扉座

去年の公演から、ちょうど1年。また、「郵便屋さんちょっと」の季節が巡って来た。
今回は、30年前、無名に近かった劇団「善人会議」(扉座の前身)が「夜曲−放火魔ツトムの優しい夜−」をもって勝負を賭けて殴り込んだ、つかこうへい全盛期の演劇の聖地・新宿紀伊國屋ホールである。
幻冬舎Presentsとしては2度の「つか版・忠臣蔵」、前回の「郵便屋さんちょっと」に続く、4度目の公演になる。
前回の劇場[座・高円寺]では不安で不安で、初日は客席で胸が張り裂けそうだったが、今回は再演なので、少しは安心して観ていられるような気がする。
とは言っても、紀伊國屋ホール仕立てに横内謙介は芝居を変えて来るだろうから、それが楽しみであると同時に、やはり不安も募る。
往年のB級フランス映画の傑作「さらば友よ」と、つかこうへいの代表作「熱海殺人事件」のオマージュであると僕が断じるあの慟哭のラストを目指して、紀伊國屋ホールの舞台がどんな呻き声を上げるのか?客席が、どんな感動で揺れるのか?つかこうへいが笑い、泣き、怒った、演劇の聖地に高校生の頃から通い詰めた横内謙介が脚本を書き、演出する。
40年の時を経て、つかこうへいと横内謙介の魂がクロスする時、再現されることのないはずの舞台が、台詞を変え、役者の肉体を変えて鮮やかに甦る。手紙ではなく人々の心情こそを運びたい郵便局と、昨日まで嬉しかった、昨日まで悲しかった庶民が織り成す奇跡の2時間。呻りを上げる舞台の声と、揺れる客席の震動をあなたは聴き、感じることが出来るだろうか?
40年前はこうだった!舞台の上の一人一人はあなたである。
耳を澄ませ。目を凝らせ。演劇はこんなにも素晴らしい。
つかこうへいは亡霊となってこの劇場のどこかに座っている。

幻冬舎 代表取締役社長 見城 徹