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R36連続対談 
第1回
横内謙介×真柴あずき

扉座と、演劇集団キャラメルボックス。それぞれの劇団で、同時代をひた走ってきたふたつの道が、ここで静かにクロスする。扉座次回公演『LOVE LOVE LOVE R36』、その豪華作家陣のひとり・真柴あずきに、横内謙介が会いに行った。

取材・文 小川志津子

Photo 対談:真柴あずき&横内謙介

横内 こう見えて僕ら、意外に交流が少なかったと思うんですよ。それぞれのフィールドが確立してくると、どうしても自分たちの仕事優先ってことになっちゃうし。だから真柴さんが劇作家として台頭してきた時代を、僕はよく知らないんです。そもそも、役者さんだったんでしょう? なぜ作家になったの?

真柴 ……上から「やれ」って言われて(笑)。

横内 「やれ」って言われたって、できないよ普通(笑)。

真柴 もともとは、マンガ家になりたかったんですよ。物語を作る作業が大好きで。でも絵が上手くなかったのでさっさと諦めまして(笑)、そんなこともすっかり忘れて劇団を始めたわけですけど。

横内 へえー。

真柴 それでたまたま、出版社に務めていた加藤(昌史)の同級生が、小説を書ける人間を捜していたんですね。それで「たしかお前、物語を書きたいって言ってたよね?」みたいなことになり。手探りで書いてみたら「お、できるじゃん!」というようなことになり。ちょうどそのころ、成井(豊)と加藤の間で「劇団内にもうひとり、作家がいたらいいね」みたいな話になっていたらしく、「次の芝居、お前書け!」って言われて、……

横内 それでいきなり戯曲を書いたの??

真柴 そうです。『四月になれば彼女は』という作品を。初めて書いた第一稿は、今もおそらく成井が持ってると思うんですけど、何でもするから人には見せないで!って思いますね。

横内 (爆笑)でもさ、今までずっと書き続けていられてるってことは、やっぱり何か特別な理由があるんじゃない?

真柴 んー……(しばし長考)これが特別かどうかは別として、少なくとも、私自身が楽しい、ってことは言えますね。書いてるときは苦しいですけど、それが完成して、自分が書いた言葉を役者が語ってくれて、お客さんから拍手をもらうという営みが、素直に楽しくて。

Photo:真柴あずき

横内 書きながら、自分で演じてみたりするわけ?

真柴 いえいえ(笑)。よく知ってる役者にアテ書きをしているので、彼らが頭の中で勝手に喋ってくれるんです。たまに行き詰まると、口に出してみたりはしますけど。

横内 そういうときは、やっぱりキャラメル節なの?

真柴 キャラメル節って?

横内 はっきり、くっきり、通る声!みたいな。

真柴 それはないです(笑)。ぼそぼそぼそっ、と。

演劇集団キャラメルボックス公演

キャラメルを突き動かすものは「執念」!?

横内 僕の勝手な思い込みなんだけど、キャラメルボックスって“青春の劇団”だと思うんです。旗揚げから20年も経つと、作る側も観る側も、確実にトシを取っているでしょう。キャラメルボックスはそれでもなお、勢いだとか若さとか、ポジティブな元気を前面に押し出してるじゃない。だからこそあえて、ここで真柴さんには青春ではない大人の恋を描いてもらいたいなと思ってて。「大人が恋をしてよみがえる若さ」とかじゃなくて。大人のリアルを描いて、この世代の劇作家の成熟を見せたいんだ。

真柴 うわ。ご期待に添えるかどうか……。

横内 いつだったか、ラッパ屋を観に行った帰り、鈴木聡とか植本潤とか春風亭昇太さんとか、タチの悪いおじさんたち勢揃いで飲みに行ったじゃない(笑)。そのとき、紅一点だった真柴さんがすごく闘ってたでしょ。今日の芝居のここが弱い!みたいなことを、びしびし言ってて。

真柴 ほんとですか!? 全く記憶にないです……。

横内 すっごかったんだよ。「あれじゃせりふが聞こえないです!」とかなんとか。それに対しておっさんたちは、「いや、名人の落語はぼそぼそとしか聞こえないんだけど、その佇まい全体が味なんだ」みたいなテキトーなオヤジのウンチクで応戦しだしたわけ。「いいからお前、落語を観ろ!」って。

真柴 ああ、それは覚えてますね。落語を観ないでどうこう言われたくない、って怒られた記憶が。

横内 そんなことがあったから、すごいなこの人は!って思ったんだよ。だってあれ以来、落語をものすごく勉強したんでしょう? 落語会に足繁く通ってて、この前は柳家花緑師匠に新作落語を書き下ろしたって聞いたよ。

真柴 ええ、今では本当に大好きです。

横内 その話を聞いて思ったんだ。真柴あずきは執念の作家だ、と。劇世界はあんなにも「青春!」「情熱!」って感じなのに(笑)。

真柴 (笑)。たしかに、キャラメルボックスを突き動かしているのは「執念」なのかもしれないです。昔加藤が某情報誌に「(観客を)1万人入れたら載せてやるよ」って言われて、「くっそお、1万人入れてやる!」って奮起したのがそもそもの始まりだったし。

横内 僕も『猫と針』で新中野(キャラメルの稽古場がある)でひと夏を過ごしながら思った。キャラメルの人たちって、そのモチベーションの根底に、ある種の屈折感があるよね?

真柴 あります、あります。実は全然さわやかじゃないんですよ、うち(笑)。だって昔、みんなで善人会議さんの「曲がり角の悲劇」を観に行ったときなんか、大っ変でしたもん。ああ悔しい、すごく悔しい、なんであんなにすごい芝居ができちゃうんだろう、こんちきしょー!……って、みんなで延々言い合ってたんですよ(笑)。

横内 そうだったんだ……遠い昔に落とした忘れ物を、今になって突然手渡された気分だ(笑)。

Photo 対談:真柴あずき&横内謙介

余裕のある「融合」が今ならできる気がする

横内 僕らは僕らで、キャラメルの背中をいつも見てた気がする。「キャラメルは1万人突破しちゃったらしいぞ。完敗だ……」って(笑)。そうやってお互い意識しながら、道が重ならないように重ならないように、走ってきた年月だったと思うんだ。こんなにざっくばらんに話すようになったのも、ほんと最近のことだもんね。

真柴 そうですね。

横内 でもここへ来て、それぞれの抱える問題が「俺たちはいつ消えるのか、それとも消えずにやっていけるのか」みたいなことじゃなくなり、もうこれでやってくしかないって了解し合えるようになった今、ようやく、真の意味での「プロデュース公演」ができるようになったんじゃないかと思うんですよ。以前よりも腹を割った、余裕のある付き合い方ができるんじゃないかと。

真柴 そんな、恐れ多いですけど。

横内 それを僕は『猫と針』で確信したんだ。多少の文化の衝突は覚悟してたんだけど、意外なほどそれがなかった。助走なしで、ひと息に融合できちゃった感じ。

真柴 ああ、私たちも昔、他劇団と手を組んだ企画公演を何度かやりましたけど、あの頃はたしかにどこか固かったかもしれないですね。「互いに融合して新しい何かを目指す」というところまでは、行けなかった。

横内 でも、今ならできるじゃない。お互い、同じことを20数年やってきてるんだから、助走なんかとっくに済んでる。作風や立ち位置は違っても、何らかの共通言語が、同世代の劇団間にはとっくにある気がするんだよね。だから何の迷いもなく、真柴さんにお願いしたわけなんです。

Photo 対談:真柴あずき&横内謙介

酸いも甘いもかみ分けたオトナ同士の新婚生活

横内 それと、期待してるのはもうひとつ。真柴さんは実生活でもご結婚をされたばかりで(ラッパ屋・おかやまはじめと昨年結婚)。そのへんの実感も含めて、とてもリアルなものに仕上がってくるんじゃないかと期待してるんです。だって、酸いも甘いもかみ分けた、同世代の劇団員同士の結婚って、珍しいよね? まだ右も左もわからないワカモノ同士ならまだしも。

真柴 ああ、言われてみれば、たしかに特殊かもしれないです。

横内 でしょ。どうなの、そのへん?

真柴 「そのへん」って(笑)。えーと……結婚と劇団って似てるかもしれないなあ、というのは、ちょっと思ってて。私の中で、恋愛は「いつか終わるもの」という印象があるんですよ。でも結婚は「これからも続けていく」ことを前提にして、スタートするでしょう。劇団だって、そうですよね。解散するために旗揚げするなんて人たち、なかなかいないと思う。

横内 だけどふたりはそれぞれ、長年のライフスタイルが確立しちゃってるじゃない。その上で一緒に暮らし始めるのって、大変じゃない?

真柴 いや……彼が3時半ぐらいまで飲んで帰ってきて、怒られるかなーと思ってそぉっとドアを開けたら誰もいなくて、私のほうが5時半まで飲んでたってことがあります(笑)。

横内 あはは。それ、いい話だね。長年この世界にいて、成熟した大人同士だからこその結婚生活だなあ。

Photo 対談:真柴あずき&横内謙介

好き」「一緒にいたい」が
私のガソリンかもしれない

横内 真柴さんはさ、「恋」ってどういうものだと思う? 俺、自分の中でそのへんの整理がつく前に結婚しちゃったから、あまりよくわからないんだけど。

真柴 どうなんでしょう……よくわからないけど、少なくとも「好きだ」とか「この人と一緒にいたい」っていう気持ちの方が、「嫉妬」や「執念」よりも人を動かすような気はしますね。私自身、好きな人とおいしいごはんを食べるのが一番のリラックス法なんですけど、相手にとっても自分がそういう存在でありたいと思うから、「もっと笑顔でいよう」とか「仕事早く終わらせよう」とか思えるわけですよ。実際にできてるかどうかは別としてね(笑)。そういう気持ちが、私のガソリンだと思うんです。

横内 なるほど。僕はね、最近ようやく、女性をエロスと切り離して見つめる余裕が出来てきたんですよ(笑)。以前は女性の人格について、ふくらはぎのラインで騙されてたようなところがあったんだけど(笑)、最近はそこから離れて、別の気持ちで向き合えるような余裕を自分に感じるのね。完全には無理だけど(笑)。で、今回は8本の短編が並ぶわけだけど、エロスを描きそうな作家があまりいなさそうな予感がしていて。じゃあ俺がやろうかなあ、なんてぼんやり考えてはいるんだけど、もしそれを、真柴さんが書いてくれたらすごいことになるなぁ!って、今思った。きっとみんなビックリするよね!?

真柴 たしかに、ビックリしますね。自分でもビックリすると思います(笑)。

Photo 対談:真柴あずき&横内謙介
 

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