悲鳴
せめて一声、少年が、ぎやあああああと叫んでいたら、
卑怯な大人たちも、見て見ぬふりは出来なかっただろう。
イジメられているとき、
殴りかからないまでも、逃げるチカラが足りなくても
ただサイレンのように、悲鳴を上げることさえ出来たら。
少年は、静かに己と闘ったのだろう。
ひたすら、己を殺したのだろう。
声が消えている。
肉体が消えている。
儚く繊細な、精神だけが、ブルブルと震えている。
それが何とも、歯がゆく、胸に痛い。
誰か、少年に叫び声を、与えてやってくれ。
