前進か死か

 『前進か死か』というが、つかさんのキャッチフレーズだった。

 初日、我々は、本当に決死のF1 をやってしまった。

 セーブという言葉のない、フルソロットル。

 それも東京ドームでもない、錦糸町の倉庫の中、百数十人を相手に。
 しかも今月いっぱい、それが続くと言うことも、悟った。

 最期まで、保つのだろうか、コレ。
 と素直に心配。

 昼間、一回通すかどうか、ためらった。
 一回通すと、みんな、ぐったい消耗する。若者はそれぐらいやってもいいけど、ベテランはもう五十だからね。

 でも、スタッフワークとか、劇場の状況とか、確かめたいことがいろいろあり、

 ま、芝居は手抜きで良いから、声も抑えて、とりあえず通しておこう ということになり一回マルマル通したんだけど。

 そこで手抜きが出来ない、つかこうへいの世界。
 始まったら、たちたち熱くなり、汗とツバが烈しく飛び交う。
 限界まで、声も走る。音速目指して。
 
 ま、つかさんの頃は、稽古からずっとそんな感じで、生き残ったモノだけが、舞台に立ったということだけど。

 ともかく、全力フタ回しになった、昨日。

 2回目になる本番は、さらに熱く、走った。
 限界を晒しつつ。

 お客さんもさぞ、暑苦しく、スリル満点であったことよ。

 客席で観ていたワシも、久しぶりに、変な汗かきつつ、手に汗握ったぞ。

 つかさんなら、これで更に、今日辺り、全員早く来い、とか命じて、いきなりオープニングを作り直したりするんだろうが

 そもそも、わしがくたびれた。
 最近、ちょっと不眠気味だったのが、サッカー観つつ、ソファーで落ちて、その後も犬たちが、そろそろ起きて、なんか食わせろ、と私のカラダの上で、エックスジャンプを始めるまで、熟睡した。
 まだ眠い。

 役者たちは、今朝、生きてるだろうか。まじに心配。
 そんで、今日土曜・2回公演なんか、ホントに出来るんだろうか。

 今夜辺りで、数名、白い灰になってるんじゃないかと、不安になる。

 つかこうへいは、実に手強い。
 アルプスの山みたいだ。

 それなりの覚悟はして、登ってきた山だったけど。
 
 でも、つかをつか的にやると決めて、ビンテージカーレースでなく、F1を目指すと決めて、取り組んだこの企画。

 若者たちには、センター決めの総選挙だと思え、スポットライトを命がけで奪い合え、と号令掛けてやっている、以上、
 
 我々も、前進か死か を今更ながらやる。
 
 お客様は、ベテラン劇団の暴走をお楽しみ下さい。
 
 

 

 

 



 
 


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