そして通し稽古
衣裳合わせをして、通し稽古。
欠けていたパーツが揃い始めて、やっと全体が見渡せるようになってきた。
たくさんの音楽と、会話劇の部分もあり
ちょっと長くなっている。
一回目の通しから、せっせと削ぎ落としてきて、かなり切った。それでもまだ、ボリューミー。
紀伊國屋ホールとは違い、終演時間に料金的な問題は発生しないので、今のままでもいいんだけど、さてどうしたものか。
かつて猿之助さんは、ディナーの量が少ないと怒る人はいても、多すぎるといって文句を言う人はいない、と言っていた。
それで、92年のスーパー歌舞伎・八犬伝 なんてのは、正味で5時間近くやっていたものよ。
でも最近は、とにかく短く短く、と仰っている。
多すぎても文句が出る時代に突入か。
友人のマキノノゾミさんなんかは、わりと長めだ。劇団公演でもたいがい休憩入れて、劇場にも延長料金払ってやってた。
小劇場の頃から、途中休憩が憧れだったんや、とか言ってたな。
ま、氏の最近の作風は特に、どっしりしてるからね。長編でまったく違和感はない。
個人的には、人のを見てても、短いと助かる。
一番良いのは、面白くて短い。2番目は、面白くて長い。
つまんないけど短いのはその次で、当然のこと困るのは、つまんなくて長い、もの。
して4番目は、いったい誰の得になるのだろうか。
関係者に聞くと、切れなくて、とかよくいうけど
全部切ればいい、と、客席中が思っていそうなのもケッコウあるからな。
まあ、コツコツと削いでいくことにする。
お客さんに早く終われよと思われぬように。
ところで中味だけど
見慣れてきたせいか、なんか、尾崎亜美の歌が、全部この芝居のためのオリジナルに思えてきた。
てか、それは盗人猛々しいというものであろうが。
なにせ、ずてにあるモノを使うので、しかも歌詞は変えずのルールでやってるので、ケッコウ強引なつなぎもあるんだけど、
キャストが上手にやってくれてるんだろうな。
日に日に馴染んできた。
歌詞を変えずは、亜美さんからの指令、ではなく、ワタシがさうでなくちゃイカンと決めたことだ。
編曲とか、寸法は調整させて頂いてるけど基本、楽曲はそのまま、お皿に盛る。
素材の味を消さないみたいなことか。違うか。
でも歌の歌詞って、時と場合で、いろんなふうに聞こえてくるでしょ。特に亜美さんのようなアーティスト系の人の歌って。
その潜在力に賭けるのが、こういう舞台の面白さだろうと思うのである、やる方も、観る方も、それぞれに多少誤解しつつ、イメージを膨らませていくような。
それはまあ、二十数年前の小劇場全盛期、各劇団がこぞってサザンだの、RCだの、ブルーハーツだの、と有りモノの曲をBGMとして、歌詞とセリフとの、音や意味のバッティングなんかお構いなしに、ガンガン被せて流していた感覚ととても近い。
当時はジャスラックなんて、存在をよく知らなかったから、皆、好き放題に流してたものよ。
でその試みはかなり上手くいってんじゃないかと思う。
強いて言えば、なんで尾崎亜美で、中年男性が主役のしかもちょっと、小骨が刺さるような物語なの、という点に違和感があるかも、だけど
まあ、今この時に、やるべきものとして、考えたことだから、ここは真っ向から勝負させて頂く。
でも最初に亜美さんに、震災があって気分が変わりました。
とお話ししたときに
自分も、可愛い女の子のラブロマンスみたいなのだと、困るなあ、と思ってたと仰ってた。
どうしてもそう傾きガチだものね。亜美ワールドは。特に初期作品とかアイドルに提供した曲のテイストが。
しかし、こうして一緒に物作りをしてみて、思うのは、大人の音楽家なんだなあ、ということ。
そしてジャズとか、ブルースとかのテイスト。
これはブルーノートだから、と練習の時によく仰る。
ジャズのレコードとか、ライブハウスの名前でしか知らないんだけど、大輔先生に聞いたら、
そういう和音とか、音階みたいなものがあるんだってね。つまり様式のことか。
ちょっとした不協和音を、敢えて混ぜることで、クールになるスタイルみたいな。正しいことは先生に聞いて欲しいが。
そういう時の亜美さんの姿は、ちょっと今までのイメージと違う感じが漂って、とてもカッコよい。
んで敢えてやってる、中年のオッサンの話にぴったりと来る気がする。ブルーノートって。
それやこれやで
かなり原型は整ってきた、オリビアを聴きながら、ご期待下さい。
ところで昨日、チケット売り上げ表みたいなのを観ていたら
お陰様で売り切れの日ととかもある一方
なんと9月22日が、なぜかドーンと客席が空いている状況なのに気が付いた。
なんたることか。
この日は、劇団にとってとても大事な日なんですよっ。しかも今年は大きな大きな節目なんです。半世紀なんですからねっ。
三十年記念・扉座手帖、買わなかったんですか、皆さん。
これがもし北朝鮮なら、どーなると思うんですか。
将軍様の生誕節に、ピョンヤンのスタジアムに空席が目立つなんて、ことになったら。
よーく考えて下さい。
