二十歳のLOVE

 昨年末、横浜青少年センターでの『歓喜の歌』の大千秋楽。
 カーテンコールで、あいさつした時

 このセンターの舞台で、厚木高校時代、高校演劇県大会で岡森や六角と処女作を上演したのが、今の私たちにつながっている、とスピーチした。

 のだが、その時に、私は、三十年前に、三十年前にと連呼したらしい。
 
 実際は、四十年前(正確には三十九年前)が正しい。
 30年前は、すでに今の劇団の活動期である。

 三十年前でも、十分にひと昔話的なので、何の違和感もその場に起きてはいなかったが、あとでいろんな人に指摘された。またドサクサ紛れにサバ読んだね、と。

 いやいや、まったく自分でも気付いてなかった。
 四十年てのが、むしろ突飛すぎる響きだ。だって

 40年前て、いつだ!

 そんな昔から生きてるのか、俺は。
 しかも、岡森や、六角と演劇やったってどういうことよ?

 諸君、時というのは、恐ろしいものだよ。
 こんな私たちのことさえ、半世紀もの年月を、軽々と運んでこんなとこまで連れて来てしまう。
 
 あの時の我々が、お前らそのまま40年後まで行くから、と言われても、何のことやら意味不明の、遠い未来だったはずなのに……
 
 年寄りの人生には、SFではない、かなりリアルなタイムマシンの物語がある。

 そんな時の流れを噛みしめるイベントが間もなく、もう一つ開幕する。

 扉座研究所卒業公演 「lovelovelove20」

 ついに二十歳だよ。

 第一期に二十歳だった若者が今は四十才になっている計算。
 これを、二十年やって来てるんだよ。

 いろんな役者、演劇人もここから世に出て行った。

 今年やたらに、あちこちで名が挙がっている、高橋一生もここにいた。
 彼はすでに子役で活躍した経験もあり、芸能事務所所属してたけど、逆に同世代とか現代的な小劇場の経験がないから、若いうちにそういうことを学ばせたいと、懇意にしていた事務所の社長さんから頼まれて、預かったカタチ。
 リサやケンタたちと、loveloveloveもやった。

 恋のオムニバスというコンセプトは二十年変わらないが、スクラムが生まれたのは、3、4回目の頃か。
 ユーミンの『ノーサイド』というラグビーの歌を聴いていて、ノーサイドという言葉から思いついた。

 ラグビーは試合が終わるとノーサイド。サイド=敵味方 が消えてなくなり、人々がひとつになる。

 それがロミオとジュリエットの物語に私の中で結びついた。
 loveloveのラストにそのイメージを使おう。 

 その時、メインで演出していたのが、今は『刀剣乱舞』とか、2・5次元ミュージカルの代表的演出家になってしまった、茅野イサム。
 そのイメージを伝えると、熱血指導で、茅野が、熱い熱いパフォーマンスに仕上げてくれた。その熱血指導は、代々誰かに受け継がれて、今年もラストは熱いスクラムからの、ノーサイドで終わる。

 思えば、茅野にとっても、このloveloveloveが演出家としての原点であった。

 劇場も20年の間には、転々とした。

 第1回は、都立大学の千本桜ホールという小劇場。
 銀座みゆき館とか、高円寺明石スタジオとか。原宿のど真ん中のライブスペースとか。
 新馬場の六行会ホールも結構やったな。

 銀座みゆき館では、六角の今の嫁が、研究生として、六角精児と出会っている。六角は、たまたま、本当にたまたま、
 日比谷の日生劇場で拙作の、ジュリー主演の音楽劇『ザ近松』に出演中で、有名な大劇場、日生から劇団の飲み会に駆けつけて来た、売れてる先輩俳優のテイで現れ、得点を稼いだのだった。
 オレ今、メジャーな日生劇場で、あの有名な沢田研二さんの舞台に、数々の著名俳優の皆さんとともに出演中だから、名もなき研究生諸君も見に来れば?的な。

 lovelovelove はリアルloveもたくさん産んだのだった。実際にここで一緒にラブラブラブをやり、その後結婚した者たちもいる。 

 ここ数年は、スミダパーク内の『スタジオ・マル倉』でやっている。
 ここは我々の本拠地なので、気分のノリが良い。
 研究生たちが1年間、汗し、涙した場所である。

 ここで初めてやることになった時、スカイツリーはちょうど建設中で、日に日にやぐらが組みあがっていく状態の頃だった。

 そんな半端な状態を、ぜひチラシにしなさいと指示し、200メートルぐらい組みあがった状態のスカイツリーをバックに、研究生たちの並ぶ姿がチラシとなった。
 かれらがいつか、自分の子供たちに、それを見せる時が来るだろか。

 あのスカイツリーが、こんな状態の時、私はその近くにいて、一心に演劇の修行に打ち込んでいたのだと。
 そしてloveloveloveという舞台を必死に作って、やり遂げて、皆で抱き合って泣いたのだと。

 スミダパークの古い倉庫の中にあった、昔の稽古場は建物ごと取り壊され、今、同じ場所に新しい建物が建設中。ピカピカの大スタジオもその中には出来るとか。
 まあ、そこを扉座で使うことはないだろうけど。
 今となっては、夏は外よりも蒸し暑く、冬は外よりも寒い風が吹く、あの隙間だらけのボロボロの稽古場が愛おしく懐かしい。

 また時が過ぎ、景色が変わってゆく。
 
 しかし、数々の思い出たちが、ますます鮮やかに蘇ってくる。
 今年も同じようにキラキラと流れ落ちる、それだけは変わらない、若者たちの、汗と涙の力で。

 lovelovelove20
 2月14日から。錦糸町スミダパーク内スタジオ、マル倉 にて。  

 ★20回アニバーサリー公演として、歴代loveloveloveの記録写真の特別展示なども、計画しているようです。