ジレ

 ラブ×3 と 横浜の リボンの騎士 と。
 若者と演劇創りをしている。
 ついでに厚木舞台アカデミーの子供たち。

 我が子と呼んで何の不思議もない、世代の人々。
 厚木なんか、初孫でも通用しちゃう。

 期待はするが、未熟で、こちらが当然と思う常識も知らない。
 ついイラっとしがちだけど、耐えて、イチから語らなきゃいけなかったりする。

 何度言えば分かるんだ!

 って、
 私は今までに何度も言ってきたことも、彼らは初めて言われていたりして。
 つくづく、劇団というのは、こういう点で、良いものであるなあと思う。
 簡単なことは、私が言わなくても、団員が教えておいてくれるからな。
 
 で今回のラブ×3も、リボンも扉座のメンバーが張り付いて、導いていてくれる。
 だから、くたばらずに済んでいる。

 まあまあ、知らぬのだから先輩がイチから教えてあげなさい。

 なんて余裕をかまして。
 もし自分でイチから教えてたら、たぶん噴火して自爆しているだろう。

 で
 それやこれやで、またもアチコチ駆け回る日々で、
 ハワイなんか、遠き彼方の幻影となり、またしてもストレスが日々重なってゆく。
 そんな時、待ちかまえていたように街は最終セールに入っており、
 疲れたオヤジを誘うのだった。

 アチコチ駆け回るついでにそれらしき辺りを徘徊し、
 大変だったからな、とか、
 いったい誰のためか分からぬ言い訳の独り言を呟きながら、お洋服屋さんなど徘徊する私であった。

 で
 またもまたも無駄遣いを。
 セールのシーズンに繰り返される愚行を。
 今シーズンは、ジレである。

 ジレ、の一言で。
 分かるオヤジは、毎日スケベなこと考えて、オヤジ雑誌なんか定期購読している人だ。
 
 「ジレ」とはフランス語で、ベストのことです。
 もともとは装飾的な胴着のことを指しましたが、現在では、ほとんどベストと同義語で使われます。
 フランス語では、他に肌着・カーディガンの意味もあります。  
              ファッション辞典より

 つまりベストとか、チョッキだね。
 だったらそういえばいいのに、わざわざジレと言うのである。

 客  ベスト下さい。
 店員  ジレでございますね。
 客  いえ、チョッキのベストで。
 店員  ジレでございますね。
 
 最近、あちこちで交わされる会話である。
 ズボンがパンツになったみたいなものだね。

 でも今のわしはもう、いきなり店に入って

 ジレあるかい?

 なんて言うのである。
 フランスに言ったこともないのに。
 
 で
 今シーズン、気が付けばジレを三着も買ってしまった。
 そんなに必要かと問われれば、いらぬと思うとしか言えないが

 だって可愛かったんだもん。

 みたいな、
 もはや正体はギャルと何も変わらぬ。

 正直言って、今のわしは、すっげースケベな夜の街の徘徊よりも、たくさんお洒落なショップのある街でウィンドーショッピングとかしてる方が楽しいかもしれぬ。

 ギャルと言ったが、訂正します。
 オバサンであります。

 にしても
 もう五十になるオバサンのようなオッサンが、必死に着飾って見苦しいと思わぬのか。
 カードで支払いつつ、自分を叱っていたら。
 また一人、同系のオバサンのようなオッサンが、

 ジレ欲しいんだけど

 といきなりいいつつお店に入ってくる。
 わしの求めるジレが今、ちゃんと巷で流行っているのが、更に哀しい。

 しかし
 そういう後悔が、なぜか買う前に出来ない。
 いつも、

 これでいいのか、ヨコウチと。
 叱るのは、カードで支払う瞬間だ。
 
 早く街からセールの赤い文字が消えてくれと、祈る日々である。

 
 
 
 
 

 
 


関連記事

この記事のハッシュタグに関連する記事が見つかりませんでした。

アーカイブ