座長

 座長が来るって、こんなに緊張することなのね。

 と改めて、座長という立場の重さを知る。
 キャラメル座長・成井豊さんを迎えての通し稽古であった。

 http://tatsuya.nevula.co.jp/wp/

 それがどんなに大変なことなのかは、座員のページ(岡田達也氏)を覗くとよく分かる。

 にしても、我が軍の場合は、と顧みるに、おそらくはまったくユルユルである。
 もう恥ずかしいぐらい。
 茅野の現場なんか行っても、座員はかるーく、どーでした?
 なんて話しかけてくるしな。

 まあ、わしはその方が気楽なので、それで構わないんだけど。
 成井さんは、今も座長として正しく、孤高の人なのだと感心した。
 
 終わって、成井さんから忌憚ない感想と意見を頂く。
 ここも、ごまかしなく、厳しく、正直に。

 この劇団というか、この演劇人は、演劇のあるべき姿を、真摯に、追求して止まぬ人なのだということが、よく分かった。
 こんな人、そんなにいない。

 まあ、それもアリだな……どうでもいいや。

 みたいな妥協が一切ないんだよね。
 
 これは何だと?あくまでも問いつめる。

 しかし、これだけ真剣に取り組んでいるからこそ、あんだけたくさんの熱狂的ファンを生み出しているのだろうな。
 
 熱狂的ファンの少ない、わしにとっては、この剛直な姿勢は、おおいに見習う点があるぜ、と思った。
 もっとも、たぶん手遅れだが……
 
 つまりは、もはや、誰よりもわしがユルユルなんだな……

 ただし今回は、チャレンジシアターである。
 すべてが成井さんと同じ意見であっては、やる意味がない。
 身内の一人が、成井の意見は、多くのキャラメルファンの意見でもあるでしょうね……
 と呟いて、
 それは限りなく、説得力に満ちていたのだが。

 参考にすべき点は大いに参考にするが、あくまでも、別世界を見せるのだ、という野心は捨てずに行くから、覚悟して欲しい。

 というか、改めてそう決意したわしであった。

 こういう場合、遠慮が一番つまんないもんね。
 ユルユルのわしなので、そこだけは流されてはイカンと、自分で自分に言い聞かせておくのだった。


 



 
 
 


 ところで、新中野のことを語りたい。

 稽古前に、青梅街道を隔てて、キャラメル稽古場の向かい側にあるコンビニで栄養ドリンクなんか飲んでいた。
 何しろ、暑いしね。

 それはともかく、この向かい側にはもう一つ、ステキな場所があるのだった。
 それは

 ソフト オン デマンド 本社

 である。(分からぬ人は、このままスルーでよし)

 この地には、ちょうど、向き合うような形で、キャラメルと、オンデマンド が存在しているのである。

 まさに、白と黒、聖と濁、であろう。

 今日も暑すぎて、わざわざ、横断歩道を渡るのが面倒だったので、車の途切れ目を狙って、オンデマンド側から、キャラメル側に、道を渡ったのだが……

 その刹那、
 ふと、彼岸と此岸という言葉が脳裏に浮かんだのだった。

 もしかして お盆の時期でもあるから、かもしれぬが。

 わしらはまさにこのように、今、聖と濁を往き来している……

 そんな気がしたのだ。

 今回の芝居、わしは、塩キャラメルと呼び、恩田さんは裏キャラメルと名付けている。

 ことに恩田さんは、人間の邪悪を込めたいと宣言している。
 実はわしは、この作品に、それほど邪悪を感じてはいなくて、

 それよりも、生きるという行為に宿り続けるいかんともしがたい孤独と、その孤独が、ほんの一瞬だけ、ほどける人と人との魂の交感の瞬間、その錯覚といえば錯覚だけど、それ故に、人が生きるよすがとする、官能の一瞬を捉えようとしたものだ、もしくは捉えようとあがく様を観察するモノだ、と勝手に思っているのであるが、

 まあ、今のは、ちょっと利口そうに言葉をひねくりすぎていて、
 それはつまり、うーんと簡単に言ってしまえば、

 意外にも、オンデマンドとキャラメルは、一本の川を隔てた対岸にあり、

 わしらはその世界の往復みたいなことにチャレンジしようとしている、ということかな、と考えたりもしたのであった。

 余計分からないか……


 誤解なきよう言っておくけど、
 別に 猫と針 はスケベな話なんかじゃない。

 ただ、人間というモノの理想型よりも、いびつだったり、曖昧だったりする、へんてこでリアルな姿に、ちょっと近づこうとしているものだ。

 でも、それが人間というモノの、理想的な美しさを追求するキャラメルと、ちょうど対岸にある気がする、というだけのことだ。

 ただし、その一見両極に見えるモノが、
 実は、川一本を隔てた、こっちと、あっちにあるのかもな。ちょうど、この新中野の状況のように。と。

 たぶんこんなバカなこと思うのは、わしぐらいだろうけど。

 でも、オンデマンド側から見た、キャラメルの岸は一際趣き深いものがあった。
 同時に、道を渡り終えて、キャラメルの岸から、改めて見た、オンデマンド・ビルも、ひときわ趣深いモノではあった。
 
 
 それにしても何でよりによって、キャラメルと オンデマンドが、向き合ってるんだよ。
 偶然にしても、面白すぎるじゃないか……

 青梅街道は、東京のガンジスなんだ、きっと。

 
 


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