開眼

 子犬は、誕生2週間ほどで、眼が開く。
 その予定通り、3匹とも、昨日から今日にかけて一斉に眼が開いた。

 まだ、何かが見えている感じはないけど、ぐっと閉じていた、まぶたが開いて、その下に、光が灯っている。

 まだハイハイしか出来ないけど、時々、四肢を踏ん張って、立とうとしていたりもする。

 徐々に、犬らしくなってゆく日々。
 
 48の足らざるところを獲得し、人の姿になってゆく、百鬼丸を見ているかのようである。
 
 ゴロリと転がっているだけの、小さい黒い固まりにすぎない姿から、眼に光を宿したり、地面を踏みしめて自力で立つような、
 
 犬らしい姿を、日々獲得してゆくのである。

 彼らは、何の妖怪を退治しているのか。
 
 ともあれ、どれだけ見ていても、見飽きることのない、命の営みである。

 一方で
 ラブ×3 も佳境を迎えている。

 こちらはまだ開眼には至らぬか。
 こちらもまた、役者としての姿を、獲得していく課程である。

 光刺す眩しい劇場の舞台には、出てきたものの、未だ、自力で立つことは覚束なく、
 目も見えず、耳も聞こえず、口を開いても、何言ってるか、分からない、

 みたいな。

 ひとつひとつ、妖怪を倒して行くしかないのである。
 そんな闘いだ。

 にしても
 今回は、客席が近い。
 
 迫力や臨場感は高まるはずだけど、
 ボロもまた見えまくりであろう。
 
 役者として未完成なのは、仕方ないとしても、手抜きが見えてしまうのは、致命傷になる。

 ま
 手を抜く余裕なんかない、駆け出しの者たちなので、手抜きはあり得ないんだけど、
 気が抜けて見えちゃうような、腑抜けな感じとかね。

 ビビッちゃう。

 怖いところだからね、舞台は。

 あんだけ憧れていたはずの、そこに立てたら死んでもいいんだと、思っていたような場所なのに

 いざ、そこに立てるとなると、突然、得体の知れない恐怖が襲いかかってくる。
 逃げ出したくなるような不安感。

 自分の手足が他人のもののようになって、コントロールが効かなくなる。

 ここ数日の稽古でも、そういう現象が多々起こっている。
 稽古では、良かったんですけどねえ。

 と首をかしげる、指導係の先輩たち。

 有る意味、子犬と同じである。
 開いた眼も、まだ自分のものではない。

 しかし、だからこそ、この時間が貴いのだ。
 その眼で、初めてなにを見るのか。

 得体の知れぬ恐怖を超えた、その向こうに、何があるのか。

 今は、迷わず立ち向かえとしか、言いようがない。
 
 行けば分かるさ。である。




 
 
 
 
  

 


 


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