ガラスの仮面inソウル?

 韓国から帰ってきた。
 今回の仕事は、韓国人女優を一人、見つけてくること。

 韓国の演劇人たちの協力を得て、オーディションの呼びかけをして貰った。結果、80人以上の応募があった。
 その中から書類審査を通った67人ほどの女優を、20日の朝から夜までかけて審査してきたのである。

 場所は仁川というところ。ソウルから小一時間の港町である。
 
 集まってくれた中には、有名劇団の団員とか、すでに主演映画をもつという本格派の新鋭までいた。
 韓国美人が揃った見た目にもそうだけど、演技的にもかなりレベルが高い上に、参加者は皆、真剣であった。しかも、マネージャーなんか誰もついて来ない。全員が自らの意志でここに来て、何とか役を掴もうと必死に挑んでいた。

 映画の大作の主役なんてものでもないのに、こちらとしてはひたすら恐縮しつつ、これは責任重大だなあ、と思うのであった。このオーディションをやろうと言い出したのは、例によって自分なんだがナ。

 にしても、この中からたった一人を選ぶなんて、絶対無理!て気がしたもんだ。

 実際、最後に残った5人ぐらいは、誰でもオッケーて感じで、出来れば全員僕のモノにしてしまいたいぐらいだった。
 とにかく美しい女優、上手い女優、魅力的な声、溢れるエネルギー、妖しく輝くエキゾチズム、エトセトラエトセトラ……

 でも、最後の決断を下して、1人に決めてきた。
 1人に決めるのは難しかったけど、ある意味では圧倒的にただ1人抜きんでている女優がいたのだった。

 その女優は、会場に現れた時から、去って行くまで、上手いとか下手とか、そういう基準を超えたところで、誰よりも深い印象を残す、不思議な光を放ち続けていたのだった。

 あまりに特異な印象だったので、私は自分を疑ったものだ。
 あの子が、気になって仕方ないんだが、それはオレだけか?と。
 すると、オブザーバーとして立ち会ってくれた現地の演劇人や、私のスタッフたちも、印象深いと賛同していた。

 翌日、ソウルの大ホテルの明るいロビーに、最終面接に呼び出して、私は初めて、彼女が思いの外、現代的な美少女であったことに気付いたのだった。

 扉座チーム現地スタッフの金文光はビビアン・スーといい、私は『ダンドリ』に出てくれた加藤ローサ顔だなと思った。とにかくそういう可愛い系なのである。
 
 それがオーディション会場では、そんな気配は微塵もなかった。
 誰が見ても、昨日の人と今日の人は、別人だと思うんじゃないだろうか。

 改めて見た、彼女のプロフィール。
 小さい写真しか貼ってないし、シート的にはノーマークで、私は実はよく読んでもいなかった。
 その子のメッセージ欄には、ただひと言こう書いてあった。


 「私は『お伽の棺』を演じるために生まれてきました」


                 


                   以下次号に続く


 


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