落ち着け、大丈夫だ、と犬がいう
失踪願望に追いかけられつつも、やるべきことに向かうのである。
だが、ノイローゼが急に治まるはずもなく、発作的に ぐわーーーー と叫んでみたりもする。
言葉の綾ではなく、本当に叫んでしまう。
特に、パソコンとかが、言うこと聞かなくなりふいに固まったりした時。
それもほんのちょっとのことで。
私はカナ入力しか出来ないのに、なぜか変換しても、何しても、ローマ字入力モードから戻らなくなったり。
こういう時は、マジにぶち切れます。
ぐあああああああっっっっっっ、と叫びます。
前にも書いたけど、PCを叩き壊したくなる。窓から外に投げ捨てたくなる。
対人間では、もっと酷い仕打ち受けることもあるけど、そこまでの衝動はなかなか起きないのに。
なぜだが、機械に対してはとても了見が狭い男だ。
だが諸君、そうやって叫ぶと、我が家では何が起きると思う。
犬たちがサーッと駆けつけてきて、私の膝上に一斉に飛び乗り、
口元をナメ始めるのである。
誰に命じられるわけでもなく、向こうからサーッと飛んでくる。
んで、我先にペロペロペロペロとする。
物の本によれば
犬社会では、組織の中の誰かが興奮すると、落ち着け落ち着けと宥める習慣があるのだそうな。
口元を嘗めるのは、宥めの儀なんだとか。
つまり
父犬モー、母犬ポー、娘犬ミーたちは
時ならぬ叫びを聞いて、
トウチャン(あたしのこと)、どうした、落ち着け、いっかい落ち着けと、一斉に宥めに来るのである。
それは、私がすっかり犬チームの一員扱いになっているということでもあるが
ともあれ
3匹によってたかって嘗められては、弱い。
分かった分かった、すまんすまん と言うしかない。
こんな家の中の狭い書斎で、私は犬たちに、自分が社会の一員であり、秩序を守ることの大切さを教えられるのである。
こないだは、ぺろぺろのあとミーが、じっと私の目を見て
辛いのは、あなただけじゃないんだよ。ほら深呼吸して、ダイジョウブだよ。
と呟いた。
そしてヒラリと机に飛び乗り、前足でカタカタとキーボードを叩き
カナ入力にモードを換えてくれた。
そして
がんばれ、と一太郎に書き込んで、水飲みに行った。
追伸
私は正気です……