前衛と大衆
今日は 横浜の青少年センターで
はや4年目になる、演劇指導者のためのワークショップ。
『アトムへの伝言』は、東北ツアーを無事に終えて、小休止。
土、日に厚木。
※厚木は、若者応援シート1500円もやってます。
来週は新宿紀伊國屋ホールにての公演です。
たくさんのご来場をお待ちしています。
2日続けて、まったく別世界の舞台を観ました。
別役実さんの158作目 不条理四谷怪談。
と
早乙女太一さんの劇団朱雀パルコ公演。
我が国を代表する前衛劇と、大衆演劇。
等しく劇場で行われている、実演なんだけど
そこにあるもの、目指す物は一見まったく別物で
しかし、
今回の大衆演劇には、小劇場の俳優もゲスト参加していて、
なかには明日、別役実作品を演じていても、不思議はない人たちもいて
本当に別物なのか、という疑問も生じる。
事実、真面目な兵庫ピッコロシアターの中に、少しこの大衆演劇の図々しいテイストを入れた方が
実は、舞台に心地よい風が吹くのでは、と思われる場面もあった。
県立劇団が情熱をもって真摯に取り組んでいるし、俳優たちもよくやってると思うけど
ちと堅苦しい。
別役さんの描くおかしみって、もっとリアルに人間臭い部分があると思うのだね。
多少、下品だったり、汚しのかかった河原乞食テイストも必要かなと思うのだ。
四谷怪談だから実際に、河原の人とか登場するんだけど
それが記号になるか、リアルになるか、成果の分かれ目だと思った。
私は、リアルな存在感で表現された方が、より日本の不条理劇として深みが出ると思う。
こういう劇団で簡単にできる事じゃないとは思うが
欲を言えばね。
一方、朱雀の大衆劇は、現代的にショアーアップされた歌謡ステージなど
ひたすら楽しく時が過ぎる。
芝居も、すっかり手の内に入って、安心して観ていられるし。
ただ、パルコの客席では、もっと突っ込んで芝居をしてもいいのになあ
というか、ヤッてくれてもいいなあと思った。
ふざけのめして、楽屋オチもふんだんにあって、ひたすら面白いけど
大衆劇独特の、お涙頂戴みたいな演技の芸が、あの空間で、あのお客様たちになら、しかと伝わり、さらに彼らの凄みが増すのではと思うのだ。
なんでここで泣いたんだ、アタシ、みたいな現象をさ。
ヘルスセンターの舞台じゃ、困難だろうけど
集中度が違うんだから。食い入るように、皆、観てるし。
ま、これは前衛劇と、大衆劇を並べて観るような変わり者の欲張ったリクエストかもだけど。
それぐらい、大衆劇の舞台にも濃密な時間と空間が出現し、演劇的な可能性が感じられたということだ。
別役さんが信奉するベケットが
ゴドーを待つふたりは
チャップリンとキートンが理想といったという。
さすれば 不条理四谷怪談の伊右衛門は、早乙女太一で、宅悦は、葵陽之助(太一さんのお父さん)なのかもしれないと
そんなこと考えながら、大衆劇のアドリブ合戦を眺めていた。
そして
そういう仕事をするのが、私の役目なんだろうなとも思った。
なにしろ、庶民の街高円寺で、日本を代表する前衛劇が上演され
最先端の街渋谷で、大衆演劇一座が興業しているのである。
そしてそして
前衛劇は極めて折り目正しく
大衆劇は、イメージの変革を求めて革新的に
やられている。
本来の姿勢は、あべこべであるべきでしょ。
大衆は保守で、前衛が革新のはず。
価値も様式も、混沌としているんだ。
いかに混ぜて、美味しく飲むか、
テーマはそれだろ。