夢の夜

 長く生きていると、良いことがある。
 
 幻冬舎・見城徹さんが、我々の『つか版忠臣蔵』を観て、言って下さった言葉です。
 
 昨夜は、私がつくづくそう思いました。

 幻冬舎様のご支援で実現した、学生無料招待『無謀ナイト』

 無料にもかかわらず、しかも一般チケットは、売るべきチケットがもはやないほど、盛り上がってるのに。
 
 このナイトだけ、イマイチ反応が鈍くて、一時は座席が空いてしまうんじゃないかと心配になるほどでした。
 
 それで知り合いなどに、無理矢理でも芝居を知らない若者を連れてきてくれ。
 と頼んだりしたわけですが、お陰様でぎっしりと学生たちで埋まり、あの頃の つかこうへい事務所 の劇場のようになりました。

 ま、考えたら、私が初めて『熱海殺人事件』を観た時も、先輩がおごってくれて、
 右も左も分からずに、ただ、連れられてかれて観たわけで。

 その誘いがなかったら、その後、芝居と出会うことがあったとしても、そのタイミングは大きくづれていて、いろんなことが違う流れになっていたでしょう。

 若者が芝居を観なくなったと嘆く前に、我らもやらなきゃイカンことがある。

 いろいろ仕事が溜まってるんで、昨夜は六角とのビフォートークだけやったら、劇場に入らず、終演まで内職をしていようかと思っていたのです。

 でも、まあ、芝居の立ち上がりだけ観ようと思って、劇場の片隅に座りました。

 そしたら明らかにいつもと違う反応で、
 鋭くて、大きくて、笑うにしても、カラダが揺れていて
 その反応に、役者がのせられて、挑みかかって
 芝居は熱く熱く、ヒートアップしていった。

 気が付けば、最後まで見届けていました。
 
 私たちの演劇が、今、何かと出会っている という感じが深くしました。

 そして、その途中、とっても不思議な感覚に襲われました。
 35年前、15歳の春、横浜の青少年センターで、
 『熱海殺人事件』を観た、そこにタイムスリップをした感覚です。

 今まで何度か、そんな感じになったことはあります。
 センターでやった『ドリル魂』とか『リボンの騎士』の時とか
 でもそれは同じ場所という、ことも大きくて。

 昨夜のは、完璧な精神の、タイムスリップに近かった。
 
 ふたりのアキラや、武田義晴の、つかセリフを聞くうちに
 ジュリーの『追憶』や『パピヨンのテーマ』の大音量に包まれて、俳優たちの絶叫を風の中の、獣の雄叫びのようにきくうちに
 若者たちの鼓動が、私の鼓動とシンクロして、一体になり、
 私の中の細胞が、三十五年前の 自分の記憶を鮮明に甦らせた、という気がします。

 気が付けば、私は詰め襟を着て、あの時の、客席におりました。

 目の前に、三浦洋一が、平田満が、加藤健一が、井上加奈子がいる、ような気がした。

 あの時、その夜から、眠れなくなった、わけではないんです。
 比べる基準もないから、そんなものなのだと思うしかなかった。
 
 でも、その後、先輩たちと語るうち、雑誌でラジオで、気になり始めた、つかこうへいに、演劇に、触れていくうちに、
 
 なんか胸だか脳だかに、その夜、たった2時間の間に、深く深く刻みつけられた、刻印のようなものが蠢きはじめて
 芝居に、芝居に と吸い寄せられていったのです。

 そしてその刻印は、今も消えず、私のなかにあり続けているのです。

 その刻印が、昨夜、涙を流しました。
 かなりしょーうもない場面で、揺れる客席の中、私は心地よいタイムスリップに酔いながら、特別な涙を流しました。

 やって良かった。そして来てくれてありがとう。
 無料だけど、かけがえのないモノを頂いたのは、実は私たちだったと思います。

 こんな素晴らしい夢が実現出来た、たくさんの出会いに改めて感謝します。
 そして、若者のために「今、若者が読むべき本」をたくさんご提供頂いた、見城さんに、またまたまた感謝致します。
 幸運を射止めて、本を貰った学生諸君、しかと読んで感想文を見城社長に送ってくれ。

 この舞台を、若者に、安くみせてやってくれと言って下さった恩人なんだ。

 岡森諦が、とっても良い昨夜の記念写真を、岡森ブログにアップしてくれています。

 

 
 
 

 

 

 
 
 

 


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