あけましておめでとうございます

2026年 七月八月上演の、スーパー歌舞伎の新作創りに参加します。

宮崎駿監督の作品『もののけ姫』のスーパー歌舞伎化です。

すでに市川團子さんと中村壱太郎さんの出演が発表されています。

三代目、四代目ふたりの猿之助さんに続いて、今回は、團子さん。
足かけ約35年。三人の澤瀉屋と、スーパー歌舞伎創りをすることになりました。
しかもかの宮崎監督が全身全霊を賭けて生み出された傑作の、スーパー歌舞伎化です。
光栄であると同時に、責任の重さを噛み締めています。
宮崎ファンに対しても、歌舞伎ファンに対しても。

特に團子さんは3月に大学卒業の22歳。
ふたりの天才猿之助も、この歳でスーパー歌舞伎の座頭はやっていません。
これは彼にとっても、私たち周りの関係者にとっても非常に大きなチャレンジです。

この若く美しい才能をしっかり支え、スーパー歌舞伎を未来に繋いでゆくべく、成功させなくてはならないと肝に銘じています。
私の知る限りのモノ、三代目と四代目から学んだすべてのモノを團子さんに伝えていきます。

まさにその、未来に繋ぐ、という意味でもうひとつ。
もはや祈りに近いものですが、私の中で未だ消し去ることが出来ないのは四代目への思いです。
四代目は今も、反省と償いの日々を静かに送っています。
残念ながら今回のチャレンジに四代目が加わることはありません。

未だその時は来ない。

そんななかで私は、あの出来事以来、時折、四代目とお会いして話したりする機会を持ってきました。

語るのは今も変わらず芝居の事です。
この六月に上演した「北斎ばあさん」では、モノが時代劇でもありましたので、私からもいろいろ質問したりして、アドバイスを貰いました。

その役柄なら下駄ばきが良いですよ、とか。より江戸らしい言い回しはこう、とか。
変わらず博識にして的確で、出来れば知恵袋として、稽古場にいて欲しいと思いました。

この夏からは、最も歳若い弟子の 市川猿 を扉座研究所でしばし預かることにしました。
スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース のチビチョッパー役を演じて話題になりました。
私が子役だった大智と出会ったのは、確か新歌舞伎座での『新水滸伝』の舞台。
新々というストーリーの大事な役を担う、難民のチビ助の役です。その時から天才少年と言われていました。

今や、十九歳。

師匠の活動停止以降も稽古だけは続けていましたが、師匠不在の歌舞伎の舞台にはなかなか意欲が湧かないと言う話だったので、
だったら、この機に、思い切って国内留学し、扉座にいる同世代の若者たちと汗を流して、今までやってこなかった現代劇の演技やダンス、歌などを体験してみないかと、
四代目とも相談し、扉座研究所に入所させました。

今月紀伊國屋ホールでやった「つか版忠臣蔵」では、代々、研究生有志が担当する照明操作も体験しました。
動く役者を追って光を当てる、スポット係です。
ひと公演照明室から芝居を追った、なんて、こんな体験を持つ、歌舞伎俳優はいないでしょう。
一方で、その合間に、着物の着付けや、時代的な所作の指導もしてくれて、さすが歌舞伎俳優の一面もみせておりました。

今ではすっかり研究生たちに馴染んで、2026年の2月に すみだパークシアターで行う、研究生たちの公演

「リボンの騎士 県立鷲尾高校演劇部奮闘記」

での、主役の応援団の高校生、親弘役と、フランツチャーミング王子役、日替わり二役の稽古に励んでいます。
本名の、日下部大智 の名で出演します。
今風のダンスシーンでは、手足の動きは綺麗だけど、洋楽のビートに乗れず、その手足が絡まっちゃって、悪戦苦闘しつつ。

歌舞伎的な要素は全くありません。
けれど、彼が歌舞伎俳優として成長するのに、この日々は必ずや良い経験になると思います。
素晴らしいものだけど歌舞伎は狭い世界だから、芝居を志す同世代の若者たちが今どんな思いで、どんなふうにして自分の道を掴もうとしているか、それを知ることも貴重な学びです。
現代の言葉で書かれた戯曲の読み取り、セリフの解釈とか。決まった型のない自由な発想から始まる表現、歌舞伎ではやらないことのすべての体験がいつか必ず役に立つ。

猿は、やがて歌舞伎に帰るために、それも役者としても人としても一回り大きくなり、逞しくなって大歌舞伎、おもだか歌舞伎、スーパー歌舞伎に戻るために、今この修行をやっています。
これも復活への道のりです。

その先には、師匠の復活も必ずあると信じて。

四代目の活動再開、復帰については、いかなる展望があり、この先スケジュールがどう立てられていくのか、或いはその日はもう来ないのか、私は全く知りません。

ただ、彼の復活を信じて待つ私や仲間たちは、この人の芝居への情熱とその高い能力がこのまま消えていくようなことがないように、と心から願っています。

もちろん、その願いが簡単に叶うものとは思っていません。
罪の償いはこの後もずっと続くでしょう。
ご迷惑、ご心配をおかけした多くの人から、お赦しを得るには、まだ乗り越えなきゃいけない壁もたくさんあるでしょう。
芝居というのは、お客様に楽しんで頂くものですから。
元通りは、とても遠い道程。

しかし被害者というなら、この私も一気にいくつか仕事が消えてしまった立場であるわけです。それでも私には恨みなど一かけらもありません。ただただ、彼の才能がいつかまた発揮されて、人を楽しませる日がやってくることを願うばかりです。

不幸にして亡くなられたご両親だって、それを願っているに違いないと、私は思います。私は段四郎さんご夫妻とも何度もお会いしていますから、解ります。あの穏やかで優しい方たちは、きっと祈る気持ちで見守っておられるはずです。

だから、
今回のスーパー歌舞伎も、私は単に、四代目の時代が終わって、次の代に替わるのだなんていう風には思っていません。
連綿と続いてゆく、おもだか伝説の、これは重要な一幕なのだと思っています。
三代目四代目と引き継がれ、進化してきた、スーパー歌舞伎 を何としても未来に繋ぎたい。そして、これまで多くの人が心血を注いで築き上げてきた、この宝をこの時代にも輝かせ、
やがて スーパー歌舞伎Ⅱ も復活したり、また新しいモノが創られてゆくような状況を死守する、そのために力を尽くそうと本気で思っています。
微力ながら、仲間たちと、それを目指していきます。

今回、若き團子さんが、並々ならぬ決意と、強い意志で『もののけ姫』に向かってくれていることが、更に希望を与えてくれます。

我々の もののけ姫 が、ご来場の皆様に喜んで頂くのと同時に、
スーパー歌舞伎はやっぱりすごい、もっと続けて欲しい、また観たい、と言って頂くことが、未来への道です。

もしかしたら新たな スーパー歌舞伎 が創られることで、一つの時代の終わりを感じて寂しく思われている方々もいらっしゃるかもしれない。
でも信じてください。

いつかすべてが一繋ぎになる日が来ることを。

これはまだ長い長い旅の途中。

皆様にとって2026年が良き日々になりますように。そしてそしてスーパー歌舞伎もですが、
扉座もすっげー頑張ります!
ご声援よろしくお願い申し上げます。


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