靴の話 ふたたび

 昨夜は、尾崎亜美さんと、小原礼さんご夫妻も見に来て下さった。
 三木眞一郎ら、オリビアの人々も、特に申し合わせたわけでもないのに、奇遇にもこの日に集結して。

 楽屋のボードには、久しぶりに、尾崎IN の書き込みがされた。
 この舞台には、歌もないのに、緊張が走る!

 なんてことはなく、それよりも久しぶりにお会いできるのが嬉しかった。
 小原さんは、奥田民生バンドツアーの合間を縫って、だ。

 で
 懐かしく、愉快なので、皆で2階のカフェ、アンリ・ファーブルに。
 賀来さんもお誘いして。
 軽く寄ってきましょう、なんて。

 こんな時、この劇場はとても便利。
 ここは料理も美味しいし、ワインなんかもちゃんと揃ってる。11時までやってるし。

 いろんな反対があったけど、レストランがなくちゃインカンと、自腹まできって設備投資し、押し切って作った、初代館長にして劇作家の大先輩、故・斉藤憐さんの功績のひとつである。
 
 その酒席で。
 小原さんが「あつらえ靴、と言えば、トノバンだからね」

 と語ってくれた。
 トノバンとは、故・加藤和彦さんのことね。
 小原さんは、加藤さんがやってた伝説的バンド、ミカ・バンドのメンバーでした。

 そんな贅沢すらあることを知らない時から、トノバンは、ひとりせっせと、あつらえてたんだから、って。

 まあ、そこらのことは、靴好き、オヤジファッション通の間では、有名なんだけど、というか、加藤さんが亡くなってから、あちこちで紹介されて、どんどん有名になってるんだけど。

 私としては、特に、加藤さんを意識して書いたなんてことはない。
 そもそも、そんなに立派な靴屋さんじゃないしな。
 今回の舞台に出てくる、長谷川靴店は。

 でも、たぶん、あつらえる、という行為の意味は、加藤さんとか、世の洒落びと、粋人たちが、追求してきた美意識の行き着くところには違いなかろう。

 それやこれやで、あつらえ談義なんかしばし。
 尾崎さんは、ステージ用の衣裳とか靴とかは、あつらえで、靴は木型もあるという。

 でもね、太ると、木型にもなんか貼り付けて、木型も一緒に太るんだよ、って。

 「にしても、賀来さんは、スマートねえ。同じ人間かしらねえ。あたし、生まれ変わったら、あんな体型になってもいいな、と思ったよ」

 「それで音楽の才能を奪われるとしたら、イヤだけどね。だったら、これでガマンする」
 
 尾崎さんの言葉の世界は実に趣き深い。
 高校時代は、演劇部で、脚本とかも書いてたんだって。

 私は今、そのうちに、イッポン書き下ろしてみませんかと強くお勧めしている。

 それやこれやで、芝居の公演中ならではの、愉快な夜であった。
 たまーに、こういう時間がやってくるから、やめられないのだね、
 クルシイ、マル、ツライデス、マル の日々が続いても。
 
 そしてレストランの片隅に、憐さんが酒のグラス片手に、こっちを見てニコニコ座ってる気がしたな。



 お陰様で、土、日のご予約は一杯になりました。
 今日、明日、明後日はまだご用意があります。
 ご予約、ご来場、お待ちしています。
 今日と明後日は、平日マチネもあります。



 


関連記事

この記事のハッシュタグに関連する記事が見つかりませんでした。

アーカイブ