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横内謙介 連続対談 『メットをかぶれ』 
第3回
横内謙介×菊地哲榮(『ドリル魂』開発推進委員<S・アドバイザー>)
×長谷川雅大(『ドリル魂』音響設計主任<音楽監督>)

Photo 対談:菊地哲榮&長谷川雅大&横内謙介

横内 長谷川さんとは、5年前、この稽古場でやった第1回の『東京建築ショー』試演会の時に、菊地さんからご紹介していただいたのが最初でしたね。

長谷川 国民文化祭(ふくおか2004)の全然前でしたね。

菊地 そうか。長谷川さんは、『東京建築ショー』を観て、国民文化祭(以下、国文祭)に行って、豊橋(豊橋市民音楽劇『豊橋オーレ』演出:茅野イサム)に行ってここにきたわけだ。だんだん深い付き合いになってきた(笑)。

横内 もともとなんで、菊地さんは、長谷川さんを試演会の時に連れてきてくださったんですか?

菊地 ピーンと来たんですよ。この企画は絶対に長丁場になるから、音楽監督として、じっくり関わって、丁寧に一緒に作ってくれる人が必要。それは長谷川さんだと。長谷川さんしかいないと思ってたからですね。

横内 今回の『ドリル魂』って、非常に難しい作業をお願いしてるじゃないですか。プロデュース公演ではなく、劇団公演ですからね。それもミュージカル専門じゃない。大変な苦労でしょ。使える音域とかも極めて少ないし。

長谷川 今回、自分で決めていることは、そこで足踏みしないようにしているってことです。ハードルは高くして、そこから変えていこうかなって思ってます。
例えば、先程稽古中に歌ってもらった曲も、難しいに決まってるんだけど、分かってくれるだろうっていう感じなんです。音楽って最終的に理解力だから、理解してくれたら、上手い下手じゃなくていけると思っています。

横内 今日初めて、長谷川さんに稽古場に来ていただいたんですが、大丈夫でしたか?

長谷川 大丈夫です。上手い下手で言ったら、まだ下手です。でも全然がっかりしなかった。もっと上手くても、がっかりすることはありますから。

菊地 上手いだけってこと?

長谷川 理解していないんです。

菊地 ああ、なるほど。ただ、私上手いってことだけを表現してる。

長谷川 そう、自己主張だけ、みたいな。
現時点で理解できなくても、理解しようと思ってくれていたり、到らないけど、前向きに登っていく行程のように、今日の稽古で感じられたので、本音なんですけど、心配はしてないです。

Photo 対談:菊地哲榮&長谷川雅大&横内謙介

横内 今回は、僕なりにチャレンジをしていることがあって。
僕は劇作家で、台詞を作ったり書いたりすることが仕事。今回台詞もあるんですが、台詞だけで伝えないって決めてる。一番感動したり、面白いって言われる場面は、歌や踊りとかパフォーマンスでなければダメだと思ってます。
もっと言うと、感動は歌でしてもらわないといけないだろうなって。良くできたミュージカルって、クライマックスに、一番いい歌がきて、心のこもった歌声があり、歌を超越した感情がこもってくるみたいなことがあるじゃないですか。(ダメな作品は、歌とか踊りは単なる場つなぎで。)
今回はそこにチャレンジします。

菊地 エネルギーというか、気の流れみたいなものがきっちり流れていくと、言葉とか人種を越えていける。是非、越えていく作品にしたいね。

横内 『東京建築ショー』は、この先、菊地さんがラスベガスに持って行ってくれる予定になっているので(笑)。

菊地 野望だね(笑)。その前に、(千葉市)美浜文化ホールやらないと(笑)。

横内 そうそう、ラスベガスに行く前に美浜に行かないと(笑)。

菊地 7月1日のこけら落としに向けて、長谷川さんも是非何らかの形で関わっていただいて。

長谷川 はい。

横内 劇場の説明をすると、指定管理者というのに、菊地さんが当選して、

菊地 劇場を運営管理することになったんです。(客席数)350の主に芝居用の多目的劇場と、150のクラッシック専用の劇場2つ。 実は、この規模では、我々のビジネス的な観点からすると採算は難しいんです。 でも、エンターテインメントの原点は、地域の住民の方との様々なコラボレーションをとおしての歓び。そして、最終的にエンターテインメントの仕事は、癒され元気になり、心機一転とか市民の方々の活性化。ワークショップを含めて、ここで原点を探っていきたい。

横内 僕たちも、最近は豊橋でも市民劇をやらせてもらったりしてますが、その前の福岡の国文祭の経験が、僕たち扉座を変えたんですよ。
国文祭では、素人と玄人が融合して、1つのパフォーマンスを支え合うみたいな感じがあったように思うんです。
上手くやれば、プロと市民が組んで、ある意味、レベルを落とさずに、なおかつ、プロだけが集まったんじゃ出来ないことも生まれるぞっていう体験をした気がするんです。

菊地 国文祭の時は、素人の持っている素直なエネルギーが、半年がかりで醸成され、その全てが1回だけのライブに収斂されたから、凄いエネルギーになりましたね。
国文祭から豊橋、その凝縮したものを7月1日の美浜文化ホールでみせたいと思ってます。
プロとアマチュアの融合、両方のいいエネルギーを醸成させるのは、扉座の得意技のような気がします。

横内 それはラッキィ(池田)さんと彩木(映利)さんのダンスにも通じるんですよ。ラッキィさんたちは目の前の普通の肉体を輝かせる。
芸術の世界には、ありえないところまで行く境地がある。普通のカラダが特別なものに見えてゆくという
つまり、見たことのないものをみせるという目標は、超人的な身体の動きじゃなくてもできるっていうことをラッキィさんの踊りを見ていて感じます。
そして、同様のことを長谷川さんの音楽にも感じます。言ってみれば、狭い音域で十何曲も作らせてたりしますから(笑)。でも作ってくれた曲は似ている感じがしないですよね。

菊地 全然。皆、それぞれにキャラクターがある曲でした。

横内 もちろん、普通じゃない超人の凄さは知ってます。
でもそれは、普通の人に出せない高音を出すことが、必ずしも人の心をうつ訳じゃないってことですよね、先程の長谷川さんの話からいけば。
そんなことを考えていると、市民とプロの融合という分野では、僕たちは新たなパイオニアになるんではないかって勝手に自負しているんです。ラッキィさん、彩木さん、長谷川さん、菊地さんと組んででやっていれば、何かが起こる(笑)。

菊地 普通の平凡な人が、火事場の馬鹿力を出すプロジェクト(笑)。これでいきましょう(笑)。
でもその元になっているのは、横内さんの人間賛歌だよね。人間に諦めてない。人間は何かキッカケがあると、エネルギーを出すし、成長し続けるっていう。それは、アマチュアでも、素人であっても変わらない。

Photo 対談:菊地哲榮&長谷川雅大&横内謙介

横内 話は変わりますが、長谷川さんはつい昨日まで、ブロードウェイに行かれていて、本物のミュージカルを見て、今ここにこうしているわけですが(笑)。音楽の専門家として分析すると、ブロードウェイのミュージカルってどうなんですか?

長谷川 上手くできてますし、言い古されていることですけど、いろんな意味で奥が深いです。層が厚いのを感じました。観たり聞いたりする人の層も厚いから、ブロードウェイに関わっているアーティストの層も厚くなっていくんじゃないかなって思いますけども。
音楽的には、細かいところで凄いところがいっぱいあるし、日本人が真似しているところもありますが、かなり追いついてはきてる気がします。

横内 お客さんの層のことで言うと、僕は昨年12月末に、ブロードウェイに行って感じたのが、男の観客が日本に比べて圧倒的に多いことです。

菊地・長谷川 多いですね。

横内 カップルとか家族連れで来ている。そのうえで、台詞とか、芝居の内容そのものとかが、社会風刺であったり、人種問題であったりする。そんなことを皆が観て、笑いあって、政治的な台詞なんかに、すごくビビットに反応してる。
日本で当たるミュージカルって、そういうハードなものでは無いですよね。夢の世界にいかに連れて行ってくれる、我を忘れに行くのが劇場だっていうところがあると思う。
投資の対象であったり、どう利潤を生んでいくかっていう理屈で作ってるはずのブロードウェイで、単に夢の世界作ってるだけじゃ、お客さんが実は喜んでいないかもしれないみたいなことを感じたときに、ここは勝負のしどころだなって思ったんです。
だから『ドリル魂』においては、わざとちょっとハードな、日頃僕が思っているようなことをのせてみようかなと。
政治的とまでは言わないけれども、ある大人の責任の取り方とか、働くことっていうことに対する意見であったりするんですが。
日本で僕らがやっている演劇を、観客も含めて、皆がそういう楽しみとして持ち直すと、浮世離れしたものじゃなくなり、仕事帰りにも観に行けるものになるんじゃなかな。多分、今のビジネスマン達には、演劇は、人生とあまり深く関わらないものだと思われているだろうから、もうちょっと深く関われるようなものにしたいって思ってます。

菊地 そうだね。あともう1つ、『東京建築ショー』って、日本らしさって何かっていうことが最大のテーマ。ファッション的にはニッカポッカを使用しているし、内容的には、どこか武士道みたいな精神が漂うといいかなって思います。
そして、言葉よりも肉体、生きている、心臓が動いているのが先なんだってことを思い出させてくれるミュージカルにになればって思ってます。

 

横内 それでは、最後に一言ずつ、この作品に向けてメッセージと、決意を語っていただければと思います(笑)。

菊地 日本初、現代を超えた、そして観た人がよく分かる。それは日本人だけじゃなくて。その中には日本的な魂、武士道もあり、ファッションも大切にしたミュージカルの創作。マカオで大成功して、ラスベガス行きを設計しましょう。

長谷川 いつも仕事としてやっていることを、まずはちゃんとやります。ただ、今回、なにかエネルギーがあるのを感じていて、今、自分で作っているのではなく、そこから作らされている感覚を持っています。勘違いかもしれないんですが、その感覚は今まで無かったものなので、僕も新しいものに出会っている気がしています。日頃、車の運転とか気をつけようって感じですかね(笑)。

横内 今日はありがとうございました。


 

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