あつぎ文化芸術特別大使

 本日、私は あつぎ文化芸術特別大使、というのに、就任したのである。

 厚木市役所の玄関で、岡森諦、六角精児両人を立会人として、厚木市長から正式に委嘱された。

 かくなる上は。厚木市の文化芸術のためますます、尽力していきたい。
 
 それはともかく、その式のため、朝、小田急の新宿駅でロマンスカーに乗ろうとしていた私であった。
 まあ、お茶でも買ってと、うろうろしていたら、突然柱の陰から、人が飛び出してきて、私に体当たりした。
 出発間際の急行電車に、駆け込もうとしていたらしい。

 女性であった。若いけど、老けて見えた。
 それが、思いっきりの体当たりで、私は吹っ飛びそうになった。
 向こうも、ぐわ、とか言っていたが
 こっちは、イテーえ、であった。

 胸の辺りに、向こうの顔が直撃して、息が止まりそうになっていた。

 明らかに向こうに非がある。
 だって、駆け込み乗車は、おやめ下さいって、アナウンスしてるだろう。

 なのに、女は、こっちを、心なしかにらみつけ、そのまま謝りもせずに、駆けだしていった。

 そんなことするヤツは、もちろんのこと、美人ではない。
 
 そもそも、こういう衝突系の、出会いが、何かステキなことに発展するのは、マンガの中だけなのは言うまでもない。

 それどころか、現実はもっと厳しい。 

 その直後、私は、悲鳴を上げた。

 先に述べた事情で、私はちょっとキレイめのジャケットなんか、着用していたのであるが

 なんと、その前面、右胸の辺りに

 女の顔の隈取りが、くっきりと残されているのであった。

 衝突の衝撃で、女の顔に塗られていた化粧が、すべてこっちに乗り移っていたのであった。

 にしても
 こんなにくっきりと人の顔が移るものか。
 少なくとも、キリストの遺体を包んでいたと伝えられる、布の影より、はっきりと人の顔と判別できるものであった。

 女
 白塗りしてたのかよぉ。

 そんで もー

 かんべんしてくれよう。

 と泣きそうになった。
 これから、アタシは文化芸術特別大使になりに行くのに、

 何で
 あんたの顔を、胸元に、べったり貼り付けて、行かなきゃいけねえんだよ。

 急いで、おしぼりウェッティー を買って、
 本厚木まで、私はずーっと、ジャケットをトントントントンと叩き続けるハメになったのだった。

 まあ

 あの女と衝突の衝撃で、中味が、入れ替わらなかったのが、不幸中の幸いであった。


 式の後、
 文化会館に行って、舞台稽古を。

 金井大道具製作の、居酒屋セットが、限りなく、新橋演舞場チックで、趣深い。

 そのまま、松竹新喜劇とか、やれそうである。

 そこで

 扉座新喜劇 を我らは、やる。

 文化芸術特別大使就任記念公演なので、そこんとこヨロシク。


 


 

 
 

 


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