10月になった

 何しろ、紀伊國屋ホールの二倍の客席である。
 2階を全部入れたら、3倍近くにもなるのである。

 いつもは、けっこう多くのお客さんと世間話なんかしてる
余裕もあるのだけど、
 
 今回は
 たくさんの方にご挨拶もし損なってしまいました。
 申し訳ない。
 
 そして、温かいご声援を、本当にありがとう。



 昨日は、怒濤の2回公演。
 
 ドーンと行くぞ!

 という気持ちとともに、
 とにかく、

 無事で終わっておくれ。

 という気持ちがないまぜとなり、
 ハラハラしたり、ドキドキしたり 

 気が付けばクタクタになっていた。

 終わって、打ち上げ開始までの、バラしの最中、わしは、頂いた大きな鉢植えを一ヶ抱えて、一旦、帰宅することにした。

 この日記の読者ならご存じであろう。

 かつて執筆で苦しむ時期、発作的に
 刑事のような険しい顔になり、
 タクシーに乗り込んでは、池袋まで
 パチスロに行っていた、

 あの現実逃避ロードである。

 サンシャインは、うちとスロット屋の通り道にあるのである。

 
 で、帰宅して、ちょっと一休みと、ソファに寝転んだら、たちまち、おちてしまった……

 目が覚めると、すでに午前0時過ぎ……
 
 それから、またタクシーで、バチスロロードを走り、

 午前1時からの打ち上げに。

 いつもなら、2時ぐらいで、わしゃもういいやという気分になるんだけど、
 やっぱり、興奮していたのだろうな。

 何やかやと、ズルズルといて、
 ゲストで参加してくれた

 鈴木モボ哲也氏(ラブ×3R 36執筆陣!)や深作健太監督!らとも歓談したりして。

 結局、始発の時間まで、若者らに混じってガンバってしまったのだった。

 で、5時に寝て。
 途中、何度か、起きたりもしたけど、

 どうにもこうにもカラダが動かず。

 夕方までゴロゴロとしてしまった。

 
 実は、本当に、疲れ果てていたのだろーな、私。

 自分で言い出して、やってることだから、絶対に弱音は吐かないと決めてはいたものの、
 
 不測の事態が、次から次へと襲いかかってくるし。
 
 一方で
 広い広い劇場の客席はなかなか埋まらっていかないし。

 思えば、
 紀伊国屋ホールで、最後の三回が満席だったからって、
 そのまま、半年後に、広い劇場がアッという間に埋まるかもしれぬ、なんてのは、こちらの勝手な妄想なワケで……

 せっかく工事現場で記者会見やっても、
 見出しは
 「ラッキィ池田夫妻、渾身の振り付け!」

 正しいし、それでいいんだけど、つまりは、轟組とドリル魂には、話題性、ニュース性というのもは、まったくないのだと思い知らされ。

 それでも何とかしなくちゃ、劇団が潰れるわけで。
 CDとか、何とかまで、すでに製作しちゃってるし。

 現実の厳しさを噛み締めつつ、
 『宗春』で名古屋行ってる時も、塩キャラメル『猫と針』で博多行ってる間も、稽古の合間に宣伝協力を頼むために、あちこち電話したり、手紙書いたり、
 
 のみならず、キャラメルの製作の、和夫クンにまで、何か良い手立てはないかね、と相談して、アシストして貰ったり。

 とにかく何とかしなきゃいけない、と。
 全方位的に、闘い続けであった。


 それで、多くの人の協力を得て、
 何とか美浜を終えて、一日休もうと思ったら、
 今度は犬飼が、出られなくなったって……


 正直、わしは、これでお客さん達に、愛想尽かされても仕方ないと覚悟した。
 わしらの命運も、ここで尽きたとも思った。

 舞台の上で、倒れたのならいざ知らず、
 関係ないとこで、何だか、よく分かんない怪我しているんだから。
 情けないやら、悲しいやら。
 そりゃ、犬飼のことも心配だったけど、
 それ以上に、

 何やってるんだよ、こんな時にバカ野郎、って……
 
 
 ただ、せめて、すでにチケットを買ってくれている方に、失礼にならないように。
 何とか、納得して頂くように。

 もう、それしか考えなかった。
 わしらが今からできる、最高のことをして、お出しする。
 一刻の猶予もなかった。


 ところが、そんなことのあった、わしらに、たくさんの声援が聞こえてきて、
 チケットの返券を求められることもなく、

 むしろ、犬飼さんのチケットで、予約をお願いします、
 なんて言って下さる方までいて……

 退院してきたら、本人にもしっかりと伝えておきます。
 舞台に立つ者の、責任というものについても。


 池袋の初日、
 補助席を出します、

 という製作の声を聞いたとき、わしは全身から、力が抜け落ちていく気がした。

 舞監はじめスタッフが必死にやりくりしてくれて、芝居の稽古時間まで作ってくれていたために、

 慌てて変更した部分も、極めてスムーズに流れ、

 さすがベテランの、
 岡森や茅野が、
 何か、
 居並ぶ魔除けの仁王像のように、
 どしりと舞台に佇んで、支えてくれて、

 最後の『ドリル魂のテーマ』が終わって、まだ暗転する前から、
 満員の客席に指笛と、掛け声と、拍手が入り交じって、

 どーっと響きだした時に、

 鳥肌が立った。


 芝居の三要素って、
 演劇を勉強するとき、1番目に習うことです。

 一つは、俳優
 一つは、セリフ(戯曲)
 そしてもう一つは、観客

 そのどれもを、この場に大集結させて、
 大爆発を起こそうと、
 演劇人はいつも、
 企んでいるのだけど

 なかなか、うまくいかないもので。

 でも、
 何なんだろう。

 今回、 
 絶望的な崖っぷちから、
 その三つが、
 じわじわと、起ち上がってきて
 
 一つになった。

 ような気がした。

 
 これからのこと、
 犬飼のその後の様子、
 などなど、
 いろんなことは、追い追いお知らせして行きます。

 ともあれ、

 皆さん、どうもありがとう。

 里沙が舞台上で言ってたけど、
 私も、

 今回の公演を一生忘れません。

 て、まあ、折り返し過ぎたオッサンの一生なんで、
 重みにちょぃと、疑問有りですが……

 

 明日から始動。
 まずは明治座公演

 『女ねずみ小僧』の記者発表。

 しかし大地真央さんの、
 ご結婚が、話題の中心で、
 芝居の中身なんか、まったく
 問題にされないと思われる。

 とりあえず、役目なのでニコニコしてくる。(もちろん嫌いではないから、いいんだけど、そういう場)

 けど
 
 ああ、ココに集まる、テレビカメラや、雑誌記者たちの、
十分の一でも、轟組を取材に来てくれたなら……
 
 と、お腹の中で思うんだろーな……


 追記!
 そういえば
 打ち上げ会場。 
 わしのホームグラウンドの一つの上にあった。
 ラオウとの死闘の古戦場である……


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