株主である

 ただ今、134,300円 前日からマイナス2000である。

 株価であるが。
 この数字だけで、何のことで、どこの銘柄か、分かる人はその道の人であろう。

 第一生命の株価である。

 チンケな賭け事は、常にやるけど株とか先物とか、にはまったくご縁がなかった。

 それが昨年4月、突然株主になった。

 第一生命が株式会社に生まれ変わる時、保険の契約者に、儲けの一部分けるけど、株か現金、どっちが欲しい、と聞いてきたのだ。

 扉座は、善人会議時代から、第一生命保険相互会社にメセナ支援を受けていて、
 大変お世話になっていたこともあり、私は個人的にけっこう手厚く加入していたのである。

 その時の値が、一株十四万。
 でも、関係者や巷の噂では、上場すれば二十五万ぐらいになるんじゃないかと言われていた。

 まさか、そんなことが起きるとは思ってないから、いわゆる一つの天から降ってきたようなカネである。

 この時、このカネをちびっこハウスに送って、伊達直人になろうと、なぜ私は思わなかったのか。
 今思えば、無念であるが
 そんなこと、これっぽっちも考えず、目がかね色に染まった俗人であった。

 で当然、ここはゼンツッパだろうぜ、と叫んだのだった。

 ゼンツッパとは、チンケ博打用語で、全額投資、すなわち、全部突っ張る という意味である。

 で 
 そんな値上がりを期待して、株で受け取ったのである。
 そして上場すると、たちまち株価は上がった。でも二十万なんかには届かなかったと思う。

 そのうちに私、アトムから与五郎、合間にうたかた、そして慶次という、荒波に飲まれて、株式市場どころではなくなった。

 で
 ふと気が付いて、調べたら、なななななななんと、知らん間に十万円を切るような状態になっていたのだった。

 これが晩夏のことか。

 持っているのは、一株ではないので、ちょっと見ぬ間に、しゃれにならぬ大損失である。
 こんなことになら、貰ってすぐに売れば良かった。

 天から降ってきたカネなのに、一度受け取ると、わずかも減るのが惜しくなる。
 なんという浅ましさ。
 でも、そーなんだもん。 

 と思ったのは、どうやら私だけでなく
 あちこちで、嘆きや恨みの声が上がっていたものよ。

 突然湧いてきたカネでしょうが、皆の衆。
 そんなにキリキリすんなよ。

 しかし
 パチンコなんか比にならぬ、えぐいカネの動きだねえ。

 当たり前だけど。
 小さな小さなこれも一つのウォールストリートだ。

 株式をパチンコと同じように論じるなと、言われるけど、
こちらは同じ感官でしかやれないから、仕方ない。

 でも、だったらビギナーズラックってのは、あっても良いわけで。
 どうなっとるんじゃい、と秋頃から、稽古で便所に立つたびに、ひとりごちでいたのだった。

 こんなこと劇団員に言っても、たぶん会話になんないもんな。
 儲かったら奢って下さい、と20人ぐらいに言われるだけで。

 ところが諸君、第一生命はやっぱり良い会社だったね。

 年末辺りからここ数週間で、突如ぐいぐいと取り戻して来たのだよ。
 爆走モード突入の感じで、ぐいぐいグラフがあがってきた。
 株世界のニュースにもなった。

 で 
 ついに元値の十四万まで先日戻したところで、私のように、しばらく嘆き続けていた人たちが、どばっと売りに出たのであろう
 ちょっと下がって現在は
 
 この辺りで、揉み合っている状態である。

 さて
 これからどうなるか。

 こちらは元値戻しぐらいでは、動かぬ覚悟である。

 だって二十五万もあると、どっかの人が言ってたんだから。まだゼンツッパだ。

 いやしかし、
 こんなとこでこんな発言しては、どっかのファンドに目を付けられて、株価にも影響が出るかもしれぬ。
 聞かなかったことにして欲しい。


 
 

 


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