あけました

 秋辺りから、ずーっと何かが続いている感じで、年が明けた気がしないのですが、

 昨夜、そのひとつの 乱童 が終わりました。

 これで、ちょい一区切り。
 昨夜は、いよいよキャスト、スタッフ、お別れということで、深い時間まで、打ち上げが盛り上がっておりました。

 劇団は、またすぐに何かしら用事があるので、最近はもう打ち上げも、通常宴会とあまり変わらぬ雰囲気になるんですが
 劇団のようになった、今回の座組は、これにて解散なわけで
 お祭り終わり感 もひとしおでありました。

 今は祭りの後の、けだるさと闘いつつ、溜まった雑用を片付けております。

 今回、の公演で嬉しかったのは
 今だから言うと、

 三木眞一郎さんの芝居です。

 10年ぶりの舞台と言うことで、前回の彼は、かなり気合いを入れ、緊張もしていました。
 声優としては、すでに大御所ではあっても、舞台で芝居するというのは、怖いものなんです。
 それも大人になってから、久しぶりに立つというのは。
 しかも彼は、人一倍、芝居が好きで、こだわりも強いから、恥はかけないという思いも強かったろうし。
 10年前は、仲間たちとのユニットだし。

 良い機会だからと、忙しいのを承知の上で、無理に誘い込んだ私としては、その責任もあって、多少ハラハラしつつ、その課程を見守っていたのです。

 もちろん初演も、悪くなかったし、プレッシャーをはねのけてよくやってくれました。

 ただ、ちょっと力は入りすぎだよ、と思えるところもあり、まだ舞台で自由になる、みたいな境地には、正直届かないかなという部分があった。
 あくまでもこれは私なりの感想ですけどね。
 彼の真面目さが、逆に、エネルギーの照射を遠慮させてしまっているというか。

 惜しむらくは、あと少し本番の回数があれば、舞台の上で、ひとつ何かが弾けるキッカケも生まれただろうにと、思っておりました。
 稽古は、もうやめなさいと止めなきゃ、終わらないほど、重ねてたけど、舞台は、本番で掴むものが大きいのです。
 稽古場にはない真実が、幕の開いたイタの上にはある。

 んで迎えた今回、
 初日は、これはもうみな、緊張とある種の興奮で、勢いでドーッとやり通す。
 どんな座組でも、ベテラン大俳優でもこれは同じ
 

 あけて、4日の昼。
 三木さんのシーンを見てて、今までと違うなと、感じ、アレと思い
 その夜、4日の夜公演。

 これはもう、稽古でも今までも本番でも見たことのない、自然で深みのある演技がそこに立ち現れておりました。
 真面目に積み重ねて、凝縮してきたものが、一気に反転して、パアーと花開いたみたいな。
 ちょっと重かった、彼の姿が、数センチ、浮上して見えた。

 昼間見て、アレ、と思った正体はこれだったかと嬉しくなり、

 私、思わず芝居の途中で客席を立ち
 楽屋に向かっておりました。

 んで、見えない神社 のシーンを終えて帰ってきた、彼を楽屋の廊下で捕まえようと待ちかまえた。
 ザンネンながら、そのシーンのあと、彼はフライング用の装置装着があり、舞台袖で早替えで、私の速攻は空振りだったのですが
 
 とにかくすぐに伝えたかったのです。

 コレだよ、コレ。コレならもう、どこの芝居に出ても、まったく問題ないよ、と。
 
 芝居が終わるのを待って、真っ先に言いました。

 思えば無礼な発言です。

 しかしまあ、これが正直な思いであって。今回の企画では、十分に役を勤めてくれた三木さんだけど、

 今後、人気声優の、みたいな肩書きを外して、舞台俳優としてもやって行くには、まだまだ超えなきゃいけない部分があるぞ、
 しかもそこは単純な技術習得や訓練、の部分でないから、大変だぞと内心思っていたのです。
 
 その時、三木さんは言っていました。

 確かに今日はなんかラクにやれて、いろんなこと考えず、自然にカラダが動きました、と。

 言葉にすると簡単なようだけど、コレが難しいのです。
 誰も皆、その自由の境地を求めて、舞台に立つけど、なかなかそこには至らぬものです。

 良い瞬間に、立ち会えた、と心から嬉しかった。
 無理して、誘った甲斐もあったと。


 こんなこと言うと、それじゃ今までのは何だったのか、と叱られそうです。
 しかし、これはあくまでも、この舞台の演出家であり、しかも長い友人である、私の目から見たもので
 
 観客席から、見えたものとはきっと大きく違いがあるものです。
 変わったといっても、そう感じない人も大勢いるかもしれない。
 
 それに
 真剣勝負の格闘技と一緒で、決定的なKOパンチみたいなものは、長く劇場に通い詰めても、そう何度もお目にかかれるものじゃないんです。

 たまたまそういうことがあったという話です。見た人は、幸運だと思って欲しいし、見損なった人は、これからに期待して欲しい。
 
 ただ
 これで、彼はきっと何かを掴んだと思います。
 四十過ぎての再デビューみたいな話ですけど。
 
 今後は、舞台俳優としてのキャリアも、注目すべきものになっていくはずだと思います。

 がんばったのは、彼一人じゃないけど
 特別のことだから、今日は、三木さんの話だけで。

 追伸

 千秋楽の演技はそれに輪をかけて、開眼した気配になっていました。芝居がゆったり大きくて。
 ただ
 最後のご挨拶で、ちょっとテンパリ、たちまちに素に戻ったのが、ご愛敬。猫背でアタマ、ぽりぽりみたいな。

 

 
 
 
 

 
 
  
 
 

 

 
 

 


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