感謝 鼻血で行こう

 NAOTORA 最終稽古からの『フレンド』千秋楽。

 千秋楽、さらに熱く熱くなっていた。
 遠藤要は、話半ばで、流血。

 共演者のパンチがあたったワケではない。熱演しすぎで、鼻血が自然、暴発。
 
 実は本番前に楽屋で、出血があった。コレで最後だと思って、全力使い切ってやるぜぇと、楽屋で、行くぞー行くぞー、うおおおおおおおおおおおおおおお、と気合いを入れていたら、鼻血が出たらしい。
 
 子供かよ、と。

 その時は、ひと騒ぎして、笑い合っていたが、本番でも出た。
 オレの詩集がなぜ出ないのだと、と理不尽に友人たちにあたるシーン。
 言い負かされて、泣くときに、涙とともに、鼻血。

 毎回、この時、要氏は、顔を真っ赤にして、リアルな暴発はしてたけど、
 にしても、こんな鼻血の出し方をする成人男子を初めて見た。
 外的刺激でなく、内的衝動の、鼻血。
 前の方のお客さんなんかは、さぞ退かれたことだろうと思うけど、ある意味スゴイ。長く演劇やってきたけど、こんなのを観たのは私も初めてである。

 そんなことはありつつも、共演者たちは結構冷静に対処し、芝居は進行。
 特に、座長の増田君が、なーんにも動じずに、そんな要を暖かく包む。

 大丈夫ですよ、というセリフがあるんだけど

 その前に、血まみれ、だよ。
 とツッコミたい状況、それでも、増田君が、大丈夫と言えば、大丈夫なのかもしれないと、そんな気分になっていた。

 にしても、要がいつも以上のパワー全開で暴れても、きちんと押さえつける。
 プロレスラーみたいなチカラだと思うけど、増田君もかなり鍛えていて、そこに対処できるんだから、驚く。 
  要は、それ以降も出血は続いたみたいだけど、鼻血を奥から啜りつつ、外に漏らさず、けれどそれ以上に、パワーアップして、演じ抜いた。

 要氏に限らず、他のメンバーも同じく、限界まで振り切ってやっていた。
 声枯らすな、怪我するな、舞台は毎日やるんだから。
 と学校の先生みたいに、ブレーキ係をやってきた。でも、ここから大阪公演までしばし空くので、もう倒れてもいいと、皆々、感情の高ぶりのままにやった。
 
 芝居として、それでいいかどうかは、ともかく。大人としてはただただハラハラさせられるけど。

 若い彼らの、今のギリギリがそこには確かにあり、なんだか一つの通過儀礼を観ているようで、舞台が聖なる一回性に、さらに輝く時であったと、
 これはもう自分が作者であることも演出家であることも忘れて、魅入ってしまった。

 終演後は役者だけで、打ち上げを。
 まだ公演が残っているから、完全な終わりじゃないけど、漂う寂しさと、疲労感。
 でも、沈黙の中に、ある充実感。

 お客さんから寄せられるメッセージが、暖かいものばかりで、よかった。多くの方に喜んでいた頂いたと実感があるから、黙っても、しみじみ出来る。

 ジャニーズファンのみならず、いろんな立場の観客、ゲストからも、好意的な励ましを頂いた。
 演劇らしい演劇をやって、拍手を頂き、喜ばれたことが、我々はとても嬉しい。
 アイドルがいなくても、フツーに上演可能な作品で、それを増田クンという、人気アイドルの座長がやることで、いろんな化学変化が起きて、青色タイオードーの発見につながり、誰も観たことのない光を放った。みたいな感じ。

 そもそも、コレ、増田クンのために書き下ろしたワケで。増田クンを思わなければ、このテーマも作品も、生まれなかったのである。
 そして観客の皆さんのチカラ。
 演劇の観客が少なくなっているんじゃないかと、演劇人たちが憂えている。
 それは、やる側にもおおいに問題はある。もっと面白いことやらなきゃ、演劇は冷え込むばかり。
 でも一方で、そもそも芝居を観たことがない、劇場に行ったことがないという人も多くて、ミュージカルはあっても、セリフ劇になると、子供の頃、学校で観て以来なんていう人がほとんどだったりして。
 熱い状況がなかなか生まれないのである。

 でも、このグローブ座は、熱く熱く人いきれで埋まっていた。
 今夜此処での一と殷盛り、ひと、どころか31の大殷盛り。

 我ながら、まじめで地味なセリフ劇なんだけど、それをこれだけの熱量で観て頂いたら、劇場は燃える。時間が、空間がゆがんで、一瞬が永遠になる。
 これは、どんな傑作がそこにあっても、名優がやっても、良き観客たちがそれを受け止めてくれない限り生まれない、劇的なシーンであって
 この公演では、久しぶりにそういう喜びを堪能させて頂いた。

 そして演劇の可能性、未来を、信じさせて貰った。
 エンゲキは大丈夫。
 今、私には皆さんから頂いたエネルギーが充満しています。

 まだ大阪があるけれど、東京公演に集まってくださった皆さん、あついご声援を奥手くださった皆さん、どうもありがとうございました。

 願わくば、この熱気が、ずっと続き、他の劇場にもどんどん広がり、
 芝居を観る人、やる人が、もっともっと増えていきますように。

 また劇場でお会いできることを楽しみにしています。

 しばし劇団活動に没頭します。扉座もよろしく!
 こっちも、鼻血 でいこう。

 
 




 
 
 
 

  
  

 
  
  
  




















関連記事

この記事のハッシュタグに関連する記事が見つかりませんでした。

アーカイブ