パーマークが消えて

 この舞台で話題にしている、小魚、あまごの話。

 あまごのお腹には、青い斑紋があります。
 まるで赤ちゃんのお尻にある、蒙古斑みたいなもの。

 それが消えて、カラダ全体が銀色になるのを、銀化と言い、
 そうなるとあまごは、川を下って、海に向かうのです。

 一方、海には出ず、生まれた川に残り続ける あまごもいて、それはパーマークが、一生そのままカラダに有り続けます。

 差詰め、ケツの青いヤツ といったところでしょうか。
 フツーは、若者のことを言うんですけどね。
 一生、ケツが青い。

 そこら辺の話が、面白くて、まあ芝居にしたんですな。
 だって、蒙古斑ですよ。
 人間とそっくりです。
 というか、人間が魚に似ているのかもしれません。

 そして私のお尻にも、まだ蒙古斑が残っている、気がします。本人的には、川を下って、大いなる冒険をしたつもりになっているんですけど。
 何か、同じとこグルグル回遊しているだけのような気もして。

 ちなみに
 銀化して川を下ったのに、途中で考えを変えて、還ってくる、あまごもいます。
 挫折型というか、出戻りというか。
 それは

 もどりシラメ と言います。
 蒙古斑は消えたけど、大人になりきれないヤツみたいな。

 でも、ちょっとだけ。あまごより大きくなる。

 ここらも人間のドラマみたいです。

 この五月、郡上八幡に行って、あまご釣りをしている時、それよりずっと小さい魚が、2日で三匹ほどかかりました。
 一番最初に連れたのが、コレでした。
 しかし、それは放しなさい、と近藤さんと地元釣り師のジョウさんに言われました。
 ジョウさんは、地元のプロの釣り師です。近藤さんのご友人で、私にいろいろ御指南下さいました。

 ハヤ
 という小魚らしいのですが、
 地元では、クソンボ と言われています。
 
 食えば、それなりに美味いって話なんですけど。
 あまごや鮎に比べたら、色もカタチも、確かにクソンボって感じの小物です。
 
 お前はいらん、リリースじゃ。

 って、ここにも悲しいドラマが。

 ところで近藤さんの釣りは、徹底的に、食う釣りです。
 ご自身生まれ故郷の京都で鍛えられたグルメで、包丁まで握るこだわり派です。
 
 釣った魚は、きちんと食って、成仏させる。
 をモットーにしておられます。

 なので
 五月、今ではすっかり有名になった、私が一匹だけ釣り上げた、あまごも
 翌朝、塩焼きにして、しっかりと味あわさせて頂きました。
 その身は、鮎よりも、ほのかに甘く、ふんわりしているように思いました。
 何より、自分で釣った魚を食するというのは、

 テレビでやってる、
 
 とったドー

 なワケですけど、
 これ以上に贅沢なことはなく、日常的にやっている、食べるという行為が、これほど特別な営みだったのかと、思い起こさせてくれる体験でした。

 まさに命のやり取りです。
 自然に、山や川に向かって、手を合わせたくなりました。

 我が国の宗教心、みたいなのは、ここから生まれている、と私は確信しました。
 梅原猛さんがいう、森の信仰ですね。
 
 それやこれやを、
 私になりに考えて
 こんな芝居にしてみました。

 今度の、日曜日までしかやってません。
 気が向いたら、ぜひ。

 では
 劇場に向かいます。

 新宿サザンシアターです。
 南口のタカシマヤの隣ですから、お間違えのなきように。


 


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