スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース
間もなく、稽古は終わり、小屋入りをする。
『ワンピース』
冗談かと思っている人も今だに多いと思うが、かなり大真面目に取り組んでいる。本当にマンガの『ワンピース』を舞台化、しかもスーパー歌舞伎にするのである。
スーパー歌舞伎らしく、スペクタクルでありつつ、ちゃんと筋の通った、感動できるものにしなきゃイカンと思っている。
スーパー歌舞伎から数知れぬ贈り物を頂いた者として……
スーパー歌舞伎というモノについては、思いが深すぎて、ちゃんと語るのは、またの機会にするが、
三代目猿之助と出会って、スーパー歌舞伎の仕事をやらせて頂いたことが私にとって、演劇人としてはもちろん、ひとりの人間としても、途方もなく大きな財産となっている。
今回のスーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)は、三代目の甥である、四代目猿之助が座長となって行うものである。
その話を頂いた時は、身が震えた。
いろんなものが重なって、何だか人生の大きな交差点に入ったな、という感じ。
雑に言えば、運命的なものを、感じたというか。
しかし決して深刻な感覚ではない。
天翔けるような、浮きたつ思いだ。
『ワンピース』という素材にびっくりもしたけど、それ以上に、またスーパー歌舞伎に関わることが出来るということが、心から嬉しかった。
さらにさらに雑に言えば、その瞬間、またやれるなら、何でもやる、と思ったのだ。
白状すれば、その時点でワンピース対する知識は、ほぼゼロ。
やると決めてから、原作を読み始めた。
ただしそこからは真剣に原作と向き合った。
愛するスーパー歌舞伎のために。
八犬伝や三国志に対して、そうしてきたように。
そして
大げさではなく、犬馬の労を厭わず、もてる力のすべてを尽くして、若き座長に仕えようと決意した。
二代の猿之助と仕事が出来る私は幸せ者である。
とてつもなく大きな仕事だけど、今回の私はは野心もなく、変な色気も持っていない。
作品を少しでも面白くする、ただそのことだけ考えて、ひたすら無心に、無我夢中で取り組んでいる。
冷静に考えたら、
ワンピースファンと、歌舞伎ファンの両方を一度に敵に回すような試みである。
期待の声もあるにはあるけど、それ以上に不安と疑問の声の方が、この耳にもたくさん入って来る。
実際、こちらとしても、再起不能のノックダウンを喰らうことになる悲惨なチャレンジになるのではないか、という恐怖もないではない。
しかし正直、今の私にあるのは
ただただ、スーパー歌舞伎の新作創りに関わることの出来る喜びである。
成功させたいと強く願うのは、スーパー歌舞伎がずっと続いて行くためにも、ここでヘタな失敗をしたら、もう続かなくなると思うからだ。
今年の夏は、いろんな仕事が重なって、ここに至るまでで、かなり疲れてて、
へろへろではあるんだけど
最近は、ますます気持ちがずっと高揚してて、一日一日がアッと言う間に過ぎてゆく。
そんな九月。
『ワンピース』公開間近!
☆誕生日にたくさんのメッセージを頂きました。
どうもありがとうございました。
またひとつ歳を取り、35歳になりましたが、外の仕事も劇団も、しっかりやって行 きます。変わらぬご声援、よろしくお願い致します。