届くといいな

 去年のことなんだけどね。
 三回忌になるんだね。

 七月が来ると……

 つかこうへい先生に、恩と思いの深い我らと、実はまったく何も知らない、若者たちとで、創りあげた今回の舞台。

 狭い小劇場で、劇場からはみ出すほどの、チカラと声を振り絞って、全速力でやっている。

 つかさんが、語っていた、演劇はF1じゃなきゃイカンのだと言葉を、思い出しつつ。

 自動車レースのF1 ね。音速で駆け抜けろ、という教え。
 もの凄いモノ、見せるのが役目なんだと。

 最近はわしも歳をとってきていて、汗だくの全速力より、ちょっと脱力した、脇見運転みたいなのが、趣味に合うようになっていた。

 行間に滲む、情感を期待するというか。
 余白に、真実が映るというか。

 しかし、今回は隙間なく、テッテ的に、言葉で埋める。刺激で攻める。

 カーブだって、ギリギリを攻めて、タイヤをすべらせながら曲がる。
 忘れていた、F1演劇の復活である。

 やる方もタイヘンだけど、きっと観る方もエナジーが必要だろうよ。
 しかし、ともに、濃密に過ごす2時間と少しの間に、生まれるであろう、共生感のようなもの。
 あるいは共犯感ともいおうか。

 それはライブである、一期一会の演劇にしかない、稀なる境地だ。
 
 つかさんが、求め続けた境地には、まだ遠く及ばぬとは思うけど、
 それを掴みたいという思いと、少しでも近づこうとするこの営みが、客席にしっかりと届きますように。

 我々の情熱が、まだきっと劇場の近くにいる、つかさんの魂に、届きますように。

 明日、7時、いよいよ『つか版・忠臣蔵』開幕。

 35年ぶりに挑む、モロつかの世界。
  
 決してお見逃し下さるな。
 今ならまだチケットは、あります。
 


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