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R36連続対談 
第6回
茅野イサム×岡森諦×マキノノゾミ

マキノノゾミは、作品愛のかたまりだ。自らの作品のワンシーンを、熱くよどみなく語っては、「な? 泣けるだろ??」って胸を張る。それがあまりにまっすぐなので、それを聞かされるめんめんは、ぜひ観たくなっちゃったり、やりたくなっちゃったりするのである。 ――この日、都内某居酒屋で、岡森と茅野が見事なまでに“マキノマジック”の餌食となった。

取材・文 小川志津子

Photo 対談:茅野イサム×岡森諦×マキノノゾミ

マキノ 何かね、今年スケジュール的にやたらしんどかったのね。このホン頼まれたときも嵐みたいな毎日でさ。でもこれに関してはどっか「ま、大丈夫やろ」っていう気楽さがあって。だって「扉座も劇団だろ?」と(笑)。ウチ(劇団M.O.P.)も同じだけど、扉座もいろんな修羅場をくぐってきてんだから、だから例えばホンが3日前に上がったとしても、「ま、劇団力で何とかするやろ」と思ってさ(笑)。

岡森 あー……まあ、……ねえ(笑)。

マキノ だから、ま、締め切りはあんまり気にしなくていいやって自主的に判断してな(笑)。で、今考えてんのは、10年前にとあるプロデュース公演向けに書いた台本の1シーンなんだけど、それをリメイクしようと思っててさ。(と見せる)

岡森 ほお。

マキノ 例えばこれなんか離婚から2年経ったカップルが再会する話なんだけど。実はずっと思ってたのよ、この場面は1本の短編としても成立させられるなあって。でもさすがに言葉の端々が微妙に旧いんだよなあ。「……これ、今ならメールで済むんだよなあ」みたいなこととかがさ。でも直すのも面倒くせえな、ま、いいか、これで(笑)。(※結局、この台本は他の作品とネタがかぶっていたのでボツになり、最終的には別の台本に変更されました)

――そもそも、今回のオファーはどんないきさつで?

マキノ いきさつも何も、オレ、言い出しっぺだし。

――え!

マキノ ていうか、昔から「こういう企画やったら絶対に面白いって」って方々で言って回ってたクチだからね。例えば、同じ短編小説を題材にして複数の作家が同時に書き下ろすみたいな企画。ちょっと観たくない?

――観たいです。

マキノ ね、観る方だって単純に楽しいだろうしさ。書く方だって、そこはそれ、やっぱ競争だから燃えると思うよ。だから「誰か、こういう企画やんない?」ってずーっと言ってまわってたので、今回横内さんから話が来たとき、立場上、断れなかったというわけですね(笑)。

岡森 作家さんたちも、実はこういう企画を欲してたりされるみたいですね。今回の作家陣は、皆さんわりとすぐにご快諾いただいたんですよ。

マキノ やっぱり刺激的なのよ。オレね、学生の頃に大阪で『熱海連続殺人事件』って企画公演に参加したことがあるのね。「そとばこまち」とか「新感線」とか、とにかく4つの劇団でつかこうへいの『熱海殺人事件』をひたすら連続上演するっていうバカ企画。

岡森 すげえ(笑)。

マキノ やっぱ燃えたもん。お客も愉快なくらい入ったしな。

岡森 「愉快なくらいお客さんが入る」って、いい響きですねぇ(遠い目)。

マキノ 劇団ってのも長くなるとさ、ある程度スタイルも客層も固定されてくるだろ? それぞれの集団にそれぞれのファンがついている、みたいな。それを何らかの方法で時々シャッフルするみたいなことは、単純に面白いと思うのよ。単にそれぞれの主軸俳優が客演しあうみたいなレベルのことじゃなくて。もっとこう、根本的に「つくる」部分の方法論をシャッフルしてみるみたいなことね。

――世代間でも、混じりあってほしいです。三鷹やアゴラでやってるような、若い作り手たちと。

マキノ おう、受けて立つよォ。ねじふせたるよ(笑)。

Photo 対談:茅野イサム×岡森諦×マキノノゾミ

聖なる恋はうまくいかない

岡森 俺、ぜひお聞きしてみたいことがあるんですけど(前回「鈴木哲也編」参照)。マキノさんは、思春期の恋愛とオトナの恋愛って、どう違うと思われます?

マキノ そうだなあ……思春期の恋愛は、やたら思いつめるからなあ。

岡森 いや、老いらくの恋も、思いつめて悲惨な結果を招いたりするじゃないですか。

マキノ ああ、そうだよなあ。そう考えると、思春期の恋もオトナの恋も変わらないのかもな。人って「恋愛」にかけちゃそうそう成長しないもんかもね。いくつになっても恋するとダメダメなことをやらかすもんなあ(笑)。

岡森 でもですよ。前回もこの話になったんですけど、若い頃はめちゃくちゃ、ヤリたかったじゃないですか。でも、今はもう哀しいかな、そんなでもないでしょう。これって、恋愛に影響を及ぼしてませんかね。

マキノ (しょんぼり)……及ぼしてるねえ、それは。恋愛へのモチベーションは確実に落ちてるもんな。……うーん、でも、そのへんはいわゆる「恋」ってのとは別物かもよ。だって若い頃でも、自分が恋してる子のことは、あんまり性欲の対象にならなかったりするじゃない。

岡森 あ、それはわかります。一番好きな女の子は、絶対汚しちゃいけないっていう。

マキノ でまた、そういう恋愛は絶対にうまくいかねえんだよなあ、これが(笑)。ま、今ならわかるけど、女の子にしたって、そうやってやたらに神聖化されちゃうのは迷惑なだけなんだろうし。あげくに「あなた、私の幻を愛したの」とかなんとか気持ちよく歌いあげやがるしでさ(笑)。こっちにしてみれば「ふざけんな、幻を見せたのは誰だよ!」ってなもんだけどな(笑)。

岡森 あははははは!

マキノ でもさ、そもそも恋ってのは「うまくゆく恋なんて恋じゃない」ってとこもあるじゃない。このへん、根拠が歌のフレーズばっかだけどさ(笑)。もし下手にうまくいっちゃっても、そこにはたいてい「幻滅」が待ってるわけだし。

岡森 あーー。

――じゃあ、女子はどうしたらいいんでしょうか。

マキノ ま、どうしようもないです(笑)。結局は男子も女子も何となく欠点を許しあえる、波長が合う相手を探すしかないんだって。で、そういう相手とは、最後には出会えるようになってるんだと思うしかない。とにかく、一方的に熱く入れ込んでた相手とは、あんまりうまくいかないもんだよね。

Photo 対談:茅野イサム×岡森諦×マキノノゾミ

第2案もキープでお願いします!

マキノ 芝居やっててさ、グッと来るのはいつも、誰かがやせ我慢してる姿なんだよね。「人間の価値はやせ我慢のしかたで決まる」っていう、つかさんの名言もあるんだけど。恋愛モノでもそういう場面があると泣けると思うな。

岡森 我慢してない人間には、共感しようがないですよね。わんわん泣かれると「いやいやいや……」って引いちゃう。

マキノ そういや『まんてん』ってドラマ書いたときにさ(2002年放送のNHK朝ドラ。宮地真緒、藤井隆ら出演)、照英がやってたヒロインの幼なじみが、彼女を強引に屋久島へ連れ帰ろうとしてフラれる、っていうシーンがあったのね。宇宙飛行士を目指してる満天が一緒に帰らないであろうことは、視聴者にはもう火を見るより明らかなわけ。で、照英はさ、フラれた後に「それでこそ俺の好きじゃった満天じゃ」かなんか見栄張ってさ、ひとりになってから、雨降るゴミ置き場かなんかでうずくまって号泣よ。この回は泣けたぜぇ!

岡森 いいっすねー! (ここへ、稽古終わりの茅野が登場)

マキノ おう。

岡森 台本、もらったよ!

茅野 お、どんな話? 今のところ純愛ものがないから、純愛ものだと嬉しいんですけど。

マキノ え、純愛ないのかよ?

茅野 ええ。どこか歪んだ愛ばっかりです(笑)。なぜか楽しい恋愛よりは、苦しい恋愛が多い。

マキノ ま、恋愛ってなァ基本的に苦しいもんなのよ。

茅野 そうなんですか(笑)。あとは全体的に、女性中心のお話が多いですね。

マキノ お。じゃ、いっそあれにするか? 『HAPPY MAN3 さよなら竜馬』の、竜馬と中岡のシーン。

茅野 おっとぉ……時代劇が来ましたか(笑)。

マキノ これは男同士のキスシーンのある芝居だけど、これも相当泣けるぜ。(と、クライマックスを大いに語る。一同、聞き終えて思わずため息)

茅野 ……僕、覚えてますよ、その芝居。つまり、男同士の堅い「LOVE」ってことですよね。

マキノ そう。そこで竜馬が言うわけよ。「(とあるせりふを口にする)」……って、またいい台詞書くよなあオレ。 一同 (笑)

岡森 いやあしかし……すげえ話聞いちゃったなオイ。

茅野 な。観てえなあ、今の。

マキノ ま、でもそこだけ取り出して上演してもわかんないな、それ。 二人 そうかあ……(無念)。

茅野 いやいや、でも、このホンも相当沁みる!

岡森 だよな。両方、捨てがたいな(笑)。

茅野 マキノさん、今日これいただいて帰りますから、竜馬の方もちょっと、考えておいていただけますか(笑)?

扉座公演『曲がり角の悲劇』
扉座公演『曲がり角の悲劇』(’95年)撮影:宮内勝

マキノノゾミ、愛されてます。

マキノ 『曲がり角の悲劇』(1995年)で初めて扉座で演出させてもらったときは、単身東京の劇団に乗り込んで行くわけだからさ、これはもう「絶対に舐められちゃいかん!」みたいな気分だったわけよ。だからもう、休憩も取らずにひたすら稽古してな(笑)。

茅野 あのときのマキノさんはほんっと凄かった。圧倒されましたよ。今の僕の演出方法は、マキノさんに相当影響されてますもん。あんまり休憩取らないし。

マキノ ま、あれは(ずっと憧れてた)つかさんが稽古中はほとんど休憩取らないらしいって聞いたからなんだけどさ。

茅野 え! マキノスタイルじゃなかったんですか!(一同爆笑)

マキノ 違うよ。だってさ、演出家ってのは役者と違って、他の演出家がどうやって演出してるのかは基本的に知らないもんだよ。

岡森 そりゃそうだ。

マキノ だからあれはマネよ、聞きかじりのつかさんのサルマネ(笑)。

茅野 そうなのかあ……。あのとき一番覚えてるのは、マキノさんが机バン!と叩いて「扉座は、こんなもんかぁぁっ!!!」って。

マキノ ああ、そんなこと言ったかもなあ(笑)。

茅野 それがあまりに強烈で、「演出ってこういうものなんだ!」って思いこんでしまったんですね。だから数年後、初めて若手公演の演出を任されたときには、僕も言いましたもん。「扉座は、こんなもんかぁぁっっ!!!!」って。

岡森 あーあ(笑)。

マキノ アホや(笑)。

茅野 でもマキノさんって、役者をその気にさせてくれるんですよ。見事に騙してくれる。褒められても、ダメを出されても、なんか燃えてしまうんですよね。旅公演の最後、全員宛てにいただいた、マキノさんからのメッセージは忘れられないもん。

マキノ 旅公演の千秋楽なんか、もうダメ出しする必要もないんだけどな。ま、バラシの間やることがなくって、それで役者全員に一言ずつ何か書いたんだよ。

茅野 今日までずっとダメばかり出されてた役者たちに、最後に「お前はこういうところがよかった」っていう“よき出し”を。

マキノ でも、時間切れで全員には書ききれなかったんじゃなかったっけ?

茅野 いや、書いていただきました。それで一番最後、僕に向けて書いてくれた言葉が、今も忘れられない。「もう書く時間がなくなってしまったけど、ひと言だけ言わせてもらう。お前が最高っちゅうことや」。

マキノ あははは、オレもアホや。

岡森 (ドン!と机を叩いて)もらったことないぞ、そんな言葉!(一同爆笑)

――マキノさんは、M.O.P.でも、こういうことを?

マキノ ない。ないないない。ありえない(笑)。

岡森 ……ああ、そうか。俺は、劇団員なんだな(笑)。

マキノ ま、そういうことやな。岡森くん、ウチの劇団では、もはやまったく客演扱い受けてないもんな(笑)。

岡森 ありがとうございます。来年で、M.O.P.出演10周年です(笑)!

 

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