オリビアを聴きながら の中の

 『漂流者へ』という曲があって

 これは尾崎亜美作品というよりも、高橋真梨子さんの持ち歌として有名なんじゃないかと思うが

 まあ、ある程度の年齢の人なら、聞けば必ず、ああアレかと分かる名曲。

 大人の女が、濃い恋愛に遭難して、漂流者になっているみたいな、歌である。

 この舞台では、これをオッサンふたりが演じる。

 オッサンというか、23歳(自称)の舘形比呂と、2度目の青春(自称)の柳瀬大輔。
 コンボイのタテさまが半裸で歌い、踊り、ジーザズの柳瀬兄が、ピアノを奏でて歌う、ラスベガス級の、究極デュオシーンである。

 分かる人には分かると思うが、これはかなりレベルの高い営みである。

 そしてこのシーンの稽古がある度に、出演者一同、惚れ惚れとして、このふたりの共演者をみつめることになる。

 ただ、
 歌うのは、女の歌『漂流者へ』。

 よーく歌詞をあじわって聴くと、かなり趣き深いのである。なんでオッサンというか、何度目かの青春のふたり、こんなに熱く、こんな恋心を演じているのだ。

 しかし、ここら辺が、名曲をつないで創るミュージカルの醍醐味でもあると思っている。

 シーンがあって、曲を作ってもらったワケじゃないからな。先に曲があって、どうつないで行くべきか、考えたのである。

 なんとか、この名曲を使いたいと思うところから、始まっているのであるが
 ではどこにこの曲を入れるべきか。誰が歌うべきか。

 このシーンは自分でも、かなり気に入っている。
 尾崎亜美にして、尾崎亜美ワールドの新しい展開。

 この舞台、女心のカリスマ、というべき尾崎亜美の音楽を使って、ひとりのオッサンの受難と再生を描くという、ちと複雑な構造を持つ芝居であるが
 
 その複雑さが生んだ奇跡と敢えて、自画自賛しておく。

 ある意味、高橋真梨子超えも見事に果たしているのではなかろうかと。

 オッサンふたりの、見応えある漂流である。

 女はどうして男の夢、壊そうとするの
 男はそれでも旅して欲しい
 そうよ、漂流者のように

 深淵である。


 みんな聴きに来なさい、観に来なさい。

 


 

  


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