人間だもの クサナギ君
クサナギ君が知らぬ間に、酒飲みになってたんだな。
まだ井ノ原クンが、V6にもなる前、だからずっと前の話だけど、
私の 『フォーティンブラス』 という作品を、クサナギ君主演で、紀伊国屋ホールでやっている。
そこに井ノ原クンが、オシャレ小鉢的、ブッキングで付いてきていた。
今、うちの研究所の教頭やってる、田中が、新人俳優として入りたてで、参加させて貰ってたりして。
私の記憶が正しければ、その頃のクサナギ君は、ほとんど酒を飲まなかった。宴会があっても、最初からウーロン茶で通していた。
それもまずはゲーセンに、気になるゲームをやりに行ってから、その後、宴会に遅れて参加みたいな感じでいたものだ。
いつだって礼儀正しく、温厚で、時に皆とテンポがずれても、自分の世界をしっかり守って、でもそれが人に不快を与えるようなことはない慎みを持っていて、
ホントに、
テレビで見るイメージ通りの、良い青年 だった。
だから、
そんなに、お酒を飲むダメダメな人になっていた、というのがちょっと驚きである。
しかも、酩酊して、公園で大声出したなんて、
そんな知らせを聞いて
いやいや、クサナギ君も、正しく大人になったなあ、とむしろ安心したのは、私だけではあるまい。
書き間違えではない。これでいいのだ。
もっと大人になれ。
と言うのが、お行儀の良い言い方ではありましょうがね。
だって大人だから、一人で、したたか酔うんじゃん。
大有名人だから、というのみならず、ちゃんと生きてる大人の胸の中には、さまざま屈託はあるもんだ。
通り一遍のストレスとか、いう安っぽいもんじゃなくてな。
我を忘れるほど、酒だの何だの、快楽に身を委ね、そんでもってやみくもに服を脱ぎ散らかしたい夜もある。
正しい大人なら、黙って分かってあげましょうよ。
そういうこともあるよな、って。
それで仕事、飛ばしたとか、人のこと大怪我させたなら、大問題にして良いけどなあ。
これしきのことで、世の中の反応が、ちょっと幼稚になり過ぎだろう。
少なくとも、我が娘を虐待して、殺してしまった親たちのニュースより、大きな扱いにするもんじゃねえだろ。
しかも政治家の鳩山某などが、こんなことの尻馬に乗って名を売ろうとする、そのさもしさを、わしは強く誹りたい。
だったらテメエの同僚が、仕事中に酩酊して、インタビューを受けて世界の笑いものとなった、その姿に、もっと激しく噛みつけよ、だよな。
正直に言うなら、
最初はクサナギ君の子分のように現れ、ゲーセンの遊び相手だったのに、たちまち小劇場俳優たちとうち解け、その時、出てた、六角精児の子分に鞍替えし、夜を徹してふざけ合うことになった井ノ原クンの方が、わしらとしては付き合いやすく、
宴会が盛り上がってても、
自分の都合で、クールに立ち去るクサナギ君は、
いつもマイペースだねえ、とわしらもちょっと距離を置く感じであったのだ。
でも、
今回こんなことがあって、
クサナギ君も、良くも悪くも、子供っぽい殻が取れて、味わい深い人間になってきたんだなあ、と知った。
俳優、芸人としては、そっちの方がわしは好きだ。
俳優なんて、人間という愚かで儚いものに、徹底的にからみついて生きる、煩悩と業の固まりの、肉的 な存在でなきゃ、おかしいもんだ。
物言わぬジーンズが世界で一番大事な人には、あんまり向いてない仕事だぞ、とずっと思っていたのである。
人と徹底的に酒を飲み交わし、正体をなくし、ジーンズを脱ぎ捨てた、クサナギ君の、それは人間復活だ、とわしは言いたい。
とはいえ、
我が劇団員に関して、だから、さあ皆、飲めや、脱げや、というつもりはないので、あしからず。
うちの場合は、もう、さまざま問題になってるからな。
今回程度の、公然わいせつなら、いままでに複数の劇団員が、明らかに何度も犯している。
ただ当局が、こちらを無視しているだけのことだ。
それどころか、仕事に支障が起きたこと、皆に迷惑がかかったことも、しっかりと起きているし。
クサナギ君の場合、
今まで、あれだけ真面目だった人が、初めてこうなったから、
こんな弁護も試みたくなるわけで、
今まで、煩悩全開でやってきて、十分すぎるほどダメな感じの人たちが、
それ以上になったら、それはもう圧倒的にダメです。
それは逮捕され、実刑を食らうべきです。