朝のこと
首斬り役人 の話 ということで、ホラーチックな印象を
お持ちかもですが
もっと冷静にして、複雑な物語です。
そもそも、原作のなかの、主人公・山田朝右衛門 という人からして、
首斬りを生業としていながら、死刑廃止論者という
かなり不思議な人です。
江戸時代のことなので、廃止論と言っても、今の政治的なニュアンスとは違う、
もっと、人の情け に触れる部分での、考えではありますが。
で
斬る側の 屈託と、斬られる側の つまり死刑にされるような重罪人たちの、宿命や悲しみ、みたいなものが。
交錯して、
生と死とか、悪と正義とか そういうモノが自然に垣間見えてくる、
という物語なのですね。
一口に 人情話 といっては、ミもフタもなくなるので、そんなに単純化は出来ませんが、
ひとの 情けの 物語です。
つまり 心 ね。
私、戯曲というものを書き続けてきて、はや三十年以上が経つわけですが、
何年かに一度、ローテーションのように巡ってくる、
重大テーマのひとつなワケです。
だからまあ、軽いエンターテイメントではありません。
しかし、たとえば遠方からわざわざ来て下さるとか、師走の忙しいなか、スケジュールを強引に空けて下さるとか、
そういう方々に、貴重なお時間とチケット代をお払い頂く分だけの しかとした見応えを、お約束したいと考えております。
出来れば、見たという感じが、年を越してしまう程度のインパクトを。
最近、どこかの雑誌に書かれた記事で
原作の 小池一夫先生が、ご自身で一作を選ぶなら、首斬り朝 であると、仰っていたようです。
かつて編集者だったという方もお話ししておられました。
子連れ狼 などはハリウッド的なエンタテイメントだけど、この 首斬り朝 は
フランス映画っぽいんだな、と。
漠然とした言い回しながら、何となく、分かる気がします。
そして、そんなテイストを、この舞台では何とか醸し出せないモノかと、思っています。
そのためには、演出も演技も、ここでまた一皮剥かなくてはなりませんが
創立30年を迎えて、尚、次のステップに進もうとするのは、なかなか偉いんじゃないかと、
自分で自分を励ましています。
これから、稽古の様子など、ちょくちょくお知らせします。
興味を持って頂けたら、幸せです。
あと
厚木の初日には、小池先生に、来て頂いて、かるくアフタートークなどやらせて頂きます。
初日のあと、いきなり先生とお話しするなんて、ちょっとハードではあるのですが
小池先生の、ナマのお話が聞けるなんて、滅多にあることではありません。
劇画マニアの方など、お近くにおられましたら、
ぜひ、教えてあげて下さい。
