空から見た 東北
秋田空港からの便を わらび座がとってくれて、無事に帰宅しました。
昨日は、能代で 新生・アトム の公演を。
やると知らせを受けた時、こんな時に本当にやるのか、とも思ったけど、能代の劇場がぜひやって欲しいとリクエストしてきたという。
わらび座は 東北に根を張る劇団だし、今回被災した地区に家族や友人などを持つという座員も多い。やれと言われたらやるのが、我らの使命ではあるが、
正直ちょっと複雑な思いはあった。
余震も続いているし。途中で揺れたらどうするんだ、という問題もあったし。
いろいろ考えた挙げ句、開演前に、一座のリーダー格の岡村雄三さんにステージに出て、挨拶をして貰うことにした。
声を詰まらせて、東北の人々の無事を祈り、復興の願いを込めて、元気に上演させて頂きます
と語るその姿に、胸を打たれた。
こんな時に、集まって下さった観客は四百人。
交通の手だてなく、たどり着けないという方も大勢いたみたいだけど、いろんな思いを抱えつつ、このステージを応援しようと、敢えて来て下さった方も多かったと思う。
単に楽しみに来たという以上に、深い共感を求めて来て下さった方が多かった。そこに救われた。
そして上演。
新宿・神戸特別公演以来の五十嵐可絵が、更に役を深く掴んで、素晴らしいヒロインを見せてくれ、
初舞台ふたりを含む、新キャストもよくがんばった上に、椿千代と、岡村雄三の2年目突入の二人の大黒柱が、二百回上演の円熟の上に、
今この時に、敢えて芝居をやるということの意味を、若い俳優たちに見せつけるような、圧巻の気迫の演技を見せてくれた。
幸い、途中ごくごく軽い揺れがあっただけで、無事に幕が下ろせたし。
金曜日の通し稽古まで見て帰るはずだった、ワタシにとっては思いがけず、居残るハメになり、見届けることになった舞台であるが
生涯忘れられぬ公演となった。
そしてアトムは、この後も傷ついた列島を旅してゆく。
こういう時、最もいらないのが、余興とか娯楽だと思うが、
我々のアトムは こんな時に上演して、すみませんと謝るのではなく、
これが我々の思いです、と胸を張れる内容であることを信じてやり通したい。
ただし、やはり今この時は、まだちょっと早いだろうと胸は痛む。
もう少し後、我々の出番必ず来ると信じるものではあるけれど。
アトムよ、頼むと祈りたい。
秋田からの空路。良くはれた空から、北の列島を見た。
雪の山間に、凝縮して立つ、家々。
壊滅した地方は遠くて見えない。
今こうして、空から見る限りは、千年に一度の天災が起きたようには見えない。
平穏に思える暮らしが眼下に広がっている。
それが怖いことだと思うのは、昨日から同じ思いだ。
でももう一方で
この下で、無傷で、元気で暮らす人たちが、ひとつの思いに目覚めて力を合わせたら、きっと何かがやり遂げられる、
と思った。
列島は思いの外、広かった。
羽田に着くと、何と暖かなことか。
角館にいる間、ずっと着続けたコートが、やたらに重かった。
被災地の方々に、この暖かな風を送ってあげたい。
追伸
先日語った、オーディションは日延べになっています。
とりあえず来週となったけど、交通機関などの状況次第ではまた変更はあるかもです。
もちろん受験者の皆さんには、ちゃんとお知らせします。
そして必ず、どこかで実施して、15期をスタートさせたいと思います。劇団30周年の今この時、こんなことが起きて、これも何かの定めだと考えます。
たぶん、人と世の中の価値観が大きく変わる時を迎えています。
それが良い方向に向かうことを願い、そのために我々の愛する演劇が、何かの役に立つように人材を育てたいと思います。
今こそ、ワタシは文化芸能が人間を勇気づける、そのチカラを信じたいと思います。
