HAKANA 初日とか
昨夜は、明治座の HAKANA の初日であった。
昼間は錦糸町で お伽の棺 の稽古をやり、初日にやっと駆けつけた。
ナムヒとムーニィも、ご招待。
ムーニィには、これも韓国語に翻訳してもらって、韓国のどこかで上演してもらえるようにしてもらおうと思っている。
そんな訳で、今回はほとんどイチ観客として、劇場の椅子に座った私であった。
で、藤本美貴さんの儚と、大口兼吾さんの鈴次郎と。
藤本さんは、もう何のてらいもなく、ひたすらに体当たり。その潔さが、見事である。
一幕が終わったところで、某演劇雑誌の編集者が、すがすがしく好感が持てると、わざわざ私に報告にしきてくれた。
儚って役は、猥褻なことしたり、下品な言葉叫んだりして、結構たいへんな役で、
ちょっと油断すると、際物っぽくなってしまうんだけど、そして実際、今回もマスコミ的には、そういうふうに宣伝されるわけだが、
体当たりでやりつつ、それを清潔に見せる、ていうのは、天性の品位が必要だと思う。
ミキティは別に正統派、清純美人なんかじゃないはずだけど、
何というか、飛び抜けた愛嬌があるんだな。
鈴次郎に子犬のようにじゃれつく姿なんか、
汚れない赤子の魂、が無邪気に遊ぶ姿そのもので、
それは演技という技術で成立するものじゃないなあと、しみじみ思った。
これで経験と技術が備われば、スゴイ女優さんになるんじゃない。
とこれは、この夜、演出家とプロデューサーとで行ったお疲れ会で、皆の意見が一致したことである。
それは裏返せば、技術もなくて、明治座なんか立っていいのか、てことでもあるんだけどさ。
23歳だよ。
舞台俳優は十年やらなきゃ、舞台で通じる声もできあがりません。
まだ未熟な、けれど今輝いている姿を、愛でるか否か、
つまりはそこが分かれ道だな。
しかし、上手く達者な芸だけ見せろというなら、こんな企画やっちゃダメなんだよ。
今までの劇場の客じゃない、新しいお客をここに呼んで、何かを見せる、その志でやるんだろ。
64歳の杉田監督の言葉に重みがあった。
あと大口君も、とてもよくやっていると、これも一致の意見。
大きな明治座に、負けない大きな存在感。
声もよく出るし、色気もある。
舞台の板にちゃんと乗ってる。
当たり前のようで、これが難しいんだからね。
ふにゃけたイケメンがやたらに多い昨今、これはわれら口うるさいオッサンたちも納得の、良い男である。
そんな若い二人の、一途なガチンコの間に立つ、
ホリヒロシ操る、大人で妖艶で残酷なサイコロ姫。
ミキティが、可憐な娘である分、その色気が際立って、ゾッとする美しさであった。
あと片岡サチさんとレイザーラモンHGさんに、昨日は特別に拍手を。
出しゃばらず、しかし締めるところはキチンと締める、サチさんの上品な芝居。
芝居を知ってる人だなあと、嬉しくなる。
HG氏は初めての演劇らしいけど、
これまた、真摯に、人の良い赤鬼を演じている。
でも誰よりも人間くさい、鬼の人情が豊かに漂っていた。
にしても、
やっぱり高木が、せりふを言うたび、ドキドキする。
新原が、キャラメルボックスの新鋭・多田クンと、ミキティを乗せたかごを担いでヨタヨタ歩く姿にも、ハラハラする。
でも、みんな良い経験させてもらってる。
明治座には珍しいチャレンジングな公演だと思うけど、そんな試みに参加させて頂いて、
プロの仕事に触れさせて頂いているのだから。
それも、ちゃんと仕事を与えて頂いて。
短いけど、
少しでも多くのことを吸収せい、と。
言ってやりたい。
ふつうは商業演劇なんか出ると、芝居に幻滅することの方が多いモノなんだがね。
うちのメンバーは幸せである。
これは断言できる。
たまたま演劇記者の集まる日で、ここぞとばかりにナムヒのプロモーションをして回った。
思えば、ナムヒとムーニィ、来日して、初めて錦糸町以外へのお出かけであった。