お誕生日に

 今月の22日は、わしの、50歳のお誕生日なのに、どうして公演が、最も盛り上がってないのか

 と、チケット表を観て、ひとりごちた話は昨日書いた。

 誕生日なんかもういらん、もはやナンも目出度くない、それは人間ドックの日だ、と常々言っておきながら、大いなる矛盾である。

 が今年は大事な公演中なので人間ドックは来月回しにしてあるし、なにせ、満五十歳、半世紀ですよ。
 去年まで、39歳と言っていたが、実のところ今年五十なのである。
 分かってたと思うけど。

 子供の時、五十歳のオッサンなんか、もう人生終わり間際に見えていたことを考えると、愕然とする。
 が、50なんである。

 六十歳より分かりやすい区切りだ。

 特別なお祝いなんかいらないけど、せめて一所懸命創ったお芝居の公演ぐらい、盛り上がって欲しいじゃないか。
 お誕生日に。

 と稽古場の片隅で、すねていたのだ。

 もっともしおれていたのは、つかの間で、やがて、それはむくむくと怒りに替わり、扉座は今すぐ集合と怒鳴りつけたものよ。
 それぞれ歌や踊りの稽古とかしててたけど、緊急停止でやめさせて。

 汝ら扉座国の者たち、もしここがピョンヤンだったら、わしがジョンイルだったら、どうなると思ってるんだ、と説教したのである。
 あの国の体制はどうかと思うが、民が将軍様を支えるそのパワーの5パーセントぐらい、我が国にも欲しいじゃないか。
 ちなみに数字の根拠は、今の消費税だけど。

 扉座座員は、泣いて謝罪したものよ。
 わたしが怒ると、とりあえず悲しげにするのは、皆、上手である。
 たまに涙なんかも、流したりする。


 一番若い、松本亮は ここで腹を斬ってお詫びしますと、果物ナイフを握りしめた。

 それは元劇団員の、心優しき、柳瀬亮輔が必死に止めたが。
 さすがにまだ修練が足りず、衝動とアクションの連携が弱くてリアリティに大きく欠けてたな。
 伴が眉をひそめたのが、はっきり見えた。この人は稽古などでも、若手がまずい芝居をすると、嫌悪感が顔に出てしまう。下手な芝居が生理的に嫌いなのだ。
 アレコレ、説教したりしない分、かえって怖い。
 

 それはともかく。
 
 たちまち、稽古場は騒然としたわけだ。
 その様子を見ていた、他の出演者たちが見かねて、その日は、みんなで特別の日にしましょうと、申し出てくれた。

 で、今、いろいろ支度をしてくれている。
 ゲストにまで迷惑をかけてしまった。
 と反省。

 これじゃ、ジャイアンじゃないか。
 空き地のドラム缶ステージで、威張ってる気分である。
オレ様の誕生日だぞ、って。

 でも、有りがたいじゃないか。
 人気者たちが、手を差し伸べてくれて。疲れ果てた本番後に、アフターなんとかやってくれってのよ。

 扉座国は、某国と違って、お友達がいっぱいいるんだよ。
 
 細かい情報は間もなく、出てくるはずです。
 でも我ら扉座国の体制維持のため、ひいては世界平和のために、お力添えを宜しくお願いします。 
 
 五十年に一度のことです。
 
 


 

 


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