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横内謙介インタビュー
韓国の仁川(インチョン)で開催される第26回全国演劇祭、釜山(プサン)で開催される国際演劇祭に正式招聘され、扉座史上初の海外公演となる『お伽の棺』。
韓国でのオーディションによって選ばれたキム・ナムヒ(異人の女・たず役)を迎えて、扉座の代表作を大胆にリメイク。
稽古も佳境に入り、渡航間近となった4月末、今回の公演について横内謙介に語ってもらった。
取材・文=田中信也 写真=金文光
(この記事は、扉座公認後援会ドアクラブ会報誌「扉座通信」に掲載された記事です。)

稽古風景
『お伽の棺』韓国バージョン
もう11年も前になりますが、僕が早稲田で講師やっていたときの留学生だった金文光(以下ムーニー)君と、今回、舞台美術をお願いしている田盛鐘(以下ジョン)先生が、『三好家の引っ越し』の稽古をしていた時に、稽古場に遊びに来てくれたことがあった。その時に「ソウルで公演できたらいいね。」って言ってたのが、今回、縁あって実現の運びとなりました。
いつかは自分の書いた作品で海外に行ければいいと思っていたけど、劇団で行くということは、また別で、それはもう大変って感じなんですよね。ただ、劇団を27年やってきて、1度も海外公演をやったことがないというのは、残念なことだなとは思っていたから、今回はいいチャンス、縁もあるし、大変だけどやろう、と。
招聘された『お伽の棺』は、扉座で上演するときには伴(美奈子)と杉山(良一)がやると決めていたんですが、この時期、伴が壱組印の名作(『小林秀雄先生来る』)に出演することが決まっていたので、伴が出られない。じゃあどうするか。
伴が演じていた、たず役は異人の設定。いい機会なので、この役は韓国人にやってもらう方向で考えればいいんじゃないか、と、また、せっかくやるんだから、韓国版というのはあるなと思い、韓国でオーディションをやりました。
でも、ここら辺のところまでは、失敗してもいいやぐらいのつもりだったんですが、オーディションをやりに行った結果、80人集まってくれて。
で、その80人というのが、『ナンタ』という韓国でロングランされている舞台の出演者とか、映画作品で主演やっていたという人とか、モデルやってる人とか、韓国の有名劇団の女優さんとかで、その反響にちょっと驚いたんだよね。
かなりレベルが高かった。その中でも1番目立ったキム・ナムヒさんを選んだんですけど、選んでみると、まだ大学生で、外の仕事をやったことがないという本当の新鋭だった。ナムヒに決まったところで、いろんな偶然が必然に変わった感じがあると思いますね。

韓国オーディション風景 左端:キム・ナムヒ
というのは、オーディションの時から、1人存在感が違って、圧倒的だった。正直、ナムヒよりスタイルが良かったり、ナムヒも美人ですが、彼女とは違った韓国人らしい美人も大勢いました。が、そういうことを超えて、独特の存在感を示していたんですね。
オーディションの有り様、そしてナムヒに決めた時、韓国版『お伽の棺』の可能性が大きく広がった気がします。
それで、さあ、やるぞってなった時に、この韓国の北島マヤが考えられない大事件をいくつも起こすのですが、そのことにつきましては、僕のブログに書いてありますので、是非、読んでいただければと思います。たぶん後世の伝説になる事件の数々です。(※注)
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今、稽古も佳境に入ってきてますが、80人のなかで圧倒的だったものを、充分に見せてくれています。全身全霊をかけて役を演じるというか、役そのものになってしまう憑依型というか、深く役に食らいついて、自分の肉体の中に魂を宿していくような「ガラスの仮面」のスタイルです。
僕も岡森も高校時代から、ずっと演劇をやってきているので、大概のことには慣れていますが、今、彼女から目が離せない状態です。毎日驚きながら、そして徐々に出来上がっていく様に感動しながら、新鮮な稽古を体験してます。
将来きっと韓国で一流になる女優のデビュー作が、この『お伽の棺』になります。そのことを誇りに思うし、また、デビューの瞬間を是非、皆さんに見ていただきたいと思っています。一部韓国語での上演ですが、日本ではあえて字幕を出しません。彼女の一挙手一投足を見つめている中に、言葉を超えたものが見えてくる、その演技を体感しに来て欲しいな、という風に心から願っています。
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今回のキャスティング・スタッフについて
伴と杉山には、『お伽の棺』を作り始めたときに、ずっといつまでもやり続けようね、と約束をしてました。今回、色んな事情で、新たにリメイクをすることになったんですが、やっぱり、この名作の名を汚してはいけないって強く思いました。なので、キャスティングにはこだわったつもりです。
犬飼(淳治)は、『ドリル魂』で、自己管理の甘さから途中降板みたいなことになって。ようやく信頼する俳優の1人になってくれ、大切な存在になってきたと思っていた矢先だったんですが、この半年、気持ちを入れ直し、もう1回俳優をやるということに対して自覚的になっている姿を見届けたつもりです。
なので、もう1度チャンスをあげようと思いました。
『お伽の棺』は、再演から裏について、杉山、伴の芝居を見続けてきている。今まで培ってきた精神を継承してくれてるところがあると思っています。それとともに、扉座で生まれて育ってきた俳優が、この名作をどう引き継ぐか。その責任の重さを充分に感じてくれているだろうし、ある意味適役なんじゃないか、というふうに期待してます。
嘉六役の岡森(諦)。今回、初めて劇団で海外に行く、この名作をリメイクするというときに、やっぱり大きなパワーが欲しかった。変な話しですが、僕は一生懸命、岡森に出てくれというお願いをしました。
新たなチャレンジをしていくのに、一緒に芝居を始めた仲間だけれども、新しい血、自分たちの後輩と一緒になって、劇団がもう一つ先に行けるという感じを、共に味わえていることを、面白く感じてます。
みっちゃん(中原三千代)は、3回目のときにお母さんの役で出演してもらいました。ローソクの明かりの中で、妖怪のような母を演じ、最初に観たときに、俺も恐かった(笑)。母の役は1時間半の芝居で、30分経たないうちに消えてしまう役なんですけど、存在感では、ずーっとこの芝居を支配している。母のおぞましさみたいなもの、優しさと執着と恐ろしさを全部体現している、みっちゃんの姿を見て、この役は彼女しかいないと思い、今回も出演してもらっています。
ナムヒがいて、岡森がいて、三千代がいて、犬飼がいる。絶妙のアンサンブルになったんじゃないかな。これはこれで、何らかのかたちで継続していけるような演目になったらいいなと思ってます。

舞台美術をお願いしているジョン先生は、ソウルの大きなミュージカルやオペラなどの舞台美術もやってらっしゃる先生で、今回、ローソクでやるとか、色んな条件があるなか、しかも予算的にもかなり厳しい状況で、ちゃんと作品を読み込んでくれて、面白い発想で舞台美術をデザインしてくれました。そのデザインしてくれたものを、ソウルで作ってもらい、それをバラシて、持って帰って東京に飾るということをやります。
そして、正歌の黄淑京(ファン・スッキョン)先生。正歌は宮廷で歌われる伝統歌で、その第一人者です。僕とほとんど同世代の方ですが、この芝居に力を貸してくれることになりました。韓国では、この方の歌を聞くだけでも価値がある素晴らしい芸術家です。
とっても贅沢なことになってます。是非、この舞台、お見逃しのないように、そして、我々の韓国公演にご声援いただけますようにお願いいたします。
なお、韓国公演の模様は、僕、岡森、それからムーニーが色んな手立てで、実際の公演の模様をブログに逐一アップしていこうと思います。是非、楽しみにしていただきたいと思います。
まだ始まってもいないのに(4月末日現在)、来月の半ばには、終わってしまうのかなと思うだけで、悲しくなるぐらい、ナムヒやムーニーと絆が深くなってきていて、愛おしい作品になってます。おそらく東京に帰ってくる頃には、より気持ちが密になって、いい舞台になっているはずだと思っています。
※注 ナムヒはたずの役作りのために雪山に倒れてみたり、断食したりして、2度ほど入院しました。また、台本を読みながら歩き、錦糸町(稽古場のある場所)の電柱に激突しました。
4月末日扉稽古場にてインタビュー
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