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R36連続対談 
第5回
茅野イサム×岡森諦×鈴木哲也

取材場所に着いたころには、宴はすでに始まっていた。初めての顔合わせ&本読み稽古で、鈴木哲也会心の一本が、出演陣の手に渡った夜のことだ。そういうときの、作家の心境。自信と不安の真ん中で、ビールをかたむける鈴木哲也に、茅野と岡森が迫った。

取材・文 小川志津子

Photo 対談:茅野イサム×岡森諦×鈴木哲也

――そもそも、扉座とのつながりは?

鈴木 2005年に『語り継ぐ者たち〜清水次郎長伝・異聞〜』っていう芝居を、扉座で。茅野さんに声かけていただいて。かなり鍛えられた、一軍初登板みたいな公演だったんですけど。

岡森 いい芝居だったねェ! 初登板、初完封!だったね!

茅野 俺もあのとき、もぼ(鈴木のニックネーム)の背中が大きく見えたもん。

鈴木 だいぶよれよれだったですけど。キャッチャーのサインも見えないくらいのよれよれ具合(笑)。……あと、マキノノゾミが僕の、10数年にわたる師匠なんですね。その流れで、声をかけていただいたんです。

茅野 そう。マキノさんが新作を書くときには、彼が調べ物をやったり、話し相手になったり、欠かせない相棒なんですよ

岡森 だから俺は今回、弟子が師匠を超える瞬間を見たいよ。

Photo:鈴木哲也

鈴木 そこまでは行かなかったとしても、ちょっと思うところはあったりしますね。「わ、同じ土俵や」って。ことによれば「鈴木の方が面白かったわ」って言ってもらえる可能性も、ありうるのやなあと。

茅野 いや、まじめな話、もぼ、腕上げたよ。だいぶ前から構想は聞いてたけど、飾りのない、ストレートなホンなんだよな。画がすぐ思い浮かんでくるというか。だからてっきり、もっと早く上がってくると思ってた。

鈴木 いや、いざ書き出すぞってことになると……ビビるっすよ。いつも以上に、ビビりました。

茅野 俺ら、難癖つけるからな(笑)。

鈴木 最初に第一稿を茅野さんに送ったときも、「まだ、これから手直ししますから」みたいな逃げを打ち(笑)。

茅野 うん。なんで最初からそんなこと書き添えるのかな?って思った。

鈴木 でも茅野さんから「あんまり直し(を入れる必要は)ないと思うよ」って電話があったんです。

茅野 だって面白かったもん。

鈴木 でも僕は「“あんまり直しはない”ってことは、ちょっとはあるんや」って、思ってしまうんですね(笑)。

――いつも、そうですか? 書き終わって「これはやってやったぜ!」っていうことは?

鈴木 一時期までは、そうだったんです。で、扉座さんに限らずどんな現場でも、上演にあたって、直しというのは必ず入るものだってこともわかってる。それでも、やっぱり直しは怖いんですよね。初日の幕が開くまでは……というか開いてからも、「直しが入るんじゃないか」って、どこかびくびくしてる自分がいる。

岡森 へえー!

鈴木 何年やってても、どんなに優しい言われ方をしても、直されるとヘコむんです。今日だって、稽古場ですごい直しが入ってたとしたら、こんなにしゃべらないと思う。

茅野 (笑)。そういうときってさ、「うそ、こんな直しが入るのかよ!」って思うの? それとも「ああやっぱり、ここを突いて来たか……」って感じ?

鈴木 これは作家さんによって違うだろうけど、僕はどこを突かれても、「あ、そこ来たか!」って思いますね。自信満々で出すことって、ないです。……あと、たぶん俺、「ここ直してくれ」って言いやすい作家なんだと思いますね。「何を言われても直さん!」みたいなオーラが出てる作家さんも、いるでしょう?

岡森 いや、それはだって、年齢的なものもあるんじゃないの? あと10年ぐらい経ったら、まわりの反応も違ってくると思うぜ?

鈴木 いやー、なんか性格的なもののような気がするんですよね……。

岡森 わかった。今後は「もぼを天狗にする」っていうのを命題に、いろいろ頑張ってみるわ(笑)。

鈴木 でも実は今回、横内さんからお褒めのメールをいただいたんですよ。これからよそでどんな直しを食らっても、あのひと言を思い出して頑張れます(笑)。

岡森 え、俺いつも褒めてるじゃん。俺の言葉じゃ、だめなの?

茅野 それはやっぱり、同じ作家同士だからじゃない? 俺も役者をやっている時に、マキノさんにいただいた最大級の賛辞が忘れられないもん。

岡森 そうかあ。いいなあ。俺最近、横内に褒められたことなんて、ないぞ。

鈴木 いや、僕も、マキノさんに褒められたことなんて、ないですよ。よその(劇団の)人だから、褒めやすいってこともあるんじゃないですか?

岡森 いや、マキノさんに褒められたことも、ないぞ!

茅野 すっかり身内だって思われてるんじゃない(笑)?

Photo 対談:茅野イサム×岡森諦×鈴木哲也

これ、「どっきり」ですか?

茅野 今だから言うけど、『語り継ぐ〜』の第一稿をもらったときは、ほんとにちょっと頭抱えたもんね。今でも覚えてる。

岡森 もぼにとっては、ピッチング・フォームを根本から改造!みたいな感じだったんだよね。

鈴木 そうでした。「アマチュアではそれで三振取れてたかもしれんが、お前のフォークはプロでは通用しない!」と。扉座さんは、僕のファーム時代をよく知ってる劇団なんです。

岡森 「苦労を知っている」っていう意味な(笑)。

茅野 遠征試合の移動も自分でしなきゃいけないし、ユニホームも自分で揃えなきゃいけないし。

『語り継ぐ者たち〜清水次郎長伝・異聞〜』撮影:宮内勝

鈴木 そう。それが今日、作家のひとりとして稽古場に行ったら、はっきりと“一軍扱い”をされてるのがわかるんですよ。『語り継ぐ〜』のときはもう、ただ必死で、汗だくだくで、茅野コーチが何度もマウンドに来て「その球じゃダメだ、打たれる!」って叱咤激励されて。「お前、この局面でなんでカーブなんだよ!」って怒られながら、ベンチの方を見ると横内さんがブルペンに電話をかけて、次のピッチャーを呼ぼうとしている。「んあっ、ちょっと待ってください、最後まで投げさせてくださいっっ!!!」。

一同 (笑)

鈴木 それで行くと、今回はオールスターなわけですよ。各チームのスター選手が勢揃いして、実力を競い合う。そんな中にほうりこまれて、「一軍って、こんなにいいものなんだ!」って思って。今だってそうですよ。いつもはM.O.P.のパンフレットで、対談原稿は僕がまとめてるのに、今は僕がインタビューされている。いまだに僕は「……ひょっとして、どっきり?」って、ちょっと思ってます。

茅野 いやあ、もぼくんはいったいいつまでこういうスタンスでいるのかなあ。20年後30年後も、こんななんだろうか(笑)。

鈴木 毎回、どんな仕事でも、始まりはゼロからなんですよ。この仕事に「慣れる」とか、ありえない。今回だって、身近にいる女性の方とかに「俺、どんな恋愛を書いたらいいと思う?」ってリサーチするところから始まりましたし。

茅野 なんて言われたの?

鈴木 「あなたにとって、恋愛はファンタジーだ」と。「リアルな恋愛を書いても、あかんと思う」と。女の人はリアルでも、男側はちょっと浮世離れしてる方がいい。なぜなら、あなたがそうだから。……って、言われました。

岡森 おー。

鈴木 あと、国会図書館で岸田國士(きしだくにお・昭和初期に活躍した劇作家。彼の功績を顕彰すべく設立された「岸田國士戯曲賞」は、演劇界の芥川賞と称される)の短編集を読んでみたりとか。扉座の若い子たちに、いつもの「LOVE LOVE LOVE」はどうやって作ってるのか聞いてみたりとか。

茅野 ID野球だ(笑)。

鈴木 まさしくそうです。それで教えられたのは「起承転結を全部やろうとしなくていいんだ」ってこと。たとえば「起」だけを描く短編芝居があってもいいんだと。岸田國士さんって、わりとそうなんですよ。「え、ここで終わり??」っていう作品が、結構ある。なるほどなるほど、と思って。

――恋愛を書く、ということについてはいかがでしたか。

鈴木 決して、得意ではないです。オクテやし、恋愛経験も豊富じゃないし。だから設定の突飛さで逃げるってことも、できたと思うんですよ。自分とは何の共通項もない話を、でっちあげるということも。でもせっかくこんな機会をいただいたんだから、ちゃんと自分の手ざわりと実感があるところで勝負せな、と思って。ほんと、俺の恋愛って、まさにああいう感じなんですよね。

茅野 ずっと見守ってるけど、思いが届かない、みたいなことだよな。まさかオンナを棄てるなんてことは、

鈴木 ないないない。ありえない。だからこれを観た人が、「これを書いた鈴木さんって、なんて可愛らしい人なんだろう!」って思ってくれるような芝居になればなあって。

二人 (軽やかにスルー)

Photo 対談:茅野イサム×岡森諦×鈴木哲也

オッサンたちの恋愛談義

――鈴木さんは、どんな「LOVE」に惹かれますか?

鈴木 書きたい「LOVE」ってことで言うと、“忍ぶ恋”ですかね。うまくいってウハウハ!みたいな恋愛よりは、うまくいかなさぐあいを描きたい。そうすることで、観てくれた人に「いや、現実はもっと、うまく行くんじゃない?」って思ってもらえたら、僕自身も救われるかなと(笑)。

茅野 もぼは今、恋愛してるの?

鈴木 まあその、今回書いたみたいな恋は、してきましたね。

岡森 でも今回って、「大人の恋愛」なわけじゃん。思春期の恋愛と、大人になってからの恋愛って、もぼはどう違うと思う?

鈴木 思春期の頃の方が、うまくいきやすい気がします。うまくいくまでのハードルが、「好きだって言っちゃえばいいじゃん!」ぐらいのことだったりするじゃないですか。

岡森 俺、思うんだけどさ、20代の頃って、とにかくものすごく、エッチしたかったじゃん。「愛してるかどうか」なんてこと、わかんないくらいに。

茅野 うん、正直に言えば、そうだな。

岡森 でも、今は明らかに、衰えてきてるだろ。実感として。

茅野 まあ……そうだな(笑)。

岡森 そうすると、昔とは全然違うわけよ。恋愛の色が。だから「大人の恋愛」って言われると、まず「性欲」の問題だって気がしちゃうのね。エッチしたいという衝動に、振り回されない恋愛。 二人 あーー(納得)。

鈴木 たしかに、若いときは恋愛を書くと、自分の性欲を直視できなくて、むしろキレイなお話にしちゃったりしてましたね。

茅野 俺は、年を取ってからの方が、本音が言えるようになった。「どっか行こうよ」とか言われたりすると、若いときは「わかった、じゃあ休み取るか」とかって無理してたんだけど、今は素直に「ちょっとしんどい」って言える。

岡森 でもそれって、別の見方で言うと、本気で恋愛してないんじゃないかと思わない? すべてをかなぐり捨てて会いに行く、ってことを、しなくなったってことでしょ。

鈴木 恋愛に求めるものが、変わってきたってことじゃないですか。相手を想ってどきどきするよりは、一緒にいて安心できたり、ラクな気持ちになれたりしたい。

茅野 あと、怖さもあるよね。このトシで、これから恋愛を始めるってことになったら、だいたい想像つくじゃん。ここで前に踏み出したら、その後何が起こるかってことがさ。

鈴木 パワーが落ちてる、っていう部分もありますよね。性欲も含め。

岡森 でも、それを認めるのは嫌じゃない? 俺らは仕事柄、いろんなパワーがあった方がいいじゃんか。

鈴木 俺は、嫌じゃないです。むしろ、それでいい。

岡森 そうなんだ……この疑問に答えてくれる台本が、今回あったらいいなあって思うんだけど。「大人の恋愛」と「性欲」の関連性について。

茅野 そうだなあ。だって、昔は好きな人と、公園とかで何時間でも一緒にいられたもんな。

岡森 うん。いま改めて、高校時代みたいな恋愛がしたいなって思うもんね。

茅野 でも、失恋の痛手は、トシ取ってからの方が大きいよな。

岡森 なんか、「大人になる」って、思ってたよりもずっと、単純なことなのかもしれないって最近思うんだよ。肉体的に衰える、っていうだけのことなのかもしれないって。

鈴木 わかる気がします。僕いま38歳なんですけど、その意味で言うと、ちょうど微妙な年ごろなんですよ(笑)。

岡森 だからあえて、俺らが10代の恋愛を演じるのもアリかもしれないな。オッサン連中が、揃いの学ラン着てな(笑)。

 

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