
 もちろん逆風も強いとは思うけど、成功してくれ、と、初詣ではお祈りしました。

 #声だけ天使 で私がもっとも大変だったのは、7月~9月辺りで、
 その後、 #ワンピ―ス歌舞伎 とか #江戸のマハラジャ などもあり、この仕事は、もうすっかり思い出になりかかっていたのですが、作家として、ここから改めて、編集された完成作と再会、対面してゆくと言う。映像作品ならではの、醍醐味とドキドキを味わうことになります。
 多くの人に届いておくれ、と祈ることしかもう出来ませんが。
 
 そんなこんなで、今日からまた、貧乏暇なしのバタバタ生活が始まりますが……

 本年も横内と扉座を、ご贔屓お引き立てのほど、隅から隅まで、ずずぅぃーと、おん願い申し上げ奉りまする。