第5回 六角精児のシモキタ裏情報館
どうも六角精児です。このコーナーでは下北沢で僕がおもしろいと思う所や、気に入っている飲み屋を紹介しているのですが、実はひょんなことから僕が下北で飲み屋を始めることになりました。営業は今年の初めからしてまして、まあ今のところ、知り合いなどが遊びに来てくれて、ぼちぼちやっております。いずれ僕の店もこのコーナーで紹介したいと思っていますのでよろしく。
さて、今回は、下北沢で一番下北らしい店「ピーチ」について書いてみたい。「ピーチ」は下北沢に三軒ある。まず一番最初にあったのが、「イート・ア・ピーチ」そして「トラブルピーチ」一番最近できたのが「ピーチボーイ」だ。いずれも夜7時過ぎから朝までやっている。下北沢に通っている人なら知らない人はいないロックバーの老舗である。場所は図を参照。
それでは「ピーチ」を分析していこう。
@ 店の外観及び店内の雰囲気
「イート・ア・ピーチ」は一階にあるカウンターだけの店。「トラブルピーチ」はその二階に上がるとあり、テーブルが三つ四つある。下よりも広い店。下はギウギウに詰めてせいぜい7,8人、上には30人以上は入れるか? とにかくこの店の外観は汚い。いつ頃出来たか不明の木造の建物で、あちこち朽ち果てているし、店のネオン管は半分以上がついていない。きれいにしょうという気がないのがまるわかりだ。二階に上がる階段もボロボロでいつ踏み抜いてもおかしくないし、実際、一番下の所の右横には穴が開いていて、その上にパンチカーペットがひいてあるので大変危ないのだ。僕も一度、あわてて階段を下りた時、誤って一番下の所の陥没に足を取られ、ひねってしまい、痛みが二ヶ月ほどひかなかったことがある。とにかく気をつける事だ。「イート・ア・ピーチ」の内部は外観同様、汚いの一言につきる。冬は奥の方にガスストーブがあるのだがその近くに座ってうっかりしてると、靴のゴムのところが溶ける。テーブルや椅子の隙間にはほこりと共に得体の知れないものが無数に詰まっていて見るのも恐ろしい。あと、トイレに入ろうとするとドアが椅子につっかえて、少ししか開かない為に苦労するし、中も異常に狭い。男はたいてい、近くの小田急線の踏切の所で立ちションする事になっている。二階の「トラブルピーチ」も似たようなものだ。しかし店内が大変暗い為にその様子がはっきりつかめない。たまに生き物が横の方で動いたりする気がするのだが、あれはネズミか? それとも気のせいか?
さて「ピーチボーイ」は京たこのあるビルの四階にあり通称「4階」と呼ばれている。エレベーターがないので酔っぱらって上までのぼると心臓がパコパコいう。雑居ビルなので外観はまともだ。中もそんなに薄汚いという感はないのだが、全体的に店の装飾に金をかけてなく、殺風景で、高校の文化祭の喫茶店のようなイメージがする。しかし変に金を使っているより潔くてこれも良い。
A 店員
この店は、初めは青森県出身の中居さんという人が一人で始めた。この人に商売の才覚があった訳だ。ひょうひょうとした、サッカーのラモスの生命力を抜いたような感じの人で一見、何を考えているのかわからない。親切でもなく、かといって冷たいわけでもない。話していると変なところで要点を押さえている人で、この人のキャラクターが、狭いロックバーと大変マッチしていた。そしてこの人のカリスマ性が客を呼び、以後「ピ−チ」に務める店員にも大きな影響を与えたと思う。この店の店員は、ロック好きのおもしろい兄ちゃんばかりである。それぞれの店員のキャラクターに惹かれて客が来る。青葉(兄)青葉(弟)、町田君、金沢君、黒田君等々……。彼らとの間に僕はいろんな思い出があるのだ。現在は、僕と同じ世代の人間は店をやめてゆき、20代の人間が中心にやっている。ただ例外は金沢君で、もう20年近くこの店で働いている。忙しくないときは、店の中にいると息が詰まるのか、外でボーッと人々の流れを見ていたりする。まるで娼婦のように。
B 酒と料理
かなり酒を飲んでから行く為か、「ピーチ」系の店で飲んだ翌日は、僕は必ずと言っていいほど、二日酔いをする。一度、薬用のアルコールでも混ぜているのではないかと、店員の目を見て訊ねたが、決してそれはないと言い切った。たぶん本当だろう。まぁ酒に関しては複雑なカクテルをのぞいてはだいたい揃っている。客にいわれて無ければその場で買いに行く。ロックバーとしては問題は無いのではないか。ただ料理、これはいけない。まず、「お通し」、たいてい、ポップコーンやカールのようなスナックが出てくるが、他の客が残していったものの中に又、新たに追加して出している様だ。使い回しの感が極めて高い。何年か前はゆで卵を「お通し」としてかごに俵積みにして出していたが、あれはいったいいつの卵か予測できなかった為恐ろしかった。ちなみにその卵を僕は食べた事はない。料理も生もの・焼き物いろいろとあるのだが、全体的に新鮮さはゼロ。酔っぱらって暗い所で食べる為によく分からない場合が多いのだ。ある店の主人が「『ピーチ』は八百屋で野菜の端っこの所を20円位で大量に買って来て、それを食材としたヤキソバ等を600円で出している。あれは儲かるわ。」とつぶやいているのを聞いた。とにかく、「ピーチ」で料理を食べる時、僕は複雑な気持ちをいつももっているのです。
C 音楽
とにかくロックである。在庫は三店舗併せて、どれ位あるのかよく分からないが、相当なもんである。たいがいのリクエストには応えられるだろう。それにお客さんが自分で聞きたいと思ったレコードやテープを持参すると、それも気軽にかけてくれる。ただし、客が自分一人しか居ないときとかは例外であるが、原則としてロックでないものはダメ。その辺にはこだわりを持っている。アンプやスピーカーなどの機材も良いものを揃えているわけではないが、「ピーチ」でロックを聴いていると、酔いも手伝って、とっても良い曲に聞こえるし、自分がすごいロック好きに思えてくるのだ。ロックが少しでも好きな人は、一度是非「ピーチ」の雰囲気を味わいにいって欲しいものだ。
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高円寺、阿佐ヶ谷そして下北沢。これらの街はどこか共通した『臭い』を持っていると思うが、どの街も時代の流れでどんどん小ぎれいになって来た。そんな中、流れに逆らいながら営業している下北沢でも数少ない店が「ピーチ」なのだ。素敵な店、酒のおいしい店、料理のうまい店、そういうのは、雑誌にいくらでも載っているいるし、どこの街にも結構あると思う。しかし、キタナイ店のカウンターで知らない人達が肩を寄せ合ってロックに耳を傾けながら酒を飲む、そんな青春の一ページの様な店は大変貴重なのだ。「トラブル、イート・ア・ピーチ」のある建物は前述したが大変古く、いつ取り壊されても不思議ではない。2000年まではもったがこの先10年後にはたぶん建て変わっているだろう。ロック好きの者達よ、下北沢の「ピーチ」に今のうちに足を運ぼうではないか!
そういえばこの前、なんかの雑誌で「トラブルピーチ」が、料理のうまい店というところに紹介されていた。狂っている。