天下茶屋の六角 

 テレビの世界に居場所を得て、
 なんとなく面白い人、なんてお茶の間に認知され、

 人の良い間抜け役 がハマリ役と思われているだろう、六角精児。

 実際、
 劇団では 田山ツトム という情けないメガネ君を持ち役にしている。

 テレビでは、米沢守 というのが持ち役なんだが、やっぱりゴロが似ているね。
 豪傑ではなく、なんかここ一番で、しくじりそうな気配の漂う氏名。
 全国のツトムさん、守さん、すみません。

 しかし何度かシリーズものとして、劇団作品に登場した
 田山ツトムの、最も目覚ましい活躍は

 放火魔として、登場した時であった。

 気弱で、頼りないツトムだが、放火歴十数年という、放火魔なのであった。

 その負の部分があって、六角は輝き、演劇界で名を知られるようになった
 と私は思っている。

 ガラ風貌からして、大悪党はムリである。役者だから、やれと言われて、ギャラを貰えりゃやるだろうが
 たぶん、しっくりこない。
 
 でも大善人は、さらにしっくりこない。
 というか、
 せっかく大善人の役をふっても、本人が、稽古で、人のカバンをコッソリ開けるようなことを、勝手にやりはじめて
 大善人でなくしてしまう。

 その役は大善人なんだから、と止めようとしても、それがそこはかとなく可笑しいから、
 んじゃそこは、カバンを覗いてしまうことにしよう、
 みたいなこととなり、
 ついでに、小銭だの女性下着だのを、拝借したりして

 せっかくの大善人が台無しとなって仕上がるのである。
 
 だがおそらく六角の本質が、そこにある。 

 だから、六角に役を書くときは、無駄にならぬように、最初から、手癖が悪かったり、底意地が悪かったり、プチ変態だったりするように
 私は心掛けている。
 

 で 
 この天下茶屋である。

 ここで六角が演じるのは、悪党。
 しかし、ひたすらいい加減で、場当たり的で、何かの目的のために犯罪をおかすなんていう、悪党とは違う
 端敵、小悪党である。

 とにかくデタラメに、生きてゆく。
 裏切って、迷惑かけて、開き直って、嘘ついて。
 そして、そのサマが、極めてよろしい。

 今、まだ稽古の序盤だけど
 
 これ以上に、六角精児が分かる作品はなかろうと、予感する。
 まあ、それが分かってナンの得になるのかは、分からんが、というかはっきり無駄な体験ともいえようが

 そのデタラメな小悪党に掻き乱される、儚くも健気な小市民たちの世界が、愛おしく思えたら
 
 なかなか良い人情芝居になるだろうと、思っている。
 
 最近、彼は多忙を極めていて
 一緒にメシを食うような時間さえ、なかなかとれない。

 ま、それでも酒を飲む時間は確保してあるようだから、ワシがシモキタまで訪ねて行けばいいんだが
 私には、あんなにたくさんのお酒はいらないから、
 なかなか接点が持てないのである。
 
 でも、たまに芝居はやろうと約束してて、
 これは2年ぶりの新作である。

 ライトに馬鹿馬鹿しくやってるようでいて、
 なにげに大事にしている時間なんだ。

 
  
  


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