わらび座のこと

 正直に言えば、この劇団のことをまったく知らなかった。

 秋田は、父が高校まで過ごした故郷で、今まで母方の故郷の福岡、北九州ではいろいろやってきたのに、父の方は何もしてなかったから、一度こっち方面もやっておこうか、みたいな動機であった。

 しかも、後で分かったのは、秋田と角館は、かなり離れているってことで、結局、一度も秋田には行かずじまいである。

 わらび座本体には、どことなく、不気味なものさえ感じていた。
 東北の奥地で、共同生活しつつ、太鼓叩いている人たち。そんでパスで旅公演して、ジプシーみたいな暮らしをしている人たち。 

 実際、当たらずといえど遠からずではある。
 確かに、とんでもないところに、生活と仕事の拠点を構え
、バスで長い旅公演をしている。

 ただ
 芸術集団としては、これがなかなかのものであると、来てみて、知った。

 何しろ、こちらに滞在していると、東京の有名スタッフに、やたらと出会う。
 みな、ここの作品作りに関わっているのである。んで、同じ宿舎に寝泊まりし、同じ風呂に入る。

 東京では、会釈するだけの関係の人と、ここで初めてゆつくりと会話した、なんてことも度々あった。

 温泉併設の、居酒屋スペースなんか、ちょっとした演劇サロンなのである。 
 そこで、東京の仕事が決まったりしている。
 実際、うちの 神崎与五郎のスタッフ会議も、最初に行ったのは、芸術村だった。
 美術と照明が、アトムのスタッフと同じなのである。

 加えて
 俳優も、ベテランから、若手まで、いろんな素材が揃っている。
 一年中、何かの舞台に出続けているから、かなり鍛えられている。

 私は今回、ここで、新作を一本創ったわけであるが、
 稽古において、不測の事故が何回か起きてキャストが変更になったこと以外、ほぼストレスはなかった。

 みな、がんばるし、腕もある。

 ついでにいえば、美人も美男もいる。

 二枚目もヒロインも、ご当地産で、かなりまかなえるのである。
 アトムで言えば、立ち上げメンバーで、劇団外は、岩本達郎ひとりである。
 改めていうまでもなく、変な顔、の特別参加だ。
 変な顔は、わらび座にも相当数いるけど

 腕のある、変な顔ということで。

 しかし、あとの二枚目もヒロインも、ここの劇団員の若手であった。

 まあ今回、東京公演に向かうにあたっては

 元ジャーニーズの良知クンとか、元四季の、五十嵐可絵さんとか、
 東京キャストが、参加して、また違う舞台になるのであるが

 それでも
 わらび座のメンバーも、大切な役を担い、舞台を支える。

 しかも芸術村では、主役みたいなことをやっていたメンバーが、ここではその相手役に回ったりするので
 さらに層が分厚くなっている。

 たぶん
 見たこともないけど、
 その名前だけで

 田舎臭く、モサッとしてるっぽく、感じている人も大勢いると思う。
 もしくは、太鼓と笛で、民謡専門にやってた時代を知ってて、今の劇団の様子を知らない人も多かろう。

 わらび座とミュージカルというのが、どうしても結びつかない、みたいな。

 でもね
 これがケッコウ、良いのです。

 手塚のアトムで、脚本も音楽も振り付けも、すべて国産オリジナルです。
 輸入品じゃないから、さぞ退屈だろう、ダサかろうという読みは、ある意味、まっとうな反応である。
 今までの例が、ほぼ絶望的だからな。特に、アニメ・マンガ方面の国産ミュージカル化 では無惨な前例が多すぎるしな。

 しかし
 これはちょっと違うから。
 そういう意味で、予測を裏切る自信がある。

 まあ、騙されたと思って、見てみて欲しい。

 19日からです。



 
 
 
 


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