#ワンピース歌舞伎 愛してくれてありがとう

 スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース が三年八か月の長旅を終えた。

 今日は 扉座の稽古 #リボンの騎士 を休んで、日帰りで名古屋御園座へ。
 大千穐楽を見届けた。ついでにカーテンコールで、舞台にあげていただいた。

 御園座を埋めつくしたお客様方が、皆、立ちあがって、流れる涙を拭おうともせず、猿之助さんのラストメッセージの一言一言に深く頷いておられる姿を、舞台の上から見ていて、更に胸が熱くなった。浮かぶ言葉は。

 愛してくれて、ありがとう  byポートガス・エース

 今日客席にいると、開演前からすでに大勢の方が泣いておられた。
 私をみつけて、話しかけてくれる。

 寂しいです、寂しいです……

 この大航海、いろんなことがあったから、今回無事に終えられて、むしろ安堵感が強かった私なのだが、そんな思いの数々に触れているうちに、おセンチになり、最後には皆さんとともに大きな寂しさを噛みしめて、晴れの舞台に立たせて頂きました。
 
 猿之助さんは、相変わらずクールだったけどね。
 これにて、ワンピース・チームは解散。
 明日から、それぞれに違う冒険に旅立ちます。と。

 そして、左腕に残る傷跡を見る度に、僕は一生、この舞台のことを思い出して生きていきます、と。

 安易に、またいつか、なんて口にしない。
 でも、それがきっと彼の矜持。
 一期一会の覚悟だと思う。

 隣で聞いていて、初期の起ち上げの頃のことを思い出していた。
 3年半前ぐらいの、この日記のどこかにそれは残ってる。

 稽古に突入する前の夏の頃。銀座を歩いた夜の帰り道。
 さすがに大きすぎる規模と、クリアすべき課題の多さにちょっとビビッて、
 「大丈夫かね、コレ」と言ったら
 「なるようにしかなりませんよ」と涼しげに返してくれた、その横顔。

 大きな不安と小さな期待で船出した、と本人も今日語ってくれた、あの頃のこと。
 それを思えば、こんな寂しさを感じられることが、そもそも至福としかいいようがないのである。
 こんなに愛して貰えるなんて、あの頃は、とても想像できなかったんだから。

 すべてはスタッフ、キャスト、お客様方のお陰です。
 心から皆様に感謝申し上げます。
 そして、また明日から、猿之助さんの言葉通り、私は私の冒険に向かいます。

 まずは #扉座公演『リボンの騎士 県立鷲尾高校演劇部奮闘記』
 6月16日、17日 厚木市文化会館
 6月20日~7月1日 座高円寺
 
 この記事の視聴率が高いことを想定し、一応、宣伝入れておきます。
「劇団も見に行きますね」
 そういうお言葉をたくさん頂いたので。

 これだけの盛り上がり、打ち上げはさぞスゴイことになるんだろう、と思うでしょ?
 なーんにもナシなのである。
 今日の幕が下りた途端に、ほんとうにすべて終わり。
 皆、それぞれに次の場所に散っていった。
 各自の心に、やり終えた高揚感を抱いてね。
 
 繰り返される乾杯も楽しいが、こういうのもプロっぽくていいもんだ。
 殺し屋たちの仕事の終わりみたいでな。


 ちょっとだけ自慢させておくれ。
 老後の自分の為に書き残したくなった。

 俺はピラミッドを見たことがない。万里の長城も、エッフェル塔も、アフリカの夕陽も、北欧のオーロラも、地中海も、ガンジスも、アラビアの砂漠も知らない。
 若い頃は金がなく、長じては暇がなく、
 ろくな旅、観光をしてこなかった。
 でもな。
 自分の作った舞台を見る。
 しかもその舞台を見てくれる人たちが喜んでくれている、
 その光景に勝るものは、俺にとってきっと存在しない。
 たとえ宇宙に行って、青い地球を見ても、俺はたぶん、自分の舞台を見ている時ほど幸福を感じないだろう。
 それはなにも、ワンピース歌舞伎のような大作だからではなく、扉座の公演でも、厚木の子供たちの舞台でも、横浜の若者たちとのクリエイトでも、等しく変わらず。
 宇宙を見て得たインスピレーションが、物語となり、俳優たちの語るセリフとなり、厚木とか、高円寺とか、名古屋御園座とかの舞台の上に結実して、初めて俺は宇宙を見たと思うんだろう。

 そろそろ天命と認めろよ、と自分に言ってみる。

 感謝の夜に。
 
 
 
 
 
 

 
 

 

 


 


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