水下きよし という役者
花組芝居 の幹部俳優 水下きよし氏が亡くなった。
秋に『バイトショウ』に来てくれて、ニコニコ笑ってたのに。すでに闘病中だったのだそうな。
そんなこと知らないから、またね、と言って別れたのに。
もっといろいろ話しとけばよかった。
昔のこと、未来のこと。
劇団系俳優の鑑であった。
まず集団。
自分が目立つとか、売れるとかではなく、仲間たちと面白い作品を作ること。
小劇場時代には、名指しで脚光も浴びたけど、浮かれてなかった。
花組忠臣蔵の、天野屋利平 だったか、水ヤンがやったのを観たけど、
ぴったりだったな。
損得抜きの、正義感。
下品なヤツがやったら、台無しだった。
品があるんだ、大きくて邪心がない。
劇団活動のない時は、自分で集団を組織して、大勢の人の和を作った。
誰も知らないような、私の古い作品を、熱烈に支持してくれて、自腹で上演してくれたりした。
演出してね。
もっともっといろんなことが出来たのに。
花組と扉座の合同公演とか、いつかやろうと言ってたのに。
出会ってたぶん30年。
そもそもはある縁で、うちの劇団、当時の名は『善人会議』に出演したんだ。
その時、同じく客演してた、加納幸和氏に心酔して、
その後すぐに時が来た、加納さんの劇団の旗揚げに参加した。
以来、加納一家、一の子分となった。
がん が見つかって
転移も発見されて
それでも、出来る限りやるんだって
稽古場に、劇場に通い続けたんだってよ。
そん時に、うちにも来てくれたんだな。
まったく青春の重なる、芝居仲間。
こういう人が消えるのは、ずしんと応える。
消えちゃいないけどな。
しばし会ってないだけ。
あいつは今も、どっかで、稽古してる。芝居してる。
そう思うことにする。
そのうち、ふらりと見に来てくれるだろう、
目先の忙しさに紛れ
不義理はお互い様でな、と。
そして、いつかの再会を待つことにする。