永遠の嘘を付いてくれ

 日曜日には、公演後、
 井上ひさしさんを語り継ぐ会

 私もリーディングに参加。
 しみじみと趣深く、暖かく、良い会だった。

 明けて月曜日から、2泊3日で、角館に。

 アトム の新宿公演の支度をせねばならぬのである。

 詳しくは、ガン平ブログを 参照されたい。

 一回仕上げた作品を、ちょっとモデルチェンジしなきゃならぬ。
 しかし、植木だって、ちょくまちょく手を入れれば、必ず、良くなるってもんじゃないわけで。
 
 
 いろいろ変えて、ダメにならぬようにするというのは、これもなかなか大変な仕事なのである。
 もちろん、それ以上にバージョンアップが使命であるからな。 

 それにしても、未だ一息つく間もない。

 矢継ぎ早に新たな課題が襲ってくる。

 ただ今の状況を正直申し上げるなら、本気でくたばる寸前で、

 もう稽古場も劇場も、どっちも入りたくない、という気持ちが沸々と湧いてしまう、今日この頃ながら、

 
 大きな救いは、今年最大の山場となろうと思われた、高円寺初登場の、神崎与五郎 が、存外、上手く進行していること。
 角館にいる間も、いろんな人から、見たけど良かったよと、お知らせを頂いた。

 ただ一言だけ、それを伝えたくて、なんて電話してくれる方までいて。

 無理なスケジュールでもやって良かった。
 少なからず、命削ったと思うけど。


 このタイミングでやらなきゃ、ぜったい生まれなかった作品だろうしな。


 とにもかくにも、角館の予定を終えて、新幹線で、東京に戻ってくる時のこと

 iPod で、吉田拓郎ベスト を聴く。
 かなり前に入れておいて、あんまり聴いてなかったやつ。

 そのなかで

 永遠の嘘を付いてくれ

 という曲があって。
 盛岡あたり、通り過ぎる時に、これを聴きつつ、夜の町並みを眺めていて、

 ふと涙が流れた。

 聞き覚えもなく、初めてじっくり聴いた曲なんだが

 君よ、永遠の嘘を付いてくれ いつまでも種明かしをしないでくれ

 なんていうんだけどな

 病気になった、吉田拓郎 自身のことか、どうかは知らない。
 まあ、いろんな立場から、胸に染みる言葉なわけで。

 不肖私めも、
 人に怪しい嘘を付き続けて、今ここそこで、芝居創りなんぞ、しているわけだが

 こうして草臥れて、ああ、もう、何もかも投げ出したい、
 逃げたい、
 種明かしして、アッカンベーをしてしまいたい、

 とか、
 衝動にかられるけど

 こんな私のことも、私の仕事も、信じて、期待してくれる人もいるわけで

 それに応えようと思うなら、永遠の嘘を突き通す、しかないわけで。

 その苦しみは、タクローなんかに比べたら、ほんとにちっぽけなものだと思うけどな。

 そして、もしかしたら、加藤和彦でさえ、それが難しくて、ついに種明かし をしちゃったのかもしれないけどな。
 加藤さんのことは、確か、拓郎は、怒ったと聞いたな。
 永遠の嘘を付けよ、という立場なんだろうな。

 また、その一方では、それをコツコツと頑固に貫いた、井上ひさし みたいな巨人もいたりして。

 そのどれもが真剣な人生の勝負で、驚嘆に値する、生き様であり、死に様だというしかないんだが。
 
 ともかく、何かグッタリ疲れた、頭の中に、拓郎の歌声に包まれて、いろんな人たちの顔が浮かんでは消えて

 たまらない気分になったのだった。

 君よ、永遠の嘘をついてくれ

 って。
 やっぱり、自分に言い聞かせているんだろうな。
 最後の時まで、弱みは見せずに、突っ張り通すのだ、と。

 だけど
 それが有る意味で嘘=幻想だって、ことは、誰よりも自分が知ってる。もう、タクローも、僕らだって、大人だからな。
 金のことも、愛という名の魔法の秘密も、ある程度、分かってる。
 それでも、最後まで語り尽くす嘘のことを、


 夢と呼んでもいいんじゃないか。


 
 何もかも、愛ゆえのためだったと、言ってくれ

  
 上野まで、ずーっとその音楽と言葉が、胸に響き続けていた。

 
 
 

 


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