初日前日
俳優座劇場に入る。
お昼から、舞台稽古。
喪服姿が最も映えるように、と美術家・秋山クン(ドリル魂プランもこの人)がプランを立ててくれた真っ白い装置。
こじんまりとした、でも都会の真ん中に建つこの劇場にぴったりとはまっている。
秋山クンは、ドリル魂 が最初の出会いだったのだが、
この時は、なぜか、横山クン、横山クンと呼び間違っていた。
すまん、横山クン、いや秋山クン。
んで、照明が、ラッパ屋とかやってる、公穂さん。
この人とも実は古い。
わしらが、まだ学生劇団だった頃、手伝ってもらってたりする。
日芸の人たちにスタッフ協力してもらっていた頃だ。
かれこれ、二十五年ぐらい前の話……
彼はわしらの友人劇団ショーマのプランナーだった。
この公穂さんの照明がまた、アートしていて、
今回、明かりのチェンジのキッカケが三十数カ所しかない。
極めてシンプル!
普段のキャラメルの公演の百分の一と言えるんじゃないか、と噂されている。
また音響は、いつも扉座をやっている青木クン(拙『考えると夜も眠れない』において、仕事場に女子を連れ込む男で有名……)なのだが、これまたキッカケが、10あるかないか。
普段のキャラメルの千分の一ぐらいじゃないか、と噂されている。
なんでこんなことになっているのか、は、見れば分かる。
とにかく、シンプル!
が今回の方針なのである。
で、そんなシンプルな芝居のキッカケ合わせして、今日はすでに一回通した。
通し稽古が少ないのが、不安と言えば不安だったけど、ここに来て、ケッコウ通せたので、形勢挽回であろう。
そしてわしの仕事はだんだんなくなってきた……
通し前の準備時間、居場所を失い、六本木を徘徊する。
といっても行き場はナシ。
結局、水商売のお姉さんたち御用達の派手派手の犬屋なんか覗いて、モーとポーのおやつなんか買ったりして。
明日は、お昼に扉座の人々も見に来る、ゲネプロがあって、いよいよ初日。
どんな芝居見ても、たいして驚きゃしない身内や関係者たちはともかく。
いつも通りのキャラメルボックスをお望みのお客様からは戸惑いと、場合によっては大ブーイングの舞台であろう。
わしが書いたわけでもないので、扉座テイストともまったく違うものだから、わしらのお客さんにもたぶん物珍しいものになってる。
なんちゅうか、
世界で一つだけの花?
そんなヒューマンなものでもないんだけどね。
でも、わしらスタッフとキャストは、かなり面白がってこの芝居に取り組んでいる。おそらく、それぞれに、そのシンプルさ加減と少ないキッカケの中に、秘めた自信めいたものも感じているし。
で、初日の反応がとても楽しみ。
初戯曲、で人生初の初日を迎える
作者・恩田陸さんは、
ドッキドッキだろうけど。
そんな人気作家の姿を見てるのも、きっとすっごく良い感じと思う。
大切な1日、って感じがするぜ。