酒井敏也さんも来てくれた
『つか版・忠臣蔵』 公演会場のマル倉にすでに移って、稽古をしている。
で、この稽古場に、『紺屋高尾』に出演して下さった、酒井敏也さんが遊びに来てくれた。
酒井さんのデビューは、つかこうへい作品である。
今回、原作としたテレビドラマ版の、つか版忠臣蔵 には浅野内匠頭という大役で、出演しておられる。
今ビデオで観ると、やけに若々しいんだが、聞けばこの時、21歳だったそうな。
ザ・レジェンドである。
しかもそんな酒井さんが、つかさんとはあまり関係ない、人情噺で、扉座と関わっているのである。
つかこうへい という人のスゴサが分かろうというものだ。
敏也さんも、亨さんも、みんなつか関係で繋がるのである。
んで、稽古の後、ご飯とかに行ったわけだが、
そこで高野嗣郎のマイクパフォーマンスは、肘を張って、顔中充血させてやるのだ、とか、貴重な証言をしてくれた。
高野嗣郎というひとは、つかこうへい事務所になくてはならぬ、名脇役で、劇中突然、俳優の名を連呼したりするナーレーションの担当で、名を馳せた人である。
みんな、この人の語りを真似たものよ。
テレビドラマの冒頭でも、この人の語りがビンビンに来ている。
今回は、その役目を伴美奈子がやる。
伴はギリギリつかこうへいを知ってる世代かな。
岡森が『熱海殺人事件』なんかやらせて貰ってた頃、新人だったのかもしれない。
とまあ、語り出すと、ずーっとディープなマニア話になってしまうのであるが
実は、このマニア話、私ら世代の演劇人はかなりのパーセントで成立するのである。
あのころ、紀伊國屋の客席で、三浦洋一や平田満の機関銃のようなセリフを必死に聞き取っていた、若者たちが、そのまま舞台に吸い寄せられて、幕内の人たちになったということだ。
そんな影響力を持ってみたいと、しみじみ思う。
いまさらながら無念なのは、どうしてコレ、つかさんの生前に、オレたちやらなかったかね。
つかさんに、観て貰って、ダメ出し受けときたかったねえ、と烈しく悔やむ。
まさか、つかこうへいがいなくなる時が、来るなんて微塵も思ってなかったからな。
そして実は、今だって、いなくなったような気はしてないんだがな。
とにかく今は、つかを語る。それが恩返しだと信じて。