猿翁

 東京公演を終えて、今日は、やっと新橋演舞場に行けた。

 おもだか一門の大公演。
 猿之助さん改め、猿翁さんにご挨拶するために。

 弥十郎さんとか、段治郎改め月乃助とか、久しぶりの顔も揃い、
 四の切 では、扉座浄瑠璃のお師匠さま、葵太夫さんの義太夫も聞けて

 何よりも、旦那の5年ぶりぐらいの白塗り姿だ。
 口上に出る、猿翁の姿は、早足で歩く颯爽とした往年の姿を知る観客には、ちょっと寂しいだろうけど

 ここ数年の闘病を見てきた、我々には、涙と感動の復帰。
 ここに辿り着くまでがたいへんだったんだ。

 でもこうして舞台に戻ったからは、ここからきっと更に、回復が進むと信じる。
 
 エンノスケという人には、拍手喝采が、何よりもエネルギー源であり、クスリである。
 舞台から遠ざかっていた日々は、そのチカラの泉からも、遠くにいると言うことが、私には悪循環に思えていた。

 実際、今日だって、拍手に包まれた瞬間に、その瞳にチカラがたちまち宿り、視線は未来を見据えた。
 
 楽屋に行くと、その場で俳句を書いてプレゼントしてくれましたよ。
 
 さっそく、その足で伊東屋に行って、額を買って入れましたが。

 毎日の舞台はいつも夢の中    猿翁
 


 こちらも客席で、夢を見ているようです。

 新中車さんは、そもそも芝居は上手いから、何の違和感もなくそこに立って馴染んでいるし、その上、すでに歌舞伎の音とリズムを掴んでいて、右近さんたちに混じっても、セリフが歯切れよく、心地よく響いてくる。
 たぶん、とびきり耳の良い人なんだろう。そう言う人は、子供時代から修業しなくても、掴めるモノがたくさんあると思う。
 新猿之助の忠信は、本当の子狐に見えた。芸がどうこうはよく分からないが、そんなドラマが見えるって凄いことだよね。
 子狐の思いがぐっと胸に迫ったぞ。
 まあ、誰よりも子狐に、ガラも近い人なので、アドバンテージはあるけど、3代目のイメージが濃すぎる演目で、ちゃんと闘えるのは立派だよね。
 

 さて来月は、猿翁がいよいよ舞台に立つ。
 つか版・忠臣蔵もきっと無事に終わってるだろうから、心おきなく駆けつけられる。
 
 夢はまだ続くんだ。

  
 
 


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