利楽村より

 『げんない』の稽古を進めています。
 ラッキィさんとエリさんも来て、今は振り付け。

 今回は、ミュージカル専門の俳優が少なくて、稽古初日の、軽い歌入り読み合わせでは、歌などかなりガタガタで

 今回は、ミュージカルとは別のモノということで、

 と密かに覚悟を決めた私であった。
 しかし、深沢監督の鬼の特訓で、ここ数日、見違えるというか聞き違える、美しいハーモニーが聞こえてきて

 あ、やっぱりミュージカルなんだと、思い直し始めたとこである。

 いよいよ終幕に近づく『幕末ガール』が、もうこれで終わりと言うこともあり、
 もの凄い気合いと、勢いで、

 自分が作ったことも忘れて、見入るような、熱く素晴らしい舞台になっていて
 新作の超えるべきハードルは、更に高くなっている。

 ここから、『げんない』は頑張りどころである。

 ただ、歌や踊りのテクニックよりも、存在感とか、芝居の味とか、を重視した今回のキャストは、この先、稽古を進めていって、芝居が見え始めた頃、

 かならず底力を発揮し、濃密な時間と空間を作り出してくれると思う。
 所謂ミュージカルの常識から自由になった、真の和製音楽劇の誕生だと、目利きたちにも、思わせてやろうと、それは私の野心である。

 にしても
 いよいよあと3日の『幕末ガール』
 昨日は、松山の小学校ひと学年様と、敬老会のような御大たちの大群と。
 名残を惜しんで駆けつけてくれている、何度目かのお客さんたちと

 これが混在としている客席を、ひとつにまとめて、飽きさせることなく舞台をみつめさせている。
 たいしたもんだなあと、しみじみ思った。

 こんなことが、この四国の片隅で、270回近く行われてきた。
 初めて生の舞台を観たという人たちも、なかには大勢いて、これがひとつの基準になる。

 ド田舎の、菜の花畑の温泉の隣の、四百キャパの小屋で、テレビに出てない、よく名前も知らない役者たちがやっている舞台。
 有名人がたくさん出て、東京で話題になっている、舞台って、この何百倍も凄いんだろうと、たぶん思ったことであろうよ。

 しかし、
 そんな舞台はそうないからな。そりゃ、仕掛けとか、劇場機構とかがスゴイのは、無数にあるが。

 いつか、この場所に、どれほどスゴイ作品が生まれていて、あなたがたまたま観た舞台が奇跡的なものだったのか、ということに、気付く日が来るだろうよ。

 でもその時には、もうこの『幕末ガール』はない。
 ただ、あなたの記憶のなかに、在り続けるだけだ。

 それが
 私たち舞台人の哀しみであり、喜びでもある。
 だからこそ、今この時に、全身全霊をかける。

 五十嵐が、そのお手本。あの子は、ついに一年間、あのテンションで駆け抜けてみせた。

 そんな『幕末ガール』明後日までやってます。


  
 
 
 
 
 
 

 
 


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