伝説の第2スタジオ
日曜日、オーディション2日目を無事終える。
いろんな経歴の人々が、いろんな動機で、いろんな希望を抱いて、やって来る。
その雑多さを楽しませてもらう。
特に年齢制限撤廃、青天井システム2年目である。
三十歳以上で入れる研究所なんて、ここだけなんです、と三十歳以上の参加者達は訴えていた。
そうなのだろうなあ。
かく言う私も、ついこないだまで、三十過ぎの研究生なんて想像もつかなかったもんなあ。
しかし、演劇は若者達だけのものじゃない。
誰だって、いつだって、やれるものだ。
そういう考えを自然に持つようになったのは、ここ数年、いろんな地方で市民劇なんかやるようになってからだろう。
どんな街にもいる、隠れた実力者達。
若い時、勇気がなかったり、余裕がなかったりして、存分にチカラを発揮する機会を得られなかった人たち。
その人たちの中に、今もくすぶり続ける、情熱。
それは東京の演劇シーンだけで生きていると、見えてこない、本来演劇が持っているはずの、多様性と可能性でもある。
それぞれに大事な仕事や役目を抱えている。それが大人だ。正直言って、演劇なんかやってる場合じゃないかも知れない。周りも呆れたりするだろう。
でもだからこそ、若者にはない説得力があったりする。若いときには見せられなかった何かを演じるチカラが知らぬ間に宿っていたりする……
なに、たった1年のことだ。
気が済むまでやって、それでダメなら納得出来るだろう。
遅れてきた初チャレンジ。もしくは再チャレンジ。
そういうことが人生にあってもいい。
だから我々としても、本気で年齢のことは考慮せずに、選抜をすることにした。
オーディションを終えて、2年目に残った5人の祝賀会。明日からは更に過酷な2年目の奴隷生活に入る。
その前に、束の間の安らぎである。
で、本日からはいよいよ『トラオ』稽古も本格的に。
途中、私は稽古を抜けて、すみだパークの社長さんに今回の公演のご挨拶に。
今回、東京公演は、我々の稽古場がある、すみだパークの中の第2スタジオをお借りする。
このスタジオ、実は12年前、今や伝説となっている扉座特別公演『夢の海賊』を上演した場所である。
あの時は、倉庫を劇場として使うという冒険を実現させるために、
社長とともにアレコレと悩み、アチコチと闘い、さまざまな困難を乗り越えて、上演を実現させたのだった。
社長にとっては、たぶんしなくても良い苦労だったのだけど、面白がりながら、我が儘な我々と芝居創りに励んで下さった。
今も、あの時のことを語り出すと、お互いに話が尽きない。
社長とすみだパークの皆さんのご協力を得て、今回、またあの懐かしい場所で公演が出来ることになった。
小学校の体育館で、上演可能な芝居を創る。
それが『トラオ』の課題である。
第2スタジオは、正直に言えば体育館よりちょっとカッコ良すぎる。
でも、我々にとっての聖地のひとつである、この場所で、やれることはこの作品にとって、幸せなことであろう。
ちなみに今回の出演者で、『夢の海賊』に出ている者はひとりもいない。彼らにとっても伝説なのだ。
そしてここで幕を開けて次は、これまた我々の聖地厚木市文化会館での上演。
こちらは文化会館の中庭に特設舞台を組んでやる。
扉座が野外で芝居をヤルのはまったく初めてのことだ。
第2スタジオとは全然違うものになるだろう。
こちらはこちらで、市民応援団の方々の協力など得て、公演そのものを「お祭り」のようにしようと企んでいる。
そんな『トラオ』のチケットが発売になりました。
公演回数が極めて少ないので、もしかしたら、早く予定数が一杯になってしまうかもしれません。
お早めにご予約を!
そしてお願い。
出来れば、子供を連れてきて!