扉座sp

Cast

 10年ぶりの再演にあたって、キャストと演出を一部変えて、扉座の財産に更なる命を吹き込みます。

 昨今マンガ作品やゲームを舞台化した2.5次元舞台が大流行です。マンガやゲームのキャラクターがそのままステージに飛び出して来るような美しさと楽しさに溢れています。でも私たちの舞台は、このブームが来る前に創ったものです。そして考え方が違います。

 その昔『ブラック・ジャック』が実写化されたことがあります。手塚治虫先生がご存命だった頃です。主人公ブラック・ジャックが、原作の絵に似せて特殊メーク等で造形されていました。それを見られた手塚先生が「こんな顔の人間がこの世にいるか!」と怒られたと言うのです。私はマンガだからこのように描いている。映画にするなら、映画としての描き方があるはずだろう、と。

 私は今まで手塚原作の舞台脚本を『百鬼丸』含めて5本ほど書いて来ましたが、いつも心にその言葉を刻み付けて仕事に臨みました。芝居でないと描けない描き方で書くのだ!と。タイトルにもなっている日本の伝統芸術・浄瑠璃を取り入れたのも、そのアプローチの一つです。

 先入観なしで観たら、昭和の人気アニメでもあった手塚治虫の『どろろ』だとは気付かない人もいるかもしれない。しかし、そこに描かれていることは、まぎれもなく我が国を代表する物語作家・手塚治虫さんが紡いだ物語である。それが狙いです。

 15年前の初演作ですが、AIの発達によって、頭脳と肉体が更に切り離されて、バラバラにされてゆく今の時代。魔物に奪われたカラダを取り戻そうとして格闘する、百鬼丸の物語はますます人の心に響くものとなると思います。

 これは未来へ届けるべき、普遍の物語です。

   横内謙介


【新浄瑠璃 百鬼丸~手塚治虫『どろろ』より~】

 手塚治虫作品の舞台化で話題作を残して来た横内謙介(★注1)が、2004年初めて劇団公演として手塚作品に取り組み、好評を博した『新浄瑠璃 百鬼丸』。熱烈な再演希望の声に応えて2009年再演。

 少年向けコミックとして描かれた『どろろ』(★注2)を、歌舞伎義太夫の第一人者・竹本葵太夫丈の協力の下、神話的な語り物=浄瑠璃として再構成したこの作品は、原作とは細部のストーリーが違っていますが、浦沢直樹氏の『PLUTO』(★注3)と同じく手塚作品を深く敬愛しつつ、新たな可能性を示した作品として、手塚ファンからも圧倒的な支持を得ました。

 特に、魔物に肉体を奪われて生まれてきた百鬼丸を、二人の黒衣(百鬼丸の声と影)として表現する演出は、精神と肉体の相克をテーマとして追求した手塚治虫の魂を鮮烈に形象化したと評価されました。

10年ぶりの再演にあたり、装い新たに決定版としてお届けいたします。

注1 横内謙介が脚本を担当した、手塚治虫作品の舞台化。 『リボンの騎士-鷲尾高校演劇部奮闘記-』 銀座セゾン劇場('98.11-12/演出:河毛俊作/主演:井ノ原快彦、一色紗英 鈴木蘭々)→2018年劇団公演として上演
『陽だまりの樹』 銀座セゾン劇場('92.7、'95.6、'98.6-7/演出:杉田成道/主演:中井貴一)
NINAGAWA『火の鳥』 さいたまスーパーアリーナ('00.11/演出:蜷川幸雄)
ミュージカル『アトム』('10.4-'13.3/脚本・作詞・演出/わらび座公演 全国ツアー有)

注2 '67.8.27-'68.7.22「週刊少年サンデー」(小学館)連載。
体の48箇所を魔物に奪われた百鬼丸が、魔物退治の旅を続ける怪奇マンガ。
戦国時代を舞台として、伝説や説話に出てくるような妖怪が次々と登場。
百鬼丸は自分の体を取り戻す旅の途中、どろろというドロボウの少年と知り合い、一緒に旅をするようになる。
連載は未完のまま中断されたが、テレビアニメ('69)の放映に合わせて、月刊雑誌「冒険王」に第2部が連載され、完結。身分の高い主人公が幼くして故郷を離れ、数々の苦難をのりこえて英雄になるという、貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)の一面も持つ。

注3 '03~'09 小学館「ビッグコミックオリジナル」にて連載。
原作は、手塚治虫『鉄腕アトム』のエピソードの「地上最大のロボット」。第9回(2005年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門 優秀賞、第9回(2005年)手塚治虫文化賞 マンガ大賞、第41回(2010年)星雲賞マンガ部門 コミック部門、2011年国際アングレーム漫画祭インタージェネレーション賞を受賞している。


【あらすじ】
 野心に燃える戦国武将・醍醐景光は、天下盗りのために生まれてくる我が子の肉体の48ヶ所を魔物たちに与える取引をする。48ヶ所を失って生まれた赤子(百鬼丸)は川に流されながらも生き抜き、運命的に出会ったコソ泥の男(どろろ)を供とし、奪われた肉体を取り戻すために魔物を倒す旅に出る。

  いろはの四十八文字と 数えて同じ 四十八
  赤子が言葉知る如く 失せたる手足 目鼻口
 一つ二つと取り戻し
  祓い清めや父が罪 お懐かしやの母上様