近藤正臣さん
今日は、サツキマスの衣裳合わせと稽古。その後、乱童 のスタッフと再演に向けての打ち合わせ。
慌ただしい日々である。
でも、目下は サツキマスに夢中になっている。
岡森クンも、今日で舞台が終わり、ようやく本格的にこちらに参加できる。
今日も、千秋楽なのに、打ち上げは遅れて参加するからと、終演後、稽古に来た。
今回は、近藤さんとの絡みが多いので、気が抜けず大変ではある。
その近藤さんと、話してて、気づいた。
今回の役は、うんと要約すると、後輩たちを見守る、田舎町の釣り好きのオッサンである。
もちろん、その中で大切な役割を果たすんだけど、今までの近藤正臣のイメージからすれば、
ラブシーンもないし、殺しも殺されもしない、いわゆる等身大の役柄である。
そもそもご自身の趣味が釣りなので、衣裳、小道具なども、ほぼ自前の持ち込みで、やって頂くことになっている。
こんなことはたぶん前代未聞であろう。
まあ、テレビなどでは、近年は、下町のオヤジなども演じてらっしゃるが、
舞台ではまだまだ、青年役を演じておられるのである。
大御所女優さま方の、恋のお相手役として。
そうやな、舞台で 恋のひとつもせんような役なんか、初めてちゃうか。
初めてというのは大袈裟であろうが、まあ、珍しいものであることは確かである。
ただ、今日も稽古していて思ったのであるが、その特に何をするわけでもない、さりげない田舎のオッサンが、
カッコいいのである。
世の中には
二枚目から、抜け出せず、苦労する俳優は数多い。
でも、当然のこと、人は皆、歳をとるわけで、
フォーエバーヤングというのは、不可能なのである。
だから、そんな不可能を目指すより、いかに歳を重ねて、それを良い見せ物にしてゆくか。
ステキに見せるか。
それを追求した方が、俳優の命は延びるし、そこにまた傑作も生まれる。
清水邦夫さんの作品に タンゴ、冬の終わりに というのがある。
蜷川さんの演出で、ロンドンでも上演された。
老醜を晒すことにおびえた、二枚目舞台俳優が故郷の新潟にある閉鎖された映画館に籠もって、狂っていくという話だ。
ただ、この時、イギリス人から、多くの疑問があがったという。
俳優が年老いて、自滅していくということに恐怖する、というその美意識が理解できないのだという。
歳を重ねて、俺もいよいよリア王が出来るぞ、と、なぜこの主人公は思わないのだ、と言うわけだ。
今回の、近藤さんを見ていて、私もそう思う。
歳を重ねることで、滲み出る、色気もある。
そりゃ、キムタクより美しかったという、天下の美男子、近藤正臣の幻影を追い続けるファンからすれば、
白髪で、田舎釣り師姿で、岐阜弁を語る、怪しいオッサンの有様は、
嬉しいモノではないかもしれないが
その代わり、
俳優、近藤正臣 の新境地に、立ち会えるその喜びは、同時代を生きてきて、
一人の俳優を追い続けてきたからこそ、出会うことの出来る至福の時なのではなかろうか。
怪人二十面相 は、世間が思う、いかにも近藤正臣 というイメージを拝借した、狙いのある企画であった。
今回は、それとはちょっと違う
大スターとしてではない、
ベテラン俳優の、生き様を含めた、自然体を見せて頂いている。
きっと良い感じになると思う。
大いに期待して欲しいし
多くの方に、見て頂きたい。
近藤さんが舞台で、
