ホテルカリフォルニア
いよいよ四十周年記念の総仕上げ、
私戯曲 県立厚木高校物語 ホテルカリフォルニア の公演に突入する。
劇団員、総出演。もっとも何人かは、別の任務の為に、全公演参加とはいかないが。それでも32人、こんなに揃った公演はおそらく 善人会議 改名公演以来。そしてきっと、今後、もうない。
劇団員のスケジュール調整にも苦労する昨今なのである。
これは2年前から、全員、空けておくように指令を出した。しかしその2年が、コロナに翻弄されて、しっかりと準備するはずだったのに、アレコレ、予定が変わってバタバタになってしまった。
それでも、どうやら、コロナの心配はかなり薄れてきた。ラッキーであると、感謝したい。
22年ぶりの、ホテカル。現代から過去に誘われる、その物語構成は、原形のままとしつつ、現代シーンを改訂した。再演からも、はや22年が経って、原形では現代感が消えている。
今回は今この時から、1 977年まで、時代を一気に遡る。約半世紀だ。
対して、我々を過去に誘う、同級生のシュウケイは永遠に歳をとらない。
なぜならすでに他界しているから。
彼は二十歳で自殺したのだ。
久しぶりに、この物語と再会し、改めて気が付いた。
これは、私的な、ピーターパン物語だったのだな。
命を失い、自分の影を探し求める永遠の青年、となったシュウケイは私たちを、ネバーランドに連れ去りに来るのだ。
そもそも馬鹿馬鹿しいシーンの多い話を、還暦のオッサンやオバサンが、汗だくで演じて、さらに滑稽なうえに、今回は全員集合のお祭りでもあり、稽古場に笑いは堪えない。
しかし、同時に、胸に痛みがおきる。
ホテカルは、痛い。
彼が二十歳で死んだ、その理由が、ここに描かれているわけではない。彼が死んだのは、高校を卒業してしばらくしてからだ。
この劇に描かれるように、文化祭ではともに、頑張って、盛り上げた良い仲間だった。
彼とは楽しい思い出しか残っていない。
だけど卒業後、ろくに会ってもいなかった。
ただ私は、高校卒業後に間もない頃、彼から長い手紙を貰っている。そこに、
高校時代に思い描いていたことが、ほとんど出来なかった、みたいな後悔がたくさん綴られていた。
もっともっと、こうしたかった……
みたいなこと。その手紙は実家にあるのか、どうしたかも分からない。たぶん早いうちに捨ててしまったんだろう。この戯曲を書いた時にも、参考にはしなかったと思う。
だから、これは薄っすらとした記憶でしかないんだけど、
彼は確か、こう書いていた。
もっと話したかった、お前と、みんなと……
話す時間もなかったのかね、俺たちは?
いったい、何にそんなに忙しかったのかね?
稽古中、ふと気が付くと、自問自答を繰り返している。
劇場でお待ちしています。ネバーランドへ、行きましょう。