卒業など……
今日は第11期生の卒業式。
昨年予定していた杉田成道監督の特別授業が流れたこともあって、今日、改めて来賓として参加して頂き、
講演して頂く。
不器用なヤツほど、最後は延びます、と。
兎と亀ですな。話としては、簡単だけど、その実行は難しいだろうな。
そんなに頑張れる亀は少ないと思うモノ。
でも、長年ドラマの最前線で闘ってきた監督の言葉である、それは単なるお愛想の励ましではない。
どれぐらい、若い者たちの心に響いたかは分からないけど。
その後、飲み屋で、謝恩会。
アッという間の2時間。
私の席の近くに、お礼を言いつつ、若者達が寄っては来るが、その実、私と何を話せばいいのか、どう切り出せばいいのか、分からぬらしく、ひたすらもじもじとする。
こっちも親切にいろいろ話題を振ったりすればいいのだろうけど、もはや一緒に芝居創った仲間だと、思っているから、妙に気を配るのも、なんかしゃらくさい、という感じになって、
微妙な沈黙の感じを、そのまま受け止めて過ごす。
言いたいこと有るなら、言えば。みたいな……
私が、そんなに偉くなったワケじゃないけど、
彼らが感じる壁みたいなのも、ある意味リアルなものである。
そりゃ、ついこないだ始めたばかりのお前らが、かれこれ三十年近く、これだけやって来ている私と対等に芝居の話するには、もっともっとこの道に邁進して、何かをやり遂げなきゃ、ダメだろうぜ、と。
でも、いつか、そんなことが楽に出来るときが来るまで、がんばれと。
それが今、言えるメッセージかも知れない。
これはね、横内に平気で語りかけるぐらいのガッツ持て、とか。そういう意味じゃないんだよな。
そういう素人は、そこらに、いっぱいいるんだ。
それを別に無礼とも思わないし、それはそれで楽しく私はお話し出来る。
でも、ともに芝居に真剣に向き合えば、そしてそれが真剣勝負であればあるほど、プロの世界に確実にある技量の差みたいなものを、よほど鈍感な者でない限り自然に体感するものなんだ。
それを知ってしまった人は、臆病になる。
彼らだって、昨年の春、花見の頃は、もっと無邪気に話しかけて来ていた。芝居のことを、必死に語ろうとして。
それが今、微妙な距離感になっている。
私はそれを成長と呼びたい。
彼らも芝居の怖さを少しは知ってる者になったな、と。
それは私の中で最大の誉め言葉である。
まだ寒い、2月半ば。
でも、また、もうすぐ春が来る。