我が師に捧ぐ ④ 紫先生のこと
三代目・猿之助を語る時、その類まれなる芸術的な才能を抜きにしては、まったく的外れなものになる。芸能ゴシップとして、男女関係、家庭争議など、三代目の仕事をよく知らないお茶の間レベルで、歌舞伎俳優としての半生を語っても、それはほぼ無意味で、三代目・猿之助という人物には到底、近付けない。 例えば、藤間...
三代目・猿之助を語る時、その類まれなる芸術的な才能を抜きにしては、まったく的外れなものになる。芸能ゴシップとして、男女関係、家庭争議など、三代目の仕事をよく知らないお茶の間レベルで、歌舞伎俳優としての半生を語っても、それはほぼ無意味で、三代目・猿之助という人物には到底、近付けない。 例えば、藤間...
スーパー歌舞伎の全盛時代。師は東京駅で、置き引きに遭った。大阪公演に向かう途中、さまざま大事な物の入っていたヴィトンのアタッシュケース。見るからにセレブなカバンで、その道のプロに目を付けられたのだろう。ふとした隙に、盗まれてしまった。 たしか報道はされなかったけど。 その時、師はパニックになり、叫...
※この記録は、あくまでも私の個人的な記憶と、感じ方に基づくものです。 格式から言えば、猿之助という名は、父が名乗り弟さんが継いだ、市川段四郎の名より下なのだそうだ。 でも、師は、祖父である二代目猿之助を敬愛し、その名に憧れていたという。 いつだったか、軽井沢にあった資料倉庫を案内して貰った。そこには...